日常生活において全面的に介護が必要な身体状況となると、ベッド上で過ごすーいわゆる「寝たきり」の時間が大半となります。
排泄介助においてはおむつを検討し始める段階です。
要介護度が高い方を寝たままベッド上で排泄介助をする際において、事前に知っておきたいポイントについて解説します。
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「寝たきり」とはどのような状態か
一般的に想像する「寝たきり」の状態は、介護保険制度を利用する際の要介護度で考えると要支援1から要介護5の中で最も状態の重い『要介護5』の段階です。
寝たきりの状態であっても
- 自分で出来る動作が少しでもあるか
- 意志の疎通がどのくらい可能か
の状況によっては『要介護4』と判定される場合もありますが、介護量がかなり多い状態であることに変わりはありません。
※現在はあまり「寝たきり」という言葉の使用は好まれませんが、一般的にイメージしやすいように本記事では「寝たきり」の表現を使用します。
寝たきりになるとおむつを使用する必要が出てくる
「なるべくトイレで排泄したい」は誰しもが願うことですが、トイレで排泄をすることは「歩く」「立つ」「座る」「衣服を脱ぐ・着る」「お尻を拭く」といった複数の動作の組み合わせから成り立っています。
普段何気なく行っているこれらの動作は、筋力が低下すると難しくなるのです。
一例として、ケガや病気で入院をし長時間安静を保って横になっていた人がリハビリを開始し始めたとき、トイレでの転倒事故に注意が必要と言われます。
長くベッド上で過ごし身体を動かす機会が減ると若者でも筋力が低下してしまいますが、その状態で椅子に比べて背もたれやひじ掛けが十分でなく座面の小さなトイレに座るとバランスが取りづらく姿勢を保てずに転倒してしまう恐れがあるからです。
「頭ではどうすればいいか分かっているのに、身体が付いてこない」といった状態です。
この場合はリハビリを経て筋力が回復すると問題なく以前と同じようにトイレでの排泄が出来るようになります。
こういった例からも、トイレで排泄をするためには筋力が必要であることが分かります。
寝たきりの状態とは前述の「歩く」「立つ」「座る」「衣服を脱ぐ・着る」「お尻を拭く」のような行為が出来るだけの筋力がなく、寝た姿勢で過ごす状態です。
そのため加齢で全身の筋力が低下して寝たきりの状態になっている方はトイレ(ポータブルトイレ含む)での排泄を断念し、おむつを用いて排泄することになります。
寝たきりの方のおむつには「テープタイプ」を選ぶ
おむつを使用することになったとき、まず悩みとなるのは「どのおむつを選べばいいのか?」という点です。
ドラッグストアやホームセンターには様々な種類の大人用おむつが販売されていますが、形や吸収量など商品が多岐に渡るため難しいと感じる方もいます。
寝たきりの状態の場合、一般的には「テープタイプ」のおむつを使用します。
テープタイプのおむつの特徴
テープタイプのおむつは付属のテープを留めて位置を固定するタイプで、
- 寝た姿勢のままでもおむつ交換がしやすい
- テープで留めるのでフィット感の調整ができる
- 背中側から漏れにくい
といった特徴があります。
おむつには「パンツタイプ」もありますが、こちらは自分で脱ぎ履きがしやすく下着感覚で着用が出来るため、比較的介護度が低い方が着用することが多いです。
テープタイプのおむつ1枚だけでも使用出来ますが、パッドをおむつの中に敷いて使うことが多いです。パッドを併用するとおむつ本体が汚れていなければパッドだけを交換すれば良いので、おむつ交換の負担を軽減することが出来ます。
フィット感のよいおむつの選び方
おむつ・パッド共に種類が豊富ですが、テープタイプの場合はウエスト部分は多少調整が利くため、まずは「ヒップサイズ」を目安にサイズを選びましょう。
ただし、ウエスト部分が苦しくならないよう若干のゆとりを持たせられる寸法であることも重要です。
また、おむつ・パッド共に「本人の排尿量」に合うものを選びましょう。
可能であれば福祉用具の販売店などでサンプルをもらい、実際にあててみてフィット感を確かめると尚良いです。
介護おむつの費用
もうひとつ悩みとなるのがおむつの「費用面」です。
介護用のおむつは子供用に比べるとサイズも大きいため1個当たり200円前後、パッドは1個あたり100円前後の単価となります。
おむつやパッドは毎日複数個使用するため1か月のおむつ代が10,000円を超えるということもあり、経済的な負担は決して少なくありません。
介護サービスや福祉用具のレンタルは介護保険を利用して補助を受けることが出来ますが、おむつは消耗品となるため介護保険を利用する補助制度がありません。
自治体のおむつ代の補助制度について
おむつは介護保険適用外ですが、市区町村主導でおむつ代の補助制度があります。
基本は自治体側が用意したカタログから選んだおむつを上限金額に応じて現物支給ですが、おむつ購入費用の補助という自治体もあります。
補助を受けるためには前年度の世帯収入を参照したり医師の発行する「おむつ使用証明書」の提出が必要な場合もあります。
なお、この補助制度は特別養護老人ホームなどの介護保険適用可能な施設に入居した人は利用することが出来ませんが、病院や有料老人ホームなどの介護保険の対象外の施設の場合は利用可能です。
おむつを持ち込めるかどうかで現物支給・費用補助が分かれることが多いようです。
市区町村毎に補助内容が異なるため詳細はお住まいの役場に確認が必要です。
また、残念ながらおむつの補助制度を実施していない市区町村もあります。
介護者の尊厳を守っておむつを活用する
おむつを使用した排泄介助を必要とする身体状況になっても、変わらず心がけなければならないことは「被介助者本人の尊厳を守る」ことです。
おむつを使用する段階の要介護度は高く本人との意思疎通が出来ないことも多いため「作業」として実施してしまうこともあるかもしれません。
ですがおむつ交換は「介助」であることを忘れず、一連の行動の中でいつもと違う様子が見られないか?など本人の様子をよく観察し、快適に排泄が出来るよう心がけるようにしましょう。