介護情報
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介護ロボットとは?種類や介護保険の活用方法、在宅での導入事例も解説
介護ロボットとは 厚生労働省によると、介護ロボットとはロボット技術を応用し、利用者の自立をサポートしたり介護者の負担を軽減したりする介護機器と定義されています。ロボット技術は以下の3つを指します。 情報を感知する 感知した情報から判断する 判断した結果をもとに動作する 介護ロボットのサイズや形状、役割は製品によって異なります。そのため、自分たちの悩みや課題の解決に役立つ機能を持った介護ロボットを選ぶことが大切です。 出典:介護ロボットとは|厚生労働省 介護ロボットのメリット(導入後の生活の変化) 介護ロボットを導入すると、介護者にも利用者にもメリットがあります。 介護者のメリット 介護者が装着して使用できる介護ロボットは動きをサポートしてくれるため、身体の負担が軽減します。さらに、力が足りない・常に目を離せないなどの不安を介護ロボットで補い、少ない人員でも介護を継続できる環境作りにも役立ちます。例えば、リフトは使わないほうが短時間での移乗介助が可能です。しかし、介護者の身体の負担を軽減するリフトを使用したほうが、長期的に介護を続けていけるでしょう。また、見守りロボットを活用して夜間の巡回数を減らせば、介護者は安心して休めるようになります。 利用者のメリット 介護ロボットには、利用者の動作をサポートする製品があります。歩行や排泄、入浴などが一人でできるようになれば、他人に頼る申し訳なさが軽減されるでしょう。さらに、歩行や排泄動作などを介護ロボットにサポートしてもらうことで転倒や転落のリスクを減らせるため、安心して生活できるようになります。 コミュニケーションを取れるロボットなら、一人暮らしの孤独感の軽減にも役立ちます。 介護ロボットの種類 介護ロボットは以下の9種類があります。 移乗支援 移動支援 排泄支援 見守り・コミュニケーション 入浴支援 介護業務支援 機能訓練支援 食事・栄養管理支援 認知症生活支援・認知症ケア支援 ここからは、在宅介護で導入しやすい5種類の介護ロボットの特徴を解説します。 移乗支援 移乗支援の介護ロボットとは、ベッドや車いす、トイレなどを利用者が安全に乗り移れるようにサポートするものです。介護者が身につける装着型と、利用者を持ち上げて移乗させる介護リフトといった非装着型 があり、どちらを使用しても介護者の腰の負担軽減 に役立ちます。また、介護ロボットを活用すると体格差や介護者の経験年数に関係なく一定の移乗介助ができるため、利用者の身体的な負担や介助を受ける恐怖心も少なくなります。 移動支援 移動支援介護ロボットは、利用者が安全に移動できるようサポートしてくれます。主に以下の3種類があります。 屋外型:屋外での移動や荷物の運搬をサポートする 屋内型:トイレへの往復といった屋内での移動をサポートする 装着型:利用者が身につけることで、歩行や立ち座り、転倒予防をサポートする 排泄支援 排泄支援の介護ロボットは主に3種類あります。1つ目は、排泄物処理のロボットです。排泄物の処理を自動で行ってくれるため、介護者の負担が少なくなります。さらに、排泄物処理を他人に任せる不安や羞恥心が軽減され、利用者が尊厳を保ちながら生活できるメリットもあります。2つ目は、排泄予測のロボットです。排泄のタイミングを予測し、利用者や介護者に知らせてくれます。そのため、トイレの失敗の予防やスムーズなトイレ誘導に役立ちます。3つ目は、動作支援のロボットです。ズボンや下着を脱ぐといった排泄に必要な動作をサポートしてくれるため、利用者が一人でトイレを使える可能性が高まります。利用者の自立した生活を支えるとともに、介護者の排泄介助の負担を減らす役割も果たします。 見守り・コミュニケーション 利用者の様子を見守る介護ロボットは、施設型と在宅型があります。施設型は、同時に複数の利用者の見守りが可能です。カメラやセンサーで利用者の身体の状態や動きを検知し、介護スタッフに知らせてくれます。そのため、スタッフが少なくても効率的に安全を確保でき、利用者一人ひとりに目が届きやすくなります。一方、在宅型は自宅で生活する利用者の様子を見守り、転倒といった問題が起こると家族や介護スタッフに通知を送るロボットです。通知によって離れて住む家族も利用者の様子を確認でき、介護スタッフも緊急時に迅速な対応ができます。コミュニケーション機能を持つ介護ロボットは、会話したり歌ったりと製品によって機能はさまざまです。利用者の孤独感を和らげるだけでなく、ロボットとのやり取りを通じて認知機能を維持する効果も期待できます。 入浴支援 入浴支援の介護ロボットは、利用者が安全に入浴できるようサポートする製品です。例えば、利用者が座ったまま浴槽をまたいだり湯船に浸かったりできる電動リフトや、全身を洗える箱型のシャワー入浴装置などがあります。利用者の身体を持ち上げる必要がないため、介護者の入浴介助の負担も軽減します。 介護ロボットを介護保険で導入する流れ 移乗支援や移動支援、排泄支援、入浴支援などの一部の介護ロボットは、介護保険でレンタルできます。排泄予測機器や排泄物を自動処理するポータブルトイレなどは、介護保険で購入可能です。ここからは、介護保険を活用した介護ロボットのレンタルと購入の流れを解説します。 レンタルの場合 介護ロボットをレンタルする場合、介護保険サービスの福祉用具貸与が利用できます。 介護保険を申請し、要介護認定を受ける ケアマネジャーにケアプランを作成してもらう レンタル業者を選ぶ 福祉用具専門相談員が自宅を訪問し、利用者に適した介護ロボットを選定する 業者と契約し、レンタルを開始する 業者による定期的なメンテナンスを受ける ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談することで、自分たちに合った介護ロボットを選びやすくなります。なお、福祉用具貸与でレンタルすると、支払いは自己負担分のみで済みます。そのため、高額な介護ロボットでも経済的な負担を抑えて導入しやすいです。 福祉用具貸与の詳細については、「福祉用具貸与で安心介護!レンタルできる福祉用具の種目と利用の流れ」をご覧ください。 購入の場合 介護ロボットを購入する場合は、介護保険サービスの特定福祉用具販売が利用可能です。 介護保険を申請し、要介護認定を受ける ケアマネジャーにケアプランを作成してもらう 購入する業者を決める 福祉用具専門相談員のアドバイスを聞きながら、購入する介護ロボットを選ぶ 購入の際に支払い方法を確認する 市区町村の窓口に介護保険の利用を申請する 所得に応じた給付金が指定口座に振り込まれる 業者への支払い方法には、以下の2種類があります。 償還払い:全額を業者に支払い、のちに介護保険の給付額を受け取る 受領委任払い:自己負担額のみ業者に支払い、のちに介護保険の給付額が業者に振り込まれる 購入時は業者や支払い方法など決めることが多いため、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談しながら進めると安心です。 介護ロボットの価格 以下に、在宅介護で導入しやすく、介護保険を活用してレンタルできる介護ロボットの例とその価格をまとめました。なお、自己負担割合は所得によって1〜3割と異なります。 種類名称本体価格(税込)介護保険を活用した月額レンタル価格(1割負担)移乗支援ロボット(非装着型)Hug L1980,000円(非課税)約2,600円移動支援ロボット(屋外型)ロボットアシストウォーカーRT.2147,180円~約750円 入浴支援ロボットバスリフト466,400円約1,580円 ※価格はすべて2025年9月時点のものです。 次に、介護保険を活用して購入できる介護ロボットの例と価格を紹介します。介護保険で購入する際は、同一年度中に購入した金額のうち10万円までは所得に応じて1〜3割負担、10万円を超えた分は全額自己負担となります。 種類名称本体価格(税込)介護保険を活用した購入価格(1割負担)排泄支援ロボット(排泄物処理)ラップポン・オーブ自動ラップ(S)99,880円~9,988円~ ※ 価格はすべて2025年9月時点のものです。 介護ロボット導入の注意点 介護ロボットを導入する際の注意点を3つ解説します。 設置費用や修理費を確認しておく 介護ロボットを導入する際は、設置費用や修理費も事前に確認しておく必要があります。介護ロボットをレンタルする場合は、メンテナンス費用がレンタル価格に含まれているのが一般的です。一方、購入する際は故障時の保証内容によって修理費が異なります。 利用者が嫌がる場合がある 利用者のなかには、ロボットに介助されることに抵抗感があったり、センサーやカメラで常に見られたくないと考えたりする方もいます。なお、利用者のプライバシーを保護するために、シルエット映像に変換する機能を搭載した見守り介護ロボットもあります。介護ロボットがどのような機能を持っているかを伝え、利用者の不安を取り除くようにしましょう。 使用環境を整えておく リフトや歩行器などの大きな介護ロボットを導入する前には、使用環境を整えておく必要があります。あらかじめサイズを調べておき、設置や保管のスペースを確保しておきましょう。また、畳や絨毯の上での使用を推奨していない製品もあるため、使用したい場所の床材を確認しておくことも大切です。重量がある大きな介護ロボットは畳やフローリングを傷つけたりへこませたりする可能性がある点も考慮し、安全に使える環境を整えましょう。 介護ロボットで負担を軽減した事例 ここからは、介護ロボットで負担を軽減した事例を2つ紹介します。 他人に排泄物の処理を任せる負担がなくなった 排泄物を他人に処理されることに嫌悪感があり、不安定な歩行でトイレに行っていたAさんの事例です。トイレの回数を減らすために水分摂取を控えるようになり、家族も心配していました。そこで、ボタンを押すだけで排泄物を自動で処理できるラップポン・オーブを寝室に設置しました。1回ごとに排泄物が密封されるため、寝室でもにおいが気になりません。トイレの不安が軽減され、水分摂取を控えることもなくなりました。 認知症の進行を遅らせることに役立った 認知症の症状が少しみられる一人暮らしのBさんの事例です。家族がBさんに電話しても出ないときもあったため、離れていても見守りとコミュニケーションができる介護ロボットを導入しました。見守りのために導入しましたが、ロボットと対話することで刺激を受け、Bさんの認知症の進行が緩やかになるという嬉しい変化もありました。離れて暮らす家族もロボットを通じてBさんの様子がわかるようになり、安心して過ごせています。 まとめ 介護ロボットは冷たい機械のように感じたり、慣れるまでに手間や時間がかかったりする場合もありますが、介護者と利用者が安心して暮らせるよう支えてくれる存在です。介護保険を活用できる製品もあるため、導入を検討する際はケアマネジャーに相談すると安心です。介護ロボットの力を上手に借りながら、利用者と介護者にとってより安全で心地よい暮らしを実現していきましょう。 参考文献 「介護ロボットとは」厚生労働省 「ロボット技術の介護利用における重点分野」を改訂しました」厚生労働省 「(参考)介護テクノロジー利用の重点分野定義」厚生労働省 「どんなサービスがあるの? – 福祉用具貸与」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省 「特定福祉用具を購入したとき (介護保険福祉用具購入費支給申請)」品川区
2025.12.02
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自宅でリハビリ!訪問リハビリテーションの内容や対象者、介護保険の活用について解説
訪問リハビリテーションとは 訪問リハビリテーションとは、病気や障害があって自宅で療養している方の元へリハビリ分野の専門職が訪問し、心身のリハビリテーション・機能訓練を提供するサービスです。利用者の心身機能の維持・回復を目指し、利用者のQOL(Quality of Life=生活の質、人生の質)の向上を狙いとしています。訪問リハビリテーションには、介護保険制度を使って提供されるものと医療保険制度で提供されるものの2種類がありますが、この記事では、前者の介護保険制度における訪問看護リハビリテーションにスポットを当てて解説します。 訪問リハビリテーションの対象者 訪問リハビリテーションは、次に該当する方を対象としています。 要介護認定で要支援1・2、または要介護1~5と判定された方 自宅に住み、心身機能が低下している方 主治医から訪問リハビリテーションが必要と認められた方 具体的には、次のような方たちです。 下半身の筋力が低下していて、自力での立ち上がりや歩行が難しい 右半身に麻痺があり、お風呂場で身体を洗うことが難しい 膝関節の拘縮があり、自宅トイレでの排泄をすることが難しい 脳梗塞の後遺症で言語障害があり、発語が難しい 飲み込む力が低下し、食事の際にむせ込んでしまう など なお、介護保険制度を利用できない方は、医療保険制度、または自費で利用することもできます。この場合、要介護認定の有無は問われません。 訪問してくれるのは誰? 訪問リハビリテーションでは、医療機関や訪問リハビリテーション提供事業所に所属する専門職が利用者の自宅を訪問し、次のサービスを提供します。 職種内容理学療法士日常生活における基本動作(起き上がる、立つ、歩く、座る、寝返りをうつなど)に関するリハビリテーションを行う。作業療法士日常生活をスムーズに送るための応用的動作(食事、入浴、整容、料理など)に関するリハビリテーションを行う。言語聴覚士話す、聞く、飲み込むなどの言語や嚥下(えんげ、食べ物を飲み込むこと)に関するリハビリテーションを行う。 利用者が利用するリハビリテーションの種類、内容、量によって、上記の専門職のいずれかが訪問しサービスを提供してくれます。 訪問リハビリテーションのサービス内容 訪問リハビリテーションで提供されるサービス内容は次のとおりです。サービスは1回につき20分間で行われ、週6回の利用を限度としています。また、1日の間で複数回利用することもできます。 身体機能の訓練・指導 理学療法士が、身体機能の維持・回復のため訓練・指導を行います。具体的には次のようなリハビリテーションです。 起き上がり、立ち上がり、歩行の訓練 横になっている状態で寝返りを打つ訓練 椅子や床で安定的に座位を保つ訓練 麻痺や関節の拘縮がある部位のマッサージ など 日常生活動作の訓練・指導 作業療法士が、利用者の日常生活動作に関する訓練・指導を行います。具体的には次のようなリハビリテーションです。 お箸やスプーンを使う訓練 浴槽をまたぐ、自分の身体を洗う訓練 身だしなみを整える、服を着替える訓練 簡単な調理を行う訓練 スマートフォンや携帯電話を使う訓練 など 言語機能、口腔機能の訓練・指導 言語聴覚士が、利用者の言語機能や口腔機能に関する訓練・指導を行います。具体的には次のようなリハビリテーションです。 聞く、話す、読む、書く訓練 嚥下機能(食べ物を飲み込む力)の向上に関する訓練 など 生活環境の整備に関する助言 リハビリ分野の専門職が、次のような助言を行います。 福祉用具の使い方、選び方に関する助言 介護保険を使った住宅改修に関する助言 社会的適応能力の回復、社会的活動への参加に関する助言 など 家族に対する支援 訪問リハビリテーションの対象は要介護高齢者本人ですが、家族に対しても様々なサポートが行われます。次のとおりです。 身体的な負担を軽減する介助方法に関する指導、助言 日常生活を送るうえでできるリハビリテーションのやり方、注意点に関する指導、助言 家族の精神的なサポート、介護に関する不安の解消 など 訪問リハビリテーションにかかる費用 介護保険制度を利用する場合、訪問リハビリテーションでは、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。以下は、一般的な訪問リハビリテーションを利用する際にかかる費用です。 要介護区分時間1回あたりの費用 (自己負担額 ※1割の場合)要支援1・220分あたり298円要介護1~520分あたり308円 参考:「どんなサービスがあるの? - 訪問リハビリテーション」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省 訪問リハビリテーションの利用の流れ 主治医に相談 利用者または家族が、主治医(かかりつけ医)に対して、訪問リハビリテーションを利用したい旨を相談します。その際、訪問リハビリテーションを利用する理由や、どのような点で訓練を必要としているのか伝えると良いです。主治医が「訪問リハビリテーションの利用が適切である」と認めた場合、次のステップへ進みます。 ケアマネジャーに相談・ケアプランの作成 担当のケアマネジャーに連絡し、訪問リハビリテーションの利用希望を伝えます。ケアマネジャーは主治医や利用者から事情を聞き、訪問リハビリテーションを必要とするニーズを十分に把握したうえで、ケアプランのなかにサービスを組み入れます。 訪問リハビリテーション事業者の選定・契約 訪問リハビリテーションを提供する事業所を選び、その事業所と契約を交わします。事業所は、役所から情報を得たり、インターネットを検索したりして自分で探すこともできますが、担当のケアマネジャーに情報収集してもらい、そのなかから評判の良い事業所を選んでもらうのが効率が良いです。依頼を受けた訪問リハビリテーション提供事業所は、主治医から「訪問リハビリテーションの指示書」を受け取り、ケアプランに沿った訪問リハビリテーション実施計画書を作成します。その後、サービスが提供できる準備を整えたうえで契約を結びます。 訪問リハビリテーションを利用 ケアプランに沿って、訪問リハビリテーションが提供されます。利用者はサービスの回数や訪問時間に応じて費用を支払いますが、介護保険制度が適用されるため、自己負担は1割で済みます(所得に応じて2~3割)。 訪問看護や通所リハビリテーションとの違い 訪問リハビリテーションとよく似たサービスに「訪問看護」や「通所リハビリテーション」があります。それぞれの違いを表で説明します。 訪問リハビリテーションと訪問看護の違い 介護保険制度における 訪問リハビリテーション介護保険制度における 訪問看護特徴疾患や障害に応じて心身のリハビリテーション、機能訓練が行われる。医師の指示に基づき、医療行為が行われる。サービスには家事援助が含まれない。目的訓練による心身機能の維持・回復のため健康状態や経過を観察し、その悪化を防止するためサービスの 提供主体訪問リハビリテーション提供事業所訪問看護ステーション、医療機関など対応する 専門職・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 など・看護師・准看護師 など対象者要介護認定で要支援1・2、要介護1~5と判定された方で、自宅で生活し、主治医から訪問リハビリテーションが必要と診断された方要介護認定で要支援1・2、要介護1~5と判定された方で、自宅で生活し、主治医から訪問看護が必要と診断された方サービスの 内容・身体機能の訓練・指導・日常生活動作の訓練・指導・言語機能、口腔機能の訓練・指導・生活環境の整備に関する助言・家族に対する支援 など・医療処置・管理・リハビリテーション(後述)・健康状態の観察・服薬管理・身体的介助 ・ターミナルケア家族に対する支援 など 訪問リハビリテーションと訪問看護は、専門職が自宅を訪問してサービスを提供する点で共通していますが、提供されるサービスの内容に違いがあります 。訪問リハビリテーションは、理学療法士などのリハビリ分野の専門職が、心身機能の維持・回復を目的としたリハビリテーションや機能訓練を行います 。一方、訪問看護は、看護師などが医師の指示に基づき、健康状態の観察や悪化防止を目的とした医療行為や処置を提供します 。訪問看護でもリハビリテーションは提供されますが、これは看護の一環として行われるもので、医療的ケアも必要な方を対象としており、看護師がリハビリテーションを行う場合もあります。一方、訪問リハビリテーションではリハビリや訓練そのものを目的としています 。どちらのサービスが自身の希望に合うかどうか分からない場合は、担当のケアマネジャーに確認すると良いでしょう。 訪問リハビリテーションと通所リハビリテーションの違い 介護保険制度における 訪問リハビリテーション通所リハビリテーション (デイケア)特徴自宅で心身のリハビリテーション、機能訓練が受けられる。リハビリテーション施設へ通い、日帰りで心身機能の維持や回復、一部の介護を受ける目的訓練による心身機能の維持・回復のため同左サービスの 提供主体訪問リハビリテーション提供事業所病院や診療所に併設される通所リハビリテーションセンター対応する 専門職・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 など同左対象者要介護認定で要支援1・2、要介護1~5と判定された方で、自宅で生活し、主治医から訪問リハビリテーションが必要と診断された方要介護認定で要支援1・2、要介護1~5と判定された方 訪問リハビリテーションと通所リハビリテーションは、ともに心身機能の維持・回復を目的としたリハビリテーションサービスですが、提供される場所やリハビリテーションの内容に多少の違いがあります。自宅でサービスを受けるのが訪問リハビリテーションであり、事業所に通ってサービスを受けるのが通所リハビリテーションとなります。提供されるリハビリテーションのメニューにも若干の違いがあります。なぜなら、通所リハビリテーションの方が事業所に複数のスタッフがおり、設備(筋力トレーニングのマシン、歩行訓練台、スロープなど)も充実しているため、より専門的なリハビリテーションを受けられるからです。また、訪問リハビリテーションでは、食事の提供、医療的ケアなどのサービスが提供されないなどの点に違いがあります。通所リハビリテーションについて詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。 通所リハビリテーション(デイケア)とは?特徴や費用、サービス内容を解説 まとめ この記事では、在宅での療養生活を支える訪問リハビリテーションについて、サービス内容から費用、利用の流れまでを詳しく解説しました。訪問リハビリテーションの最大の目的は、心身機能の維持・回復を通じて、利用者が住み慣れた家で「自分らしい生活」を継続できるようサポートすることです。サービスの利用で困ったことがあれば、担当のケアマネジャーに相談してみましょう。 参考文献 「訪問リハビリテーション」社会保障審議会 介護給付費分科会(第220回)厚生労働省 「どんなサービスがあるの? - 訪問リハビリテーション」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省
2025.11.27
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訪問看護とは?利用対象者や具体的なサービス内容、費用を徹底解説
訪問看護とは 訪問看護とは、病気や障害があり自宅で療養・生活している方の家を看護師が訪問し、必要な医療的ケア、看護、それに関わる処置が提供されるサービスです。健康状態の悪化防止や回復を目指し、利用者のQOL(Quality of Life=生活の質、人生の質)の向上を狙いとしています。訪問看護には、介護保険制度を使って提供されるものと医療保険制度で提供されるものの2種類がありますが、この記事では、前者の介護保険制度における訪問看護サービスにスポットを当てて解説します。 訪問看護の対象者(介護保険制度を利用の場合) 訪問看護サービスは次に該当する方を対象としています。 要介護認定で要支援1・2、または要介護1~5と判定された方 自宅に住み病気や障害によって医療的な処置を必要とする方 主治医から訪問看護が必要と認められた方 ただし、介護保険制度を利用できない方は、医療保険制度、または自費で利用することもできます。この場合、要介護認定の有無は問われません。 訪問看護のサービス内容 訪問看護で提供されるサービス内容は次のとおりです。 医療処置・管理 主治医の指示に基づき、看護師が利用者に対して行う医療処置・管理に関するサービスが提供されます。具体的には次のような医療が提供されます。 点滴 注射 リハビリテーション 痛みの軽減 服薬の管理 医療機器(例:在宅酸素機器、カテーテル)の管理 など 健康状態の観察・管理 利用者の健康状態を観察し、療養経過を管理します。また、必要に応じて主治医やケアマネジャーなどの専門職に報告します。具体的には次のような内容です。 バイタルのチェック(血圧、心拍数、脈拍数などの確認) 患者の健康状態(顔色、皮膚、認知状態など)の観察 床ずれの予防、手当 病状悪化の防止・回復 など 療養上の世話・支援 利用者に対する介助や療養上必要とする身の回りの世話や、その他の支援が行われます。 食事や排泄などの介助 身体の清拭 療養生活、健康に関する相談・助言 日常生活動作に関する相談、助言 など ターミナルケア(終末期のケア) 訪問看護では、自宅で最期を迎えようとする方に対してターミナルケアが提供されます。ターミナルケアとは、終末期に提供される医療のことで、病気などが原因で余命がわずかになった方に対する医療・看護的・介護的ケアを指します。具体的には次のような内容です。 終末期にある利用者の食事の介助、オムツの交換 苦痛の緩和とそれに伴う看護 死に対する不安や恐怖の緩和 看取りに伴う看護 など 家族に対する支援 利用者の家族に対して、次のような助言・支援が行われます。 日常的な介護方法に関する相談、助言 認知症ケアに関する相談、助言 看取りを行っている家族への心理的支援 など 訪問してくれるのは誰? 訪問看護では、訪問看護ステーションなどの医療機関に所属する下記専門職が利用者の自宅を訪問し、次のサービスを提供します。 職種内容看護師利用者に対する医療的処置・管理、健康観察と管理、療養上の世話、ターミナルケアを行うとともに、家族に対する支援などを行う。理学療法士日常生活における基本動作(起き上がる、立つ、歩く、座る、寝返りをうつなど)に関するリハビリテーションを行う。作業療法士日常生活をスムーズに送るための応用的動作(食事、入浴、整容、料理など)に関するリハビリテーションを行う。 利用者が必要とする医療の種類、内容、量によって、上記の専門職のいずれかが訪問しサービスを提供してくれます。 訪問看護にかかる費用 介護保険制度を利用する場合、訪問看護サービスでは、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。以下は、一般的な訪問看護ステーションが提供するサービスを利用する際にかかる費用です。 専門職サービス時間1回あたりの費用 (自己負担額 ※1割の場合)看護師による訪問20分未満314円30分未満471円30分以上1時間未満823円1時間以上1時間30分未満1,128円理学療法士・ 作業療法士による訪問の場合20分以上294円 出典:「どんなサービスがあるの? - 訪問看護」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省 訪問看護の利用の流れ 次の流れに沿って、訪問看護サービスを利用します。 主治医に相談 利用者または家族が、主治医(かかりつけ医)に対して、訪問看護サービスを利用したい旨を相談します。その際、訪問看護を利用する理由や、どのような点で医療を必要としているのか伝えると良いです。主治医が「訪問看護の利用が適切である」と認めた場合、次のステップへ進みます。 ケアマネジャーに相談・ケアプランの作成 担当のケアマネジャーに連絡し、訪問看護の利用希望を伝えます。ケアマネジャーは主治医や利用者から事情を聞き、医療的なニーズを十分に把握したうえで、ケアプランのなかに訪問看護サービスを組み入れます。 訪問看護ステーションの選定・契約 訪問看護ステーションを選び、その事業所と契約を交わします。訪問看護ステーションは、インターネットなどで情報収集して自分で探すこともできますが、担当のケアマネジャーに情報収集してもらい、そのなかから評判の良い事業所を選んでもらうのも一つの方法です。依頼を受けた訪問看護ステーションは、主治医から「訪問看護指示書」を受け取り、ケアプランに沿った訪問看護計画を作成し、サービスが提供できる準備を整えたうえで契約を結びます。 訪問看護を利用 ケアプランに沿って、訪問看護サービスが提供されます。1回の訪問時間は20分、30分、1時間、1時間半の4区分があり、利用者が必要とする医療の種類、量などによって利用する時間や頻度が異なります。利用者はサービスの利用回数や訪問時間に応じて費用を支払いますが、介護保険制度が適用されるため、自己負担は1割で済みます(所得に応じて2~3割)。 訪問介護との違い 訪問看護とよく似たサービスに「訪問介護」があります。それぞれの違いを表で説明します。 介護保険制度における 訪問看護訪問介護特徴医師の指示に基づき、医療行為が行われる。サービスには家事援助が含まれない。日常生活上の身体介助、家事援助などが提供される。サービスには医療行為は含まれない。目的利用者の健康状態の悪化を防止、心身機能の回復のため利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送るためサービスの 提供主体訪問看護ステーション、医療機関など訪問介護サービス提供事業所対応する 専門職・看護師・理学療法士・作業療法士 など・ホームヘルパー・介護福祉士 など対象者要介護認定で要支援1・2、要介護1~5と判定された方で、自宅で生活し、主治医から訪問看護が必要と診断された方要介護認定で要介護1~5と判定された方で、自宅で生活する方サービスの内容・医療処置・管理・リハビリテーション・健康状態の観察・服薬管理・身体的介助・ターミナルケア家族に対する支援 など・食事、入浴、排泄の介助・掃除、洗濯、調理などの生活援助・通院時の外出支援 など 訪問看護と訪問介護は、専門職が自宅を訪問してサービスを提供してくれる点では共通していますが、それぞれのサービスは目的や特徴が異なります。端的に言えば、両者の違いは医療ケアができるかどうかです。どちらが自身の希望に合うかどうか分からない場合は、担当のケアマネジャーに確認すると良いでしょう。なお、訪問介護に関して詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。 自宅で安心して介護を受けるには?訪問介護のサービス内容と料金・選び方を解説 よくある質問 ここからは訪問看護に関するよくある質問と、その回答を紹介します。 医療保険と併用できるか 介護保険と医療保険を併用することはできません。要介護認定を受けていて、主治医が訪問看護が必要と認めた場合は、医療保険よりも介護保険が優先的に適用され、訪問看護サービスが提供されます。ただし、要介護認定を受けていたとしても重篤な疾患を抱えていたり、難病を患っていたりする場合で、主治医が医療保険制度での利用が適当と判断した場合は、医療保険制度が適用されます。該当する場合は担当のケアマネジャーに確認しましょう。 訪問してくれる地域・範囲は決まっているのか おおむね決まっています。訪問看護ステーションが設置されている地域、またその周辺の地域が、訪問範囲とされているのが一般的です。なぜなら、サービス内容の性質上、利用者が急変した場合に看護師が駆けつけ十分に対応できるようにするためです。ただし、訪問看護ステーションによっては、訪問範囲について柔軟に対応できるよう、相談に応じています。詳しくはお近くの訪問看護ステーションや、担当のケアマネジャーに相談してください。 夜間や休日も訪問してくれるのか ケースによりますが、可能です。訪問看護ステーションによっては、24時間体制を取っている事業所があります。この場合、緊急の場合に電話で相談できるだけでなく、利用者の状況によっては、夜間でも看護師などの専門職が駆けつけてくれます。気になる方は、利用する訪問看護ステーションや担当のケアマネジャーに相談しましょう。 訪問回数に制限はあるのか 介護保険を利用する場合、訪問回数に制限は設けられていません。実際はケアプランに沿って適切な回数の訪問看護サービスが提供されるため、必要に応じて訪問回数をコントロールすることが可能です。ただし、要介護度に応じて受けられるサービスの量(支給限度額)が決まっているため、それを超えた場合、超過分は介護保険が適用されず、利用者が全額自己負担しなければなりません。なお、医療保険を使って訪問看護を利用する場合は、通常、週に3回までで、1回の訪問時間は30分~1時間半です。ただし、患者の抱える疾患やその状態、家族の希望に沿って訪問回数と時間を多少調整することが可能です。 まとめ この記事では、介護保険制度における訪問看護について、そのサービス内容や費用、そして利用までの流れを解説しました。訪問看護は、単に医療処置を行うだけのサービスではありません。看護師や専門職が自宅を訪問することで、病状の悪化を防ぎ、日々の健康管理をサポートしてくれます。便利にサービスを活用することで、本人が住み慣れた家で安心して暮らすことができます。自宅での医療や介護に不安を感じたら、まずはケアマネジャーに相談し、訪問看護をはじめとした介護保険サービスの利用を検討してみてください。 参考文献 「訪問看護とは(一般の方向け)」 公益財団法人日本訪問看護財団 「訪問看護」厚生労働省老健局 社会保障審議会 介護給付費分科会(第220回) 「どんなサービスがあるの? - 訪問看護」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省
2025.11.14
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介護ベッドの選び方とは?必要な理由や介護保険の活用方法、補助金も解説
介護ベッドとは 介護ベッドとは、特殊寝台とも呼ばれる福祉用具です。電動で背もたれや膝部分の角度を変えられたり、ベッド自体の高さを調整したりする機能があります。また、サイドレール(柵のような形状をした手すり)が取り付けられる点も一般的なベッドとの違いです。 一般的なベッドではなく介護ベッドが必要な理由 介護ベッドが必要な理由を、利用者側と介護者側の視点でそれぞれ解説します。 利用者側の理由 これまで使用していたベッドや敷布団は高さが固定されており、身体に合わせて調整できません。そのため、加齢により足腰の筋力が低下している方や関節が動きにくくなっている方は、立ちあがりにくかったり座るときにバランスを崩したりするリスクがあります。一方、介護ベッドは身体に合わせて高さを自由に調整できるため、立ち座りがしやすくなります。また、一般的なベッドや敷布団はつかまるものがなく、起きあがりや寝返りがしにくいです。介護ベッドはサイドレールが取り付けられるため、自力で起き上がりや寝返りがしやすくなります。介護ベッドを使用すれば自立した生活を続けやすくなり、介護者に頻繁に頼る申し訳なさも少なくなるでしょう。なお、介護ベッドの背上げや膝上げの機能を活用すると、ベッドで長時間過ごす方も姿勢を変えやすくなります。姿勢を変えることで血流がよくなり、床ずれや関節が動きにくくなるリスクを減らせるメリットもあります。特に、床ずれは一度発症すると治療に時間がかかるため、事前の予防が重要です。 介護者側の理由 一般的なベッドで介助すると、介護者には以下の負担がかかります。 ベッドの高さが合わず中腰での介助が多くなり、背中や腰を痛めやすくなる 車いすや食事などを用意している間に利用者が姿勢を崩さないよう気を配る必要がある 高さを調整できる介護ベッドを使えば、無理な体勢で介助せずにすみます。さらに、利用者の姿勢が安定するため転倒や転落の不安が減り、目の前の介助に集中できるでしょう。 介護ベッドの3つの機能 介護ベッドに搭載されている3つの主な機能を解説します。 背上げ機能 背上げ機能とは、背もたれを好きな高さまで上げられる機能です。背上げ機能を活用すると利用者は自力で起きあがりやすくなり、介護者の負担軽減にも役立ちます。また、背上げ機能を使うと利用者はいすに座っているような姿勢となるため、ベッド上での食事やテレビを見るなどの動作もしやすくなります。 膝上げ機能 膝上げ機能とは、利用者の膝部分を持ち上げる機能です。膝部分を持ち上げることで、背もたれを上げるときに利用者の上半身が足側へずれるのを防げます。さらに、利用者が横になっているときに膝上げ機能を使って姿勢を変えると血流がよくなり、むくみを防ぐ効果も期待できます。 高さ調整機能 高さ調整機能は、ベッド自体の高さを調整する機能です。利用者が立ち上がりやすい高さや、介護者が介助しやすい高さなどに自由に調整できます。就寝時はベッドを低くしておくと、万が一転落してもけがをする可能性を減らせるため安心です。 介護ベッドの種類 介護ベッドは、モーター数に応じて種類が異なります。種類ごとの特徴は以下のとおりです。 種類特徴おすすめの人1モーターベッド・背上げ機能、背上げと膝上げが連動する機能、高さ調整機能のうち、どれか1つを搭載・起きあがりや立ち上がりに不安がある人2モーターベッド・背上げ機能と高さ調整機能、または背上げと膝上げが連動する機能と高さ調整機能を搭載した2つのタイプがある ・どちらのタイプも高さ調整機能は個別に操作可能・自力での起きあがりや立ち上がりが難しく介助が必要な人3モーターベッド・3つの機能をすべて搭載 ・別々に操作可能・ベッドで長時間過ごす人 ・多くの介助が必要な人4モーターベッド・3つの機能とマットレスを左右に傾ける寝返り補助機能を搭載 ・別々に操作可能・ベッドで長時間過ごす人 ・多くの介助が必要な人 ・身体の状態に合わせて細かく調整したい人1+1モーターベッド・背上げ機能と膝上げ機能を搭載 ・別々に操作可能・高さ調整機能が不要な人 介護ベッドを選ぶ際に確認する4つのポイント 介護ベッドを選ぶ際に確認するポイントは、機能や種類以外にも4つあります。 介護ベッドの安全性 介護ベッドは身体機能が低下している方が使うため、安全性の高い製品を選びましょう。安全性を確認する方法の一つが、JIS規格(日本産業規格)の表示があるかどうかです。JIS規格とは、日本の製品やサービスの品質や安全性を全国で統一するために国が定めた基準です。製品と製造工場の両方が審査基準を満たすと、JIS規格の認証が受けられます。なお、JIS規格の認証を受けている介護ベッドでも、使い方を誤ると事故につながるリスクがあります。取扱説明書を確認し、正しい方法で使用しましょう。 介護ベッドのサイズ 介護ベッドの長さは、主に以下の3種類にわけられます。 名称介護ベッドの長さ目安となる利用者の身長ミニ約180㎝150㎝未満レギュラー約190㎝150~175㎝ロング約205㎝176㎝以上 また、介護ベッドの幅も主に以下の3種類があります。 介護ベッドの幅おすすめの人83㎝・細身の人 ・自力での寝返りができず、介助が必要な人91㎝・自力で寝返りができる人100㎝・大柄な人 ・自力で寝返りができる人 なお、上記は目安であり、介護ベッドの長さや幅はメーカーによって若干異なります。一般的なシングルベッドの幅は約100㎝ のため、介護ベッドは一般的なベッドよりも幅が狭く設計されています。ベッドの幅が狭いメリットは以下の2つです。 利用者と介助者の距離が近くなり、介助しやすい 狭い部屋でも介護者の動線を確保しながらベッドを設置できる ベッドでリラックスして過ごすことを大切にしたい方は、幅が広めのベッドを選ぶとよいでしょう。 必要な付属品 介護ベッドを安全に使用できるよう、手すりやテーブルなどの付属品が必要か検討しましょう。付属品の種類は豊富なので、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員などの専門家と相談しながら利用者に合うものを選ぶのがおすすめです。なお、サイドレールは介護ベッドから利用者が転落するのを防げるため、設置しておくと安心です。ただし、サイドレールは介護ベッドに差し込まれているだけであり、しっかりと固定されていません。手すりが必要な場合は、介護ベッドにしっかり固定できる介助バーを選ぶとよいでしょう。 マットレスの種類 介護ベッドのマットレスは製品によって特徴が異なります。例えば、低反発ウレタンマットレスは適度に身体が沈み込むため、寝心地を重視したい方におすすめです。一方、高反発ウレタンマットレスは身体が沈み込みにくく、寝返りや立ち上がりなどがしやすいです。横になっている時間が長い方が使用する場合は、床ずれを予防するために体圧分散性能が高いマットレスを選びましょう。さらに、快適に使えるマットレスを選ぶために、撥水加工や抗菌加工、通気性、お手入れ方法なども確認しておくのがおすすめです。 介護保険で介護ベッドをレンタルできる条件 介護保険で介護ベッドをレンタルできるのは、原則要介護2以上の認定を受けている方です。ただし、要支援や要介護1の方も以下のいずれかの条件に該当すれば、例外的に介護保険を利用できます。 日常的に起きあがりが困難な者 日常的に寝返りが困難な者 また、医師の所見や利用者・家族・専門職が参加するサービス担当者会議の結果を踏まえて市町村が必要と判断した場合も、例外的に介護保険でレンタルできます。条件に当てはまるか判断するのは難しいため、まずはケアマネジャーに相談しましょう。なお、介護ベッドを購入する際は介護保険サービスが適用されないため、全額自己負担となります。介護保険を利用したレンタルの流れや料金などの詳細は「福祉用具貸与で安心介護!レンタルできる福祉用具の種目と利用の流れ」をご覧ください。 出典:要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について 厚生労働省 介護ベッド導入時に活用できる補助金制度 介護ベッドを導入する際に利用できる補助金制度は、介護保険以外にも3つあります。 自治体独自の補助制度 自治体によっては、介護保険でレンタルできる条件を満たしていない方でも無料または通常より安価で介護ベッドを借りられる独自の制度があります。なお、対象者や貸し出し期間、使用料などは自治体によって異なります。詳細を知りたい場合は、役所に問い合わせてみましょう。 民間の介護保険 民間の介護保険には、介護が必要になった際に一時金を受け取れる保険があります。一時金は用途が決まっていないため、介護ベッド導入の費用に充てられます。民間の介護保険に加入している場合は、保障内容を確認してみましょう。 日常生活用具給付 日常生活用具給付とは、障がい者が自立した日常生活を送るために必要な用具の購入やレンタルを公費で助成する制度です。対象となる用具には介護ベッドも含まれています。申請の流れや給付の上限額などは市町村によって異なるため、役所に確認しましょう。 なお、介護保険の対象者が介護ベッドを導入する場合は、日常生活用具給付よりも介護保険サービスが優先されます。 介護ベッドを使用する際の注意点 介護ベッドを安全に使用するための注意点を3つ解説します。 利用者が挟まりそうな隙間をなくす マットレスとサイドレールの間に隙間があると、利用者の手足が挟まってしまうことがあります。介護者が気付かずに背上げや膝上げをしてしまうと、事故につながる危険性があります。隙間をなくすために、マットレスとサイドレールの間をクッションやタオルなどで埋めましょう。なお、2009年のJIS規格改正前のサイドレールは、サイドレール自体の隙間やサイドレール同士の隙間に利用者の手足や頭などが挟まる可能性があります。そのため、JIS規格改正後のサイドレールを選ぶようにしましょう。 手元スイッチの置き場所を決めておく 手元スイッチ(リモコン)の置き場所を決めておかないと、思わぬ誤操作が起こる可能性があります。認知症の方が誤って背もたれやベッドの高さを調整してしまうと、介護ベッドから転落してしまうかもしれません。また、介助後に手元スイッチをベッド上に置きっぱなしにしてしまうと、利用者の身体が当たり介護ベッドが動くこともあります。介護者が複数人いる場合は、手元スイッチの置き場所を共有しておきましょう。利用者が手元スイッチを誤操作してしまう可能性があるなら、利用者の手が届かない場所や見えない場所で保管するのがおすすめです。 背もたれを上げる際は腰の位置に注意する 背もたれを上げる際は、ベッドが動く部分と利用者の腰の位置が合うようにしましょう。腰の位置が合っていないと利用者の姿勢が不自然になり、負担がかかります。膝上げ機能を使ってから背もたれを上げると、腰の位置がずれにくいです。腰の位置を合わせると利用者の膝と膝上げ部分の位置が合わなくなる場合は、枕やクッションを利用者の足とベッドの間に挟んで調整するようにしましょう。 まとめ 介護ベッドには角度や高さを調整する機能があり、一般的なベッドで介助するときの不便さや負担を軽減できるベッドです。介護ベッドを導入する際は、機能や安全性、介護保険が活用できるかなど確認するポイントがたくさんあります。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員などの専門家に相談しながら、利用者と家族が安心して使える介護ベッドを探しましょう。 参考文献 介護保険における福祉用具の選定の判断基準改訂案」 厚生労働省 どんなサービスがあるの?‐福祉用具貸与」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省 要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」 厚生労働省 車いす・介護用ベッドの貸し出し(短期)」 練馬区 日常生活用具給付等事業の概要」 厚生労働省 JIS T9254:2009」 厚生労働省 医療・介護ベッド安全点検チェック表」 厚生労働省
2025.11.11
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車いすの種類や選び方|介護保険でのレンタル方法や介助の際の注意点も解説
介護で使用する車いすの種類 介護で使用する車いすは主に5種類あります。それぞれの特徴を解説します。 自走式車いす 自走式車いすとは、利用者自身が操作して動かせる車いすです。後輪が大きいため安定感があり、小さな段差があっても進みやすいです。一般的には、後輪の外側についているハンドリム(手でタイヤを回すための輪)を使って車いすを操作します。また、利用者が足で地面を蹴って動かす場合もあります。なお、自走式車いすにも背もたれの上部に手押しハンドルがあるため、介助者が後ろから押すことも可能です。 介助式車いす 介助式車いすは、利用者ではなく介助者が押して動かす車いすです。後輪が自走式車いすよりも小さく、タイヤを操作するためのハンドリムもついていません。後輪が小さいぶん狭い場所で使用しても小回りが利き、折りたたむとコンパクトになるため収納もしやすいです。さらに、比較的軽いものが多く、持ち運びやすい点も介助式車いすの特徴です。 モジュール車いす モジュール車いすとは、利用者に合わせて各パーツを調整できる車いすです。調整できるパーツは、車いすによって異なります。以下は、調整できる主なパーツの例です。 座面の幅や高さアームサポート(肘掛け)の高さフットサポート(足置き)の高さ背もたれの高さや角度 利用者の身体の状態が変化しても再調整できる点が、モジュール車いすのメリットです。さまざまな利用者に合わせられるため、介護施設でもよく使われています。 リクライニング・ティルト車いす リクライニング・ティルト車いすは、標準的な形の車いすでは座位を保つのが難しい方でも利用しやすい車いすです。リクライニング車いすは、背もたれを倒して角度を変えられます。お尻にかかる体圧を背中や太ももへ分散でき、利用者も疲れにくいです。ただし、お尻が前へ滑りやすいという注意点があります。一方、ティルト車いすは座面と背もたれの角度を保ったまま後ろへ傾けられるため、お尻が前に滑りにくいです。リクライニング車いすと同様に、お尻にかかる体圧の分散効果もあります。なお、リクライニングとティルトの両機能があり、利用者に合わせて座面や背もたれの角度を調整できる車いすもあります。 電動車いす 電動車いすとは、電動モーターで動く車いすを指します。利用者の負担が少なく、自力で車いすをこぐのが難しい方でも使いやすいです。電動車いすには標準的な形の車いすに電動モーターが搭載されている標準型や、スクーターのような形状をしているハンドル型(電動カート)などがあります。どの電動車いすも歩行者扱いとなるため、運転免許証がなくても屋外走行が可能です。なお、電動車いすには介助者の負担を軽減する介助用もあります。少ない力で押せたり、下り坂で自動ブレーキがかかったりなど、介助者が疲れにくい機能が搭載されています。 利用者が使いやすい車いすの選び方 利用者が使いやすい車いすを選ぶ3つのポイントを解説します。 利用者の身体のサイズに合わせる 車いすを選ぶ際は、利用者の身体のサイズに合っているか確認しましょう。以下に、確認するとよい点をまとめました。 確認する箇所ポイント座面の幅・お尻の幅+約3~5㎝座面の高さ・ひざ下からかかとまでの高さ+約5〜8㎝(利用者が足でこぐなら+約0~2㎝) ・座面にクッションを敷くなら厚みを差し引く座面の奥行き・お尻の後ろの端から膝裏までの長さ-約5~7cmアームサポートの高さ・座って肘を無理なく曲げた位置が目安 ・食卓や机などの高さも考慮する背もたれの高さ・自走できるなら肩甲骨の下あたり 利用者の身体のサイズに合った車いすを選ぶと乗り心地が良く、長時間でも快適に使用できます。さらに、転倒や車いすからの転落、床ずれなどのリスクも減らせます。なお、介助者が押しやすい高さに手押しハンドルがあるかも確認しておきましょう。 利用者の身体の状態に合わせる 利用者の身体の状態によって、使いやすい車いすは異なります。例えば、自分の手や足で車いすを動かす体力がある方は、自走式車いすがおすすめです。一方、自分で車いすを操作できますが自走する体力がない方は、電動車いすが使いやすいです。自分で操作ができない方は、姿勢を保てるなら介助式車いす、姿勢が保てないならリクライニング・ティルト車いすを選びましょう。 使用する環境に合わせる 車いすを選ぶ際は、使用する環境も考慮しましょう。以下は、使用する環境に合わせた車いす選びの具体例です。 狭い室内で使用するなら小回りが利く車いす屋外での使用が多いなら段差があっても進みやすく乗り心地がよい車いす持ち運びが多いなら軽くてコンパクトにたためる車いす 使用する環境を具体的に想像し、どのような車いすなら利用者も介助者も使いやすいか考えてみましょう。 車いすのパーツ別確認ポイント 車いすは同じ種類であっても、パーツの違いで使いやすさや乗り心地が異なります。ここからは、パーツ別の確認ポイントを解説します。 タイヤの種類 車いすのタイヤは、エアタイヤとノーパンクタイヤの2種類があります。それぞれの特徴は以下のとおりです。 タイヤの種類特徴エアタイヤ・空気を入れて使用する ・空気がクッションとなるため乗り心地がよい ・空気圧の確認や空気入れなど定期的なメンテナンスが必要ノーパンクタイヤ・空気ではなく樹脂が中に入っている ・空気を入れる必要がないため、定期的なメンテナンスは不要 ・乗り心地はエアタイヤより劣る ・比較的重く、購入時や交換時の値段が高め なお、中にスポンジ状の素材を入れ、乗り心地が改善されているノーパンクタイヤもあります。 車輪のサイズ 車輪のサイズによって、車いすの使いやすさは異なります。例えば、車輪のサイズが大きいと段差を乗り越えやすいため、安全性が高いです。さらに、ひとこぎで進む距離が長く、少ない力で移動できます。一方、車輪のサイズが小さいと小回りが利くため、狭い室内や人ごみでも使いやすいです。 フレームの素材 車いすは使用されているフレームの素材によって、耐久性や重量などが変わります。一般的には、比較的軽く強度も強いアルミ製フレームが使用されています。スチール製フレームは重量がありますが、頑丈で耐久性が高いです。比較的安価で購入できるため、介護施設や病院などでよく使われています。 車いすの値段 車いすの値段は、レンタルと購入で異なります。 レンタルする場合 車いすのレンタルは、介護保険の福祉用具貸与のサービスを利用できます。原則1割の自己負担額で借りられますが、利用者の所得によっては2〜3割となることもあります。以下は、介護保険適用外と適用時の月額レンタル料金(1割負担)の目安です。 車いすの種類介護保険適用外の料金介護保険適用時の料金自走式車いす約3,000~8,000円約300~800円リクライニング・ティルト車いす(一体型)約8,000~16,000円 約800~1,600円電動車いす(標準型)約26,000~30,000円約2,600~3,000円 なお、車いすのレンタルは費用面だけでなく、定期的なメンテナンスや身体の状態に合わせた借り換えなどのメリットもあります。 購入する場合 車いすを購入すると傷や汚れを気にせず使用できますが、介護保険を利用できないため全額自己負担となります。以下は、購入時の値段の目安です。 車いすの種類値段自走式車いす約17,000~31,000円リクライニング・ティルト車いす(一体型)約85,000~170,000円電動車いす(標準型)約200,000~500,000円 車いすを購入するためにはまとまった費用が必要ですが、長期的に使用するならレンタルより安く済むこともあります。利用頻度やレンタル期間を踏まえて、どちらが安くなるか検討しましょう。 介護保険を利用して車いすをレンタルする条件 介護保険を利用して車いすをレンタルできるのは、原則要介護2以上の認定を受けている方です。ただし、要支援や要介護1の方でも、以下のいずれかに当てはまる場合は介護保険によるレンタルが例外的に認められます。 日常的に歩行が困難な者日常生活範囲における移動の支援が特に必要と認められる者 また、医師の所見やサービス担当者会議(利用者・家族・専門職が参加する話し合い)の結果をもとに市町村が必要と認めた場合も、介護保険を利用してレンタルできます。 出典:要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について 厚生労働省 介護保険を利用して車いすをレンタルするまでの流れ 介護保険の福祉用具貸与を利用して車いすをレンタルする流れは、以下のとおりです。1:介護保険を申請し、要介護認定を受ける2:ケアマネジャーにケアプランを作成してもらう3:レンタルする業者を選ぶ4:レンタルする車いすを決め、契約する5:レンタルを開始する介護保険の申請や車いすの選定は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員(福祉用具の選び方や使い方などをアドバイスしてくれる専門職)などがサポートしてくれます。利用者や家族だけで悩まずに専門家へ相談することで、スムーズに車いすをレンタルできるでしょう。 福祉用具貸与の詳細については、「福祉用具貸与で安心介護!レンタルできる福祉用具の種目と利用の流れ」をご覧ください。 車いすの方を介助する際の注意点 ここからは、安全に車いすの方を介助するための注意点を3つ解説します。 車いすを利用する前に必ず点検する 車いすを利用する前に、必ず以下を点検しましょう。 ブレーキはかかるかタイヤの空気は入っているか車輪がスムーズに動くかねじがゆるんでいるところはないか壊れているところはないか 事前に車いすを丁寧に点検することで、転倒や転落などの事故を防げます。 動作の前に利用者へ声をかける 車いすを動かすときや止まるとき、段差を越えるときなど、何かしらの動作をする前には利用者へ声をかけましょう。急に動いたり止まったりすると、利用者は安心して車いすに乗れません。「今から右に曲がりますね」「これから坂道を上りますよ」など、今後どのように動くのか利用者にもわかるような声をかけましょう。 段差や急な坂道は後ろ向きで降りる 段差や急な坂道は、後ろ向きで降りたほうが安全です。前向きで降りると、利用者が転がり落ちてしまう恐れがあります。なお、車いすを後ろ向きにして降りるのは利用者に不安を与えます。不安を取り除くためにも、声かけをしてから介助しましょう。 まとめ 車いすは自走式や介助式などさまざまな種類があり、機能や値段が異なります。そのため、利用者の身体の状態や使用環境などに合わせて車いすを選ぶことが大切です。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員などに相談しながら、利用者と介助者が使いやすい車いすを見つけましょう。 参考文献 「電動車いすの安全利用について」 警察庁「福祉用具・住宅改修」 厚生労働省「どんなサービスがあるの?‐福祉用具貸与」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省「要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」 厚生労働省「車椅子の介助をする際の注意点と車椅子の操作方法を紹介」 だれでも東京「車いすの介助方法について」 神奈川県
2025.11.07
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【相談事例も紹介】地域包括支援センターとは?役割や利用対象者などについて徹底解説
家族が介護を必要とする状態になった時、「何から始めればいい?」「どこに相談したら良いか分からない」と、漠然とした不安を感じる方は少なくありません。そのような時に心強い味方になってくれるのが、高齢者介護の相談窓口である地域包括支援センターです。 この記事では、地域包括支援センターがどのような役割を持ち、どのような方が利用できるのか、具体的な相談内容の例などについて分かりやすく解説します。 地域包括支援センターとは 地域包括支援センターとは、市町村が設置主体となり、住民が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、無料で介護・医療・福祉などの相談に応じるとともに、必要な支援・援助につなげてくれる機関です。 同センターは、市町村が直営するものもあれば、社会福祉法人や社会福祉協議会、医療法人などが委託を受けて運営するものもあります。おおむね、中学校区ごとに設置され、後述する各種相談に応じるとともに、要介護認定の申請窓口としての機能を持っています。 センターには保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等が配置(後述)され、それぞれの専門性を発揮しながら、地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために様々な支援を行います。 高齢者や家族、地域住民の生活・福祉をあらゆる面からサポートしてくれる、まさに、地域の相談窓口と言えます。 居宅介護支援事業所との違い 介護について調べていると「居宅介護支援事業所」という言葉も目にするでしょう。両者の違いを理解しておくことで、適切な相談先を選べます。 地域包括支援センターは高齢者やその家族、地域住民など幅広い人が相談に訪れることができ、地域全体の高齢者支援を担当します。一方、居宅介護支援事業所は主に要介護1〜5の方を対象とし、具体的なケアプランの作成や介護サービス事業所の紹介などを専門に行います。 つまり、介護が必要になった初期段階や、どこに相談すればよいか分からない段階では地域包括支援センターへ、すでに要介護認定を受けていて具体的なサービス利用を検討する段階では居宅介護支援事業所へ相談するのが一般的です。地域包括支援センターから適切な事業所を紹介してもらうこともできます。 地域包括支援センターの4つの役割 地域包括支援センターは、主要な4つの事業を通して地域住民の福祉を向上させる役割を担っています。それぞれが、どのような内容なのか詳しく説明します。 生活や介護に関する総合相談(総合相談支援事業) 地域包括支援センターは、生活や介護に関することだけでなく、医療、健康、住まいに関する相談を幅広く受け付けています。そのうえで、高齢者・家族の抱える悩みを聞き、様々な制度やネットワークを活用して、適切な支援制度やサービスへ繋げてくれます。 上記以外でも「要介護認定の申請をしたい」「どこに相談したら良いか分からない」、「そもそも、相談して良い内容か分からない」といった些細な相談も受け付けてくれるので、困ったことがあれば、まずは地域包括支援センターに連絡することをおすすめします。 介護予防ケアマネジメント(第一号介護予防支援事業) 介護予防ケアマネジメントとは、地域に住む高齢者が要介護状態にならないように、健康づくりや介護予防を支援する事業です。 高齢者や家族の相談に応じるなかで、その方の心身状況や希望を踏まえたうえで、健康的な生活の送り方や、サービスの利用に関する助言・紹介をしています。 また、要介護認定で要支援1・2と判定された方が、加齢や病気によって心身が悪化しないように、介護予防を目的としたケアプラン(介護予防サービス・支援計画書)を立案します。 権利擁護事業 権利擁護事業とは、高齢者が本来持つ権利や財産を守るための取り組みです。 高齢者のなかには、自身が認知症になって財産管理や契約行為が難しくなったり、家族から虐待を受けていて人権が侵害されていたり、特殊詐欺や悪徳商法によって被害に遭ったりしている人もいます。 地域包括支援センターでは、このような方たちの権利が侵害されることがないよう、成年後見制度の紹介・活用促進や、高齢者虐待の予防・早期発見、悪質商法や詐欺の被害を防ぐ取り組みを行っています。 包括的・継続的ケアマネジメント支援 包括的・継続的ケアマネジメント支援事業とは、地域の医療・福祉機関が緊密に情報共有・連携できるよう、ネットワークを構築したり、連携の質的向上を図ったりする取り組みです。 高齢者が住み慣れた地域で生活していくためには、必要なサービスが適切に利用できるよう、地域全体でその環境・体制を整えていなければなりません。 そこで、地域包括支援センターが中心となって、地域で活躍する介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)の指導・支援を行うとともに、医療機関や支援機関とミーティングを行って意見交換し、必要に応じて連携が取れる体制を整えています。 地域包括支援センターの相談事例 実際にどのような相談が寄せられているのか、具体例を見てみましょう。 相談事例1:介護保険の申請について 「母が最近足腰が弱くなり、買い物に困っている。介護保険を使いたいがどうすればよいか」という相談。センターで申請手続きの説明を受け、認定調査まで案内してもらえます。 相談事例2:認知症の疑い 「父の物忘れがひどくなり、同じことを何度も聞いてくる。どうすればよいか」という相談。かかりつけ医への受診を勧められたり、必要に応じて認知症専門医の紹介をしてくれます。また、家族の接し方についてのアドバイスも受けられます。 相談事例3:退院後の生活不安 「入院していた母が退院するが、自宅での生活が心配。どんな準備が必要か」という相談。退院前から介入し、必要なサービスや福祉用具の手配を支援します。 相談事例4:交友関係について 「父が定年退職後、家に引きこもりがちで心配。同年代の友達をつくる機会がほしい」という相談。地域の体操教室、趣味のサークル、サロン活動など、地域で開催されている様々な交流の場を紹介してもらえます。社会参加を促すことで、介護予防にもつながります。 相談事例5:介護と仕事の両立 「仕事をしながら親の介護ができるか不安」という相談。デイサービスなどの利用で介護負担を軽減する方法を提案してもらえます。 事例以外にも高齢者福祉に関する幅広い悩みごとを相談することができるため、悩みや不安があれば、一度地域包括支援センターに相談してみてください。 対応してくれる専門職 地域包括支援センターに勤務し、活躍する専門職を紹介します。それぞれの専門職がどのような役割を担っているのか説明します。 保健師(看護師) 地域包括支援センターの保健師は、主に次の役割を担っています。 各種相談の対応 要支援状態の悪化防止に役立つ取り組み 要支援1・2の方の介護予防ケアプラン作成 心身の健康維持の取り組み など 社会福祉士 地域包括支援センターの社会福祉士は、主に次の役割を担っています。 各種相談の対応 高齢者虐待の防止、早期発見の取り組み 成年後見制度の啓発、利用促進 特殊詐欺などの予防啓発活動 その他の権利擁護事業 など 主任ケアマネジャー 地域包括支援センターの主任ケアマネジャーは、主に次の役割を担っています。 各種相談の対応 地域におけるネットワーク力を高めるための取り組み 地域で活躍するケアマネジャーの支援、助言 ケアマネジャーが抱える支援困難ケースへの指導、助言 など 利用対象者 地域包括支援センターの主な利用対象は、センターが設置されている地域に住む65歳以上の高齢者とその家族です。要介護認定を受けているかどうかは問われていません。 また、地域で活躍するケアマネジャーなど、介護・福祉、医療分野で活躍する専門職も同センターを利用できます。気軽に問い合わせて助言を得たり、情報交換したりすることができます。 費用・相談方法 地域包括支援センターは、全国どこのセンターでも無料で利用できるので安心です。直接、地域包括支援センターを訪問して相談することもできますが、電話相談をすることも可能です。 地域包括支援センターの利用方法 地域包括支援センターは、おおむね中学校区に1つが設置されており、どのセンターがどこの地域を担当するかは、あらかじめ市町村が決めています。 初めて利用する場合は、まずは自治体の担当窓口へ連絡し、自分の住む地域を担当する地域包括支援センターに関する情報を得ましょう。 その後、該当するセンターへ電話連絡し、相談の予約を取ると良いでしょう。緊急の場合は、予約がない状態でもセンターへ足を運んでみましょう。 地域包括支援センターは初めての相談先として最適 インターネット上では「地域包括支援センターでは期待していた効果が得られなかった」という声も見られます。しかし、その評判は本当に正しいのでしょうか? 地域包括支援センターは直接的な介護サービスの提供などをする場所ではなく、あくまで支援や相談・紹介などがメインです。 実際の要介護認定や介護サービスを受けるためには、支援者が実際に連絡するなど行動が必要になることがあります。 そのため、本来の役割を超えた対応を期待していた方にとっては、「期待していたサービスが受けられなかった」と感じることがあるのは事実です。 しかし、センターの役割を正しく理解した上で利用すれば、介護を始める上で非常に心強い存在となります。役立つポイントとしては下記の3つがあります。 初めての相談先として最適 介護保険制度は複雑で、初めての方には分かりにくいものです。地域包括支援センターは、そのような方々の「最初の一歩」をサポートする役割を担っています。何から始めればよいか分からない段階でも、丁寧に道筋を示してくれます。 地域資源とのつながり 地域の医療機関、介護事業所などとのネットワークを持っているため、個人では知り得ない情報やサービスを紹介してもらえます。この「つなぐ力」こそが、センターの大きな強みです。 公的機関としての安心感 民間事業所と異なり、営利目的ではない公的機関です。特定の事業所に偏らない中立的な立場から助言が受けられるため、初めて介護に向き合う方にとって安心できる相談先と言えます。 介護での悩みは一人で解決することは難しく、専門家に相談することが大切です。地域包括支援センター以外にも、市区町村の福祉課、居宅支援事業所、社会福祉協議会など相談できる場は多くあります。 介護に関して悩みや不安がある場合は、ぜひ専門家や公的機関に相談をしてみてください。 よくある質問 相談したら必ず介護サービスを受けなければならない? いいえ、必ずしも介護サービスを利用する必要はありません。相談内容に応じて、保健師や主任ケアマネジャーが、必要な情報提供や助言、適切な支援機関の紹介を行いますが、介護サービスの利用は必須ではありません。 相談内容や個人情報は守られる? はい、相談内容や個人情報は守られますので安心して相談できます。相談内容によっては「人に知られたくない」「相談したこと自体、他者に知られたくない」という場合もあるかもしれませんが、専門職が相談内容に関して、他者に漏らすことはありませんし、個人情報も適切な形で秘匿されるので安心です。 要介護認定の申請や手続きをしてもらえるか? はい、要介護認定の申請や手続きを代行することも可能です。申請が億劫な方や、介護保険の内容がよく分からない方は、気軽に相談してみましょう。 また、主治医・かかりつけ医がいない場合でも、相談に応じてもらえます。場合によっては、新たに医療機関を受診して、主治医となる医師を決めるまでのプロセスまでサポートしてくれます。 センターへ行くことが難しい場合はどうしたらいい? 事情があって地域包括支援センターへ行くことが難しければ、状況によっては、職員が訪問してくれる場合もあります。まずは、電話で相談してみましょう。 認知症について詳しく知りたい。教えてくれる? はい、地域包括支援センターには認知症に詳しい専門職がいますので、気軽に相談してみましょう。認知症の特徴や、対応方法などを詳しく教えてくれるだけでなく、認知症の診断や治療に関する情報提供や、適切なアドバイスを受けることができます。 まとめ この記事では、地域包括支援センターがどのような役割を持ち、どのような方が利用できるのか、具体的な相談内容の例などについて解説しました。 地域包括支援センターは、私たちの相談に応じて必要な支援・援助につなげてくれる機関です。将来、何かあったときに備えて、あらかじめ同センターと繋がっておくことを勧めます。 まずは、自分の住んでいる地域を担当するセンターに関する情報を収集することから始めてみましょう。 参考文献 「地域包括支援センターについて」厚生労働省 「地域包括支援センター」公表されている生活関連情報について 介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省
2025.09.01
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介護用手すりの種類を紹介!選び方や介護保険を使った設置についても解説
介護用手すりの3つの役割 介護用手すりは、高齢者が安心して生活を送るための重要な役割を3つ担っています。それぞれの役割を詳しくご紹介します。 歩行のサポート 介護用手すりの役割の一つは、利用者の歩行のサポートです。高齢者のなかには、筋力の低下や病気による麻痺などが原因で歩くのが難しい方がいます。手すりによって身体にかかる負担が分散され、自力で歩くのが不安な方でもバランスを取りやすくなります。また、手すりがあると暗くて見えにくい夜間の歩行も安心です。 日常的な動作のサポート 介護用手すりは、起き上がりや立ち上がり、姿勢の保持などをサポートする役割があります。ベッドからの起き上がりやトイレに座るなどの日常的な動作でも、高齢者にとっては負担が大きいです。手すりを活用すれば負担を軽減でき、利用者も自立して行動しやすくなります。 転倒・転落の防止 転倒・転落の防止は、介護用手すりの大切な役割です。転倒や転落が原因で高齢者がけがをすると、自力での歩行が難しくなり、車いす生活になる恐れがあります。介護用手すりがあれば転倒や転落の可能性を減らせるため、高齢者も安心して生活できます。 よく使われる手すりの種類 よく使われる手すりについて、それぞれの種類ごとに解説します。 工事が不要タイプ 工事が不要タイプは、手軽に設置できる手すりです。布団やソファの横といった必要な場所へすぐに設置できる点が魅力です。以下の2種類がよく使われます。 種類 特徴据え置き型・床に置いて使用する・土台部分にさまざまな形の手すりが取り付けられている突っ張り型・床と天井の間に突っ張り棒のように設置する・使用時は上のほうを持って身体を引っ張りあげる なお、両方とも屋外で使用できるタイプもあります。玄関前の階段や車庫までの通路などに設置すると、利用者が安心して外出しやすくなります。 工事で取り付けるタイプ 工事で取り付けるタイプは、壁や柱などに直接取り付ける手すりです。主に使われる形状は、以下の3種類です。 手すりの形状特徴水平型手すり・横向きに取り付ける・つかみながら歩ける・トイレや玄関などでの姿勢保持に役立つ縦型(I型)手すり ・縦向きに取り付ける・立ち座りや段差の上り下りなどを補助する・扉を開閉する際の姿勢保持に役立つL字型手すり・水平型手すりと縦型手すりが一体型になっている・トイレや浴室などで立ち上がりや姿勢保持に役立つ 取り付けタイプの手すりは工事が必要ですが、しっかりと壁や柱に固定するため、他の手すりよりも強度が高いです。 手すりの選び方 手すりを選ぶポイントは3つあります。ポイントを理解し、利用者が使いやすい手すりを見つけましょう。 利用者の身体の状況や動作に合わせる 手すりを選ぶ前に、利用者の身体の状況や動作を観察しましょう。利用者が使いにくい手すりでは、安全を守るための役割を果たせません。どのような形状の手すりをどこに設置すれば利用者が安心して過ごせるか考えることが大切です。なお、介護施設では介護士や看護師、リハビリの専門職などが連携して必要な支援方法を検討します。自宅で手すりの設置を検討する際も、ケアマネジャーやかかりつけ医、福祉用具事業者などに相談するのがおすすめです。 利用者に合わせて高さや太さを決める 人によって体格や麻痺の程度などに差があるため、利用者が使いやすい高さに合わせて手すりを設置しましょう。利用者の不在時に高さを決めてしまうと、使いにくい位置に設置してしまう恐れがあります。手すりの太さは、握ったときに指先が触れる程度が目安です。握るのが難しい場合は、手のひらやひじを乗せられる平らな形状を選びましょう。 使いやすい素材にする 利用者が安心して手すりを利用するためには、使用する環境に合った使いやすい素材を選ぶ必要があります。例えば、ステンレス製の手すりを屋外に設置すると日光で熱くなるため、利用者が触りにくくなります。また、浴室に設置する場合は、滑り止めや防水の加工が施されている手すりが使いやすいです。 手すりを取り付ける場所別の設置ポイント トイレや階段など、手すりを取り付ける場所によって注意する点が異なります。ここからは、手すりを設置する主な場所別のポイントを解説します。 トイレ トイレは便座からの立ち座りをするため、縦型やL字型の手すりがあると便利です。手すりを取り付ける位置は、便座から立ち上がったときに利用者よりも前にくるようにしましょう。立ち上がった際に手すりが後ろにあると、肩に負担がかかります。さらに、以下の2点も確認しておくと、手すりを設置したあとに不便さを感じにくくなります。 ペーパーホルダーやウォシュレットのリモコンが使いにくくならないか介助者が一緒に入れるスペースを確保できるか なお、座位が不安定な方は、排泄時の姿勢を保持する手すりも設置すると安全性が高まります。 階段 階段は上り下りによって利き手側が変わるため、可能であれば両側に手すりを設置しましょう。幅が狭い場合は、下りるときの利き手側に取り付けるのが基本です。階段の始まりと終わりの部分は、20cmほど水平型手すりも設置しておくと最後まで身体を支えられます。上りきったところに壁がない場合は、縦型手すりを設置すると身体を引き上げやすくなります。 廊下 廊下の手すりの高さを測る際は、大転子(足の付け根にある骨が出っ張った部分)やまっすぐ腕をおろしたときの手首の位置が参考になります。いずれの方法で測っても、約75〜80cmになるのが一般的です。廊下の途中に窓やふすまがある場合は、突っ張り型とバータイプの手すりを組み合わせると途切れずに手すりを設置できます。 玄関 玄関に上がりかまち(靴を脱ぎ履きする土間と室内の床との段差部分)がある場合、縦型の手すりがあれば段差を上り下りしやすくなります。上がりかまちやいすに座って靴を履く方は、L字型手すりを設置すると立ち上がりから歩行へスムーズに移れます。なお、段差がない、または段差が低い玄関は上り下りの負担が少ないです。そのため、歩行をサポートする水平型や斜め型(壁に対して斜めに取り付ける手すり)も使いやすいです。 介護保険を使って手すりを設置する2つの方法 介護保険を使って手すりを設置する方法は2つあります。それぞれの特徴や費用を解説します。 住宅を改修して取り付ける 住宅改修して手すりを取り付ける場合は、介護保険の「住宅改修制度」のサービスが受けられます。手すりの取り付け工事にかかった費用の1〜3割が自己負担額となり、支給限度額は20万円です。例えば、手すりを取り付ける工事費用が10万円であれば、自己負担額は1〜3万円となります。残りの7〜9万円の支払い方法は、自治体によって異なります。 住宅改修制度の詳細については、「介護保険の住宅改修でできることとは?流れやレンタルについても解説」をご覧ください。 手すりをレンタルする 介護保険の「福祉用具貸与」を利用すると、据え置き型と突っ張り型の手すりをレンタルできます。レンタルにかかる自己負担額は、通常価格の1〜3割です。例えば、月額4,000円の手すりを選んだ場合、400〜1,200円でレンタルできます。なお、介護保険は要介護度によって1ヶ月の支給限度額が決まっています。福祉用具貸与と他サービスを組み合わせた費用が限度額内に収まるよう、ケアマネジャーと相談しましょう。 介護保険制度の詳細については、「介護保険ってなに?初めて介護する人が知っておくべきこと」をご覧ください。 介護保険で手すりを設置する流れ 介護保険で手すりを設置する流れは、工事による取り付けかレンタルかによって異なります。まず、工事による取り付けの流れをご紹介します。1:要介護認定を受ける2:ケアマネジャーへ相談する3:工事を依頼する業者を選ぶ4:必要書類を市区町村へ提出5:申請が承認されたら工事を開始する6:工事費用を業者へ支払う7:市区町村へ給付申請する8:給付金が支給される 次に、レンタルの流れです。1:要介護認定を受ける2:ケアマネジャーへ相談し、ケアプランを作成してもらう3:レンタル業者を選ぶ4:福祉用具専門相談員が利用者の自宅へ訪問し、手すりを選定する5:ケアマネジャーへ連絡し、レンタル業者と契約する6:レンタルサービスを開始する 福祉用具専門相談員とは、利用者に合った福祉用具をアドバイスしたり利用計画書を作成したりする専門職です。レンタル開始後も定期的に利用者の自宅を訪問し、メンテナンスや使い心地の確認をしてくれます。 介護保険で手すりを設置する際の注意点 介護保険で手すりを設置する際の注意点を4つ紹介します。注意点をあらかじめ知っておくと、スムーズに手すりを設置できるでしょう。 介護保険を申請してから業者へ依頼する 介護保険を活用するためには、手すりを設置する前に介護保険を申請する必要があります。手すりを設置してから介護保険を申請しても、サービスは受けられません。なお、申請に必要な書類の作成といった事務手続きを家族のみで行うのは手間がかかります。ケアマネジャーや福祉用具事業者などと連携しながら進めましょう。 手すりを取り付けられるか確認する 壁材によっては、住宅改修で希望する手すりが取り付けられないことがあります。家族だけで工事できるか判断するのは難しいため、業者に確認してもらいましょう。特に、福祉住環境コーディネーター(2級以上)の有資格者がいる業者であれば、家屋の構造や福祉の知識などを踏まえて適切なアドバイスをしてくれます。なお、介護保険を使って手すりを設置できるのは、原則利用者の自宅のみです。子どもの家に一時的に居候しており住民票を移していない場合は、手すりを設置しても給付対象外となります。また、自宅が賃貸の場合、取り付け工事をするためには大家の許可が必要です。 自治体の補助金制度があるか調べる 自治体によっては、手すりを設置する際に介護保険だけでなく、独自の補助金制度も利用可能です。例えば、大阪市には高齢者住宅改修費給付事業という独自の制度があります。制度を利用すると、手すりの取り付けと同時に行う住宅改修対象外の工事にも補助金が出ます。補助金の対象者や申請方法は自治体によって異なるため、手すりを設置する前にケアマネジャーへ確認しましょう。 複数の業者から見積もりを取る 業者によって工事費用やレンタル費用が異なるため、複数の業者から見積もりを取りましょう。また、見積もりを依頼する際に介護保険を利用した手すりの設置に詳しいかどうかも聞いておくのがおすすめです。介護保険サービスに詳しい業者を選ぶと、申請の流れや必要書類などを把握しているため安心して任せられます。業者選びに迷った際は、ケアマネジャーへ相談しましょう。 まとめ 介護用手すりは、利用者の日常的な動作のサポートや転倒・転落の防止など、重要な役割を担っています。本人の身体状況や使用環境などを踏まえて、使いやすい手すりを選ぶことが大切です。介護保険サービスも活用しながら、家族が安心して暮らせる環境を整えていきましょう。 参考文献 「高齢者のための住宅改修ポイント【ポイント2】」 広島県「どんなサービスがあるの? – 福祉用具貸与」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」 厚生労働省「高齢者住宅改修費給付事業」 大阪市
2025.08.28
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デイサービス(通所介護)とは?サービス内容・費用・デイケアとの違いを解説
デイサービスとは デイサービスとは、自宅に住む高齢者がデイサービスセンター(以下、センター)に通い、食事・入浴、排泄などの介助や、レクリエーションが受けられるサービスです。それだけでなく、心身機能の向上のための訓練や、身の回りの世話のサービスも受けられます。介護保険制度上では通所介護と呼ばれています。 デイサービスにはいくつかの種類があり、一般的なデイサービスのほか、次のようなものがあります(後述)。 認知症特化型デイサービスリハビリ特化型デイサービス療養型デイサービス デイサービスの種類 デイサービスには、いくつかの種類があります。どのような点に特徴があるか下表に整理しました。 種類内容・特徴認知症対応型要介護高齢者で、認知症の診断を受けた方が利用可。認知症の進行防止を目的とした専門的ケアが提供される。リハビリ特化型心身機能の維持・向上を目的として、歩行・立位訓練や筋力トレーニングなどが積極的に行われる。利用時間はおおむね半日で終わる。療養型常時の医療ケアを必要とする高齢者が通所し、勤務する看護師が健康観察と医療的管理を行う。 上記のうち、どの種類のデイサービスを利用するか迷った場合は、担当のケアマネジャーに相談して決めると良いでしょう。 デイケアとの違い デイサービスと似たサービスに、通所リハビリテーション(デイケア)があります。両者はどのように違うのか、表にまとめました。 通所介護(デイサービス)通所リハビリテーション(デイケア)目的日常生活上の介護、レクリエーション、日常生活の活性化リハビリテーション、心身機能の維持や回復、一部の介護など対象要介護1~5要支援1・2:介護予防通所リハビリテーション要介護1~5:通所リハビリテーション主なサービス食事の提供身体介助、日常生活上の世話レクリエーション 機能訓練 ほか食事の提供身体介助、日常生活上の世話リハビリテーション 医療的ケア ほか費用利用回数や要介護度によって異なる。同左 特徴レクリエーションを通して充実した余暇を送ることができ、他者と交流を図ることができる。リハビリを通して心身機能の維持、向上を図ることができる。 デイサービス、通所リハビリテーション(デイケア)は、どちらもセンターに通って一日を通して介護サービスを受けられることに変わりはありませんが、利用目的や対象、サービス内容が異なります。デイサービスは、日常生活の支援を目的としている一方、デイケアは、身体機能の回復など医療的な支援を主な目的としています。自分がどちらのサービスに合っているのか分からない場合は、担当のケアマネジャーに尋ねると良いでしょう。 なお、デイケアの詳細については、「通所リハビリテーション(デイケア)とは?特徴や費用、サービス内容を解説」をご覧ください。 利用の対象・条件 デイサービスの対象となるのは、要介護認定において要介護1〜5と判定された方です。次のような方たちにおすすめです。 軽度の要介護状態で、日常的な支援が必要な人家に引きこもりがちで外出する機会を設けたい人一人暮らしで調理や入浴が億劫な人余暇生活の充実のため、他者と適度に関わりを持ちたい人 など なお、要支援1・2の方は、市町村が実施する介護予防・生活支援サービス事業の通所型サービスの対象となるため、デイサービスは利用できません。 提供されるサービス デイサービスで提供されるサービスは次のとおりです。 送迎 センターへの移動は、センターの準備した送迎車を使います。自宅がセンターに近い場合は、送迎車を使わずに自力、または家族に送迎してもらって移動することも可能です。 食事の提供 センターの規模や利用時間によって異なりますが、昼食が提供されます。利用者の口腔機能・状態に配慮した調理がなされており、栄養を考えた食事内容となっています。 食事、入浴、排泄などの介助 利用者の心身機能に応じて、食事や入浴、排泄などの介助が提供されます。その他の身の回りの世話に関するサービスも提供されます。 レクリエーション 余暇時間の充実のため、レクリエーションが行われます。手芸、カラオケ、書道、華道など趣味に関するレクリエーションが行われ、生活の質的向上や、交友関係を広げることにもつながります。 機能訓練 心身機能の維持のため、知的・身体に関する機能訓練が行われます。脳トレ、パズルなどの簡単なゲームや、適切な強度のアクティビティなどがあります。 健康管理 センター到着時に利用者のバイタルチェック(血圧、心拍数、脈拍数などの確認)が行われ、日々の健康状態をチェックしてくれます。看護師が配置されているセンターでは、健康相談や医療的ケアも可能です。 デイサービスの一日の流れ デイサービスの一日の流れは、次のとおりです。 時間内容8:30送迎、健康・バイタルチェック(血圧・体温測定)9:30入浴10:00レクリエーション、機能訓練、体操など12:00昼食、口腔体操、服薬介助、口腔ケア13:00休憩14:00アクティビティ、体操15:00休憩、おやつ16:30送迎 時間やサービス内容はセンターによって異なります。詳しく知りたい方は、担当のケアマネジャーに確認しましょう。 デイサービスの料金 デイサービスの利用料金は、センターの規模や特徴、利用時間、要介護区分によって異なります。以下は、一般的な規模(1ヵ月の平均利用延べ人数750人以内)のセンターを利用した場合の料金です。 要介護度利用者負担(1回につき)要介護1658円要介護2777円要介護3900円要介護41,023円要介護51,148円参考:どんなサービスがあるの? - 通所介護(デイサービス) 介護事業所:生活関連情報検索 厚生労働省 ※1日の利用時間が7時間以上8時間未満※※利用日常生活費(食費・おむつ代)や、レクリエーション材料費は別※※※利用者の負担割合が1割の場合 デイサービスを利用するまでの流れ デイサービスを利用する流れは、次のとおりです。 順内容詳細1要介護認定の申請・判定市町村の窓口に要介護認定の申請を行い、訪問調査を受けて、要介護1~5のいずれかに判定される。2ケアプランの作成居宅介護支援事業所の介護支援専門員がケアプランを作成する。3デイサービス事業者との契約デイサービスを提供するセンターを選び、契約を結ぶ。4サービス利用開始ケアプランに基づいてサービスの利用を開始する。5サービスの利用頻度、内容を調整するデイサービスの利用状況を見て、利用する頻度や内容を調整する。 デイサービスのメリット ご家族以外と交流する機会を持てる デイサービスは、利用者にとって外出の機会となり、家族以外の人と交流する機会となります。外へ出て他者と会う機会を作ると、身だしなみを整えたり、他者との交流で刺激を受けて日々の生活に張りを持たせることが可能です。 家族の負担を軽減できる 利用者がデイサービスを利用している間、家族は休息を取ることができます。休息によって身体的・精神的な負担を軽減することができるだけでなく、時間的ゆとりを持つことができます。デイサービスは利用者にとってメリットがあるだけでなく、それを支える家族にとっても便利なサービスであると言えるでしょう。 健康管理や病気の早期発見に繋がる デイサービスでは、栄養バランスの取れた食事が提供されるだけでなく、スタッフが利用者の日々の健康状態を観察してくれます。また、看護師が勤務するデイサービスでは健康相談にも応じてくれるため、病気の早期発見につなげることも可能でしょう。 心身機能の維持、認知症予防に繋がる 機能訓練やレクリエーションで身体を動かせば、心身機能の維持・向上につながるだけでなく、新たな趣味の発見によって日課ができ、生活の質的向上につながります。また、レクリエーションのなかには、脳のトレーニング、簡単なクイズなどがあり、他の利用者とともにゲームを楽しみつつ、心身機能の維持を図るとともに、認知症予防に繋げることができます。 デイサービスのデメリット 送迎に関する不便さ デイサービスは、センターが準備した送迎車を使って送迎を受けられます。一見すると便利なように見えますが、利用する側としては、送迎車の時間に合わせて準備をする必要があります。また、時間に遅れないように気を遣ったり、他の利用者さんの都合で送迎時間が多少前後したりすることもあるため、不便な点があることも理解しておきましょう。 利用回数によっては費用が大きくなる デイサービスは、利用回数に応じて費用がかかります。同じ月で利用回数が多くなった場合は、その分の費用負担が大きくなるうえ、一定の金額を超えた場合は、その超過分は全額自己負担となります。また、レクリエーションなどで使う備品(例:手芸で使う折り紙、のりなど)は介護保険が適用されず、利用者が実費を負担することになります。1回あたりの利用で、どのくらいの費用負担になるのか知りたい方は、担当のケアマネジャーに尋ねると良いでしょう。 デイサービスを選ぶ際のポイント デイサービスセンターを選ぶ際のポイントを紹介します。 目的や希望に合うサービス内容か デイサービスに通う目的と、希望するサービスを提供してくれるセンターかどうか確認しましょう。先述のとおり、デイサービスには複数の種類があり、センターによって特徴が異なるため、事前に体験利用をしたり、見学をしたりして、自身の目的や希望にかなうデイサービスかどうか、確認しましょう。 センターの雰囲気と利用者の様子 センターの雰囲気と利用者の様子をチェックするため、実際にセンターを訪問して見学し、他の利用者の様子や雰囲気を確認するとともに、施設の明るさや生活感をチェックすると良いでしょう。多くのデイサービスでは、利用前見学や体験利用の機会を設けていますので、適切に利用してセンターの様子を事前にチェックしましょう。 まとめ この記事では、デイサービスの概要を説明するとともに、その種類や提供されるサービス内容、メリット・デメリットを紹介しました。デイサービスに興味のある方は、この記事に記載されている「選ぶ際のポイント」を踏まえたうえで、担当のケアマネジャーに相談するとともに、情報収集をすることから始めましょう。 参考文献 どんなサービスがあるの? - 通所介護(デイサービス) 介護事業所:生活関連情報検索 厚生労働省
2025.08.25
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居宅介護支援(ケアマネジメント)とは?サービス内容・費用・利用の流れを解説
居宅介護支援とは 居宅介護支援とは、ケアマネジャーが利用者の相談に応じ、どのような介護サービスを、どれくらいの頻度で利用するのかを定めたプラン(ケアプラン)を作成し、スムーズに利用できるよう調整・段取りしてくれるサービスです。ケアマネジメントとも言います。居宅介護支援による一連のサービス(介護相談、ケアプラン作成、モニタリングなど)は、すべて介護保険制度によって賄われるため、利用者は費用を負担する必要はありません。 居宅介護支援事業所とは 居宅介護支援事業所とは、ケアマネジャーを配置し、居宅介護支援のサービスを提供している事業所を指します。社会福祉法人や医療法人、NPO法人などによって運営されており、所属するケアマネジャーが、地域に住む利用者・家族の相談に応じ、ニーズに合うケアプランの作成を行っています。事業所によっては「ケアプランセンター」という名称を使っている場合があります。 ケアマネジャー 居宅介護支援において、重要な役割を担っているのがケアマネジャーです。彼らは医療や介護・福祉分野の国家資格を持ちながら、その分野での実務経験を有する専門職です。ケアマネジャーは利用者の心身の状態や希望に合わせてケアプランを作成し、滞りなく介護サービスが利用できるよう様々な調整を行う役割を担っています。ケアマネジャーは原則として、利用者への身体介助や買い物代行といった直接的な支援を行う専門職ではありません。介護に関する相談、ケアプランの作成によって高齢者本人や家族の負担を軽減し、より安心できる介護生活が送れるようサポートしてくれます。 利用の対象者・条件 居宅介護支援を利用できるのは、主に自宅に住む65歳以上で、要介護認定において要介護1〜5と判定された方です。なお、要支援1・2の方は介護予防給付の対象となり、地域包括支援センターがその方たちのケアマネジメント(介護相談、ケアプラン作成、モニタリングなど)を行います。 利用できるサービス 居宅介護支援で受けられるサービスは次のとおりです。 介護に関する相談 利用者や家族の介護に関する相談に応じてくれます。一人ひとりの抱える不安や心配に寄り添いつつ、その解決を目指すための方法を提案したり、支援機関へ繋いでくれたりします。 ケアプランの作成 居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、利用者が介護保険サービスを受ける際に必要となるケアプラン(居宅介護サービス計画)を立案します。ケアプランとは、利用者の要介護度やニーズに合わせて、どのような介護サービスを、どのくらいの頻度で利用するのかを具体的に記した計画書です。ケアプランには次の内容が書かれています。 利用者の長期的目標支援内容の方針介護サービスの内容、注意点介護サービスの利用頻度、回数サービス担当者会議(利用者や家族、介護サービス事業者などが集まり、介護方針の決定や情報交換などを行う場)で話し合う要点利用者から相談内容、事業者との連絡内容利用者負担額 など モニタリングとプランの見直し モニタリングとは、現在利用している介護サービスに過不足はないか、品質に問題がないか、内容は充実しているか、などをチェックし、必要に応じてプランを見直し、介護サービスの内容・量を変更するプロセスを指します。ケアプランは、利用者の心身機能の変化に合わせて、その内容をアップデートしなければなりません。なぜなら、利用者が認知症や病気になって、心身機能が衰えた場合には、現在利用しているサービスが適切とは限らないからです。このため、ケアマネジャーは、利用者や家族、介護サービスに関わる担当者を一同に集めてサービス担当者会議を開いてモニタリングを行い、必要に応じてケアプランを変更し、介護サービスの品質の維持、質的向上につなげています。 要介護認定の申請、手続きの代行 要介護認定の申請や手続きは、本人が行うことを原則としていますが、何らかの事情(例:関節リウマチで文字が書けない、足腰が悪く市町村窓口へ行くことができないなど)で申請ができない場合は、居宅介護支援事業所が代理申請や手続きの代行をしてくれます。 居宅介護支援の料金 居宅介護支援の費用は、全て介護保険で賄われます。そのため利用者の自己負担はなく、無料でケアプランを作ってもらえます。ただし、介護保険料を滞納している場合には、一旦利用者が全額負担しなければなりません。その際、居宅介護支援事業所からサービス提供証明書が発行されるので、それを市町村窓口に提出すると負担額が還付されます。 居宅介護支援を利用する流れ ここからは、居宅介護支援を利用する流れを説明します。 順内容詳細1要介護認定を申請し、判定を受ける市町村の窓口に要介護認定の申請を行い、訪問調査を受けて要介護1~5に判定される。2居宅介護支援事業所を選ぶ市町村窓口から居宅介護支援事業者のリストが示される。そのなかから、自身の希望する事業所を選ぶ(後述)。3居宅介護支援事業所と契約する選択した居宅介護支援事業所と面談を行い、問題がなければ契約を結ぶ。4担当のケアマネジャーを決める居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーを選ぶ。自分で選ぶことが難しければ、事業所に任せてもOK。5ケアプラン作成ケアマネジャーが、利用者や家族の希望に沿って、ケアプランを作成する。このプランによって、介護サービスの種類や利用回数が定められる。6サービスの利用開始とモニタリングケアプランに沿って介護サービスを利用する。定期的に利用状況のモニタリングが行われる。7プランの変更利用者の心身状況に変化があったり、生活環境が変わったりした場合には、ケアプランの内容がアップデートされる。 居宅介護支援事業所の選び方 数ある居宅介護支援事業所から、私たちはどのようにして選んだら良いのでしょうか。以下、選び方のポイントを示します。 事業所が自宅から近い場所にある 居宅介護支援事業所が自宅から近い場所にあると良いでしょう。自宅での介護生活には不安や困りごとが付き物なので、すぐに相談できる場所にある事業所を選べば、便利に使うことができるからです。 事業所に併設される施設・機関があるか 居宅介護支援事業所の多くは、社会福祉法人や医療法人、社会医療法人などが運営しています。この場合、事業所に特別養護老人ホームや介護老人保健施設、デイサービスや、地域包括支援センターなどの施設・機関が併設されていることがあり、利用者は、居宅介護支援事業所での相談をすることだけでなく、併設される施設・機能の提供するサービスを受けることができます。文字通り、ワンストップで相談から介護サービス利用まで受けられるため、利用者にとっては安心で便利です。 ケアマネジャーとの相性 担当になったケアマネジャーとの相性が大切です。相談しやすいか、親身になって話を聞いてくれるか、適度に連絡をくれるかなど、ケアマネジャーとしての仕事の様子を見て、自身の生活を任せて良いかどうか判断すると良いでしょう。 居宅介護支援のメリット・デメリット 居宅介護支援のメリット 居宅介護支援のメリットは、費用がかからない点です。無料で介護に関する相談ができ、ケアマネジャーがケアプランの作成や介護サービス機関との調整を行ってくれるのは、この上ない利点でしょう。介護保険サービスは、制度が複雑で手続きが面倒ですが、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが、丁寧に教えてくれて最適なサービスが利用できるよう、その機関と調整してくれます。そのなかで、サービス選び・施設選びなどで適切なアドバイスをしてくれる点も、利用者にとっては大きなメリットだといえるでしょう。 居宅介護支援のデメリット 居宅介護支援のデメリットは、ケアマネジャーの持つ知識や技術、ネットワークによって、サービス品質が異なることです。担当のケアマネジャーが、資格こそ持っているものの、介護保険制度に詳しくない、地域における福祉サービス提供機関とのネットワークがない場合、サービスの利用調整がうまくいきません。そのため、専門知識があることはもちろん、地域の介護事業所と顔なじみの関係があり、丁寧な仕事をしてくれるなど、能力の高いケアマネジャーを選ぶことが重要です。 訪問介護との違い 訪問介護とは、介護保険サービスの一つで、自宅に住む利用者の生活を支援するため、ホームヘルパーなどの介護職がお宅を訪問し、身体介護や生活援助を提供してくれるサービスです。居宅介護支援との違いは次のとおりです。 居宅介護支援訪問介護概要ケアプランの作成、サービス提供機関との連絡・調整ホームヘルパーによる身体介護、生活援助対象主に自宅に住む要介護1~5の方主に自宅に住む要支援1・2、要介護1~5の方 内容・介護相談・要介護認定の手続き代行・ケアプランの作成・サービス提供機関との連絡調整・食事介助・入浴介助・排泄介助・調理、掃除・身の回りの世話 などサービス提供機関 居宅介護支援事業所訪問介護サービス提供事業所 よくある質問 ここからは、居宅介護支援に関するよくある質問を紹介します。 居宅介護支援事業所を変えることはできる? 変更できます。一度契約した居宅介護支援事業所でも、何か問題があって別の事業所へ切り替えたい場合には、市町村の担当窓口や地域包括支援センターに相談のうえ、新事業所との接点を持ち、契約をし直すことができます。なお、前事業所との解約については、契約書に記載されている事項に則って行われる(例:◯ヶ月前までに解約を書面で申し出る等)ため、よく読んで対応するようにしましょう。 担当のケアマネジャーを変更することはできる? 変更できます。担当のケアマネジャーに何か問題があり、別のケアマネジャーに切り替えたい場合には、担当の居宅介護支援事業所に相談しましょう。新しいケアマネジャーとの面談の機会を持ち、前ケアマネジャーから業務や情報を引き継いでくれるよう依頼すると良いでしょう。 まとめ この記事では、居宅介護支援のサービス内容を紹介するとともに、その利用方法や料金について説明しました。居宅介護支援は、ケアマネジャーが自分に合った介護サービスをスムーズに利用できるようケアプランを作成したり、機関との調整を行ってくれるサービスです。担当のケアマネジャーに相談し、自身の希望に合ったケアプランを作成し、サービス調整をしてもらうようにし、自宅での自分らしい生活を充実させましょう。 参考文献 「どんなサービスがあるの? - 居宅介護支援」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省「居宅介護支援の基本資料」厚生労働省
2025.08.20
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福祉用具貸与とは?レンタルできる介護用品や医療費控除についても解説
「福祉用具にはどのようなものがあるの?」「福祉用具をレンタルしたいけど、どうしたらいい?」と、疑問に思う方も少なくないでしょう。 この記事では、福祉用具の概要を紹介するとともに、その種類や利用の流れを説明します。 福祉用具とは 福祉用具とは、介護の必要な高齢者の日常生活やリハビリなどをサポートする物品(例:車いすや杖など)を指し、日々の生活における不自由さを解消するためのアイテムです。 介護保険制度では、レンタル用・購入用の2つが定められており、利用者はこの保険を使うことで、少ない費用で福祉用具を利用することができます。 なお、この記事では、レンタルできる福祉用具(介護保険法上では福祉用具貸与という)にスポットを当てて説明します。 利用の対象者・条件 福祉用具貸与を利用できるのは、市町村が行う要介護認定において、要支援1・2、または要介護1〜5と判定された方です(要支援1・2の場合は、介護予防福祉用具貸与を利用)。 要介護区分に応じて利用できる福祉用具が異なるため、全ての福祉用具をレンタルできる訳ではありません(後述)。自身の希望する福祉用具が利用可能かどうか、担当のケアマネジャーに確認を取りましょう。 13種目のレンタルできる福祉用具一覧 介護保険を使ってレンタルできる福祉用具は、全部で13品目あります。 要介護認定を受けていれば13品目全てを利用できるのではなく、要介護度によって利用できる用具が異なります。 要支援1・2、要介護1の方がレンタル可能な福祉用具 品目内容手すり改修工事の必要がない地面に置くタイプの手すり。玄関などに設置する。スロープ段差に対して設置する簡易型のスロープなど歩行器歩行を容易にするためのつかまり型の歩行器。杖よりも安定する。歩行補助杖高齢者用の杖や松葉杖、4点杖など 要介護2~5の方がレンタル可能な福祉用具 品目内容手すり改修工事の必要がない地面に置くタイプの手すり。玄関などに設置する。スロープ段差に対して設置する簡易型のスロープなど歩行器歩行を容易にするためのつかまり型の歩行器。杖よりも安定する。歩行補助杖高齢者用の杖や松葉杖、4点杖など車いす自走式、介助式、電動式などの種類がある。 車いす付属品座席の上に敷くクッション、ブレーキなど特殊寝台介護用のベッド。上半身を起こすことができるものや、電動で高さを変えられるものなどがある。特殊寝台付属品上記3特殊寝台に付属する物品。ベッドからの転落を防ぐレールなど床ずれ防止用具床ずれが起きる身体の部位に当てるエアーマットなど体位変換器床ずれ予防に役立つ体位変換器認知症老人徘徊感知機器認知症高齢者の徘徊や、予期せぬ外出を察知するための機器移動用リフトベッドから車いすなどに移るための移動用リフト。つり具部分は購入する必要がある除く。自動排泄処理装置※尿や便を自動的に吸引する装置※原則として要介護4~5の人のみ利用可能 参考:「どんなサービスがあるの? - 福祉用具貸与」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省 軽度者に対する福祉用具貸与の例外給付とは 軽度者(要支援1・2、要介護1)の方は、原則として次の福祉用具をレンタルすることができません。 車いす(付属品含む) 特殊寝台(付属品含む) 床ずれ防止用具 体位変換器 認知症老人徘徊感知器 移動用リフト ただし、厚生労働大臣の定める告示に該当(例:日常的に歩行や立ち上がりが困難、意見の伝達や記憶・理解に支障がある など)し、市町村による要介護認定において「必要」と判断された場合は、例外的にレンタルできるというルールが定められています。 該当する方は、担当のケアマネジャーや、地域包括支援センターに相談して、利用ができるか確認を取りましょう。 福祉用具貸与の料金 福祉用具貸与の料金は、福祉用具の種類やメーカー、機能の豊富さ、取り扱う業者によって異なります。例えば、介護用ベッドでもシンプルなものは安く、電動で高さを変えられるものは高い傾向にあります。 いずれにせよ、利用者は介護保険を使うことでかかった費用の1割を負担します(所得によって2〜3割となる)。以下に一例を示します。 物品利用者負担額(1割の場合)歩行器約200円~420円/月特殊寝台(介護用ベッド)約500円~1,800円/月車いす(電動なし)約300円~1,100円/月 参考:全国平均貸与価格及び貸与価格の上限(過去公表分)厚生労働省 厚生労働省は、利用者が福祉用具を適切な価格でレンタルできるように、全国平均の貸与価格を公表しています。実際に福祉用具をレンタルする際は、この情報を参考にすると良いでしょう。 福祉用具・介護用品のレンタル料は医療費控除の対象外 介護用品のレンタル料は、原則として医療費控除の対象になりません。 医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えたときに受けられる所得控除のことです。治療費や入院費など病気やけがの治療に関する費用に適用されるもので、日常生活の支援が目的である介護用品のレンタルは対象外となります。 ただし、介護保険サービスのすべてが医療費控除の対象外となるわけではありません。 訪問看護や通所リハビリテーション、ショートステイなど、自己負担額が医療費控除の対象となる介護サービスもあります。 福祉用具貸与のメリット 必要な時だけ、必要な物を借りられる 福祉用具貸与は、必要な時だけ、必要な物を借りられる手軽さがあります。要らなくなればレンタルを止めたり、借りる物品を変更するなどの融通が利くため、利用者にとって便利なサービスと言えます。また、購入するよりも初期費用を安く抑えることが可能です。 身体状況の変化に合わせた用具の利用が可能 使っている福祉用具が合わなくなったら、交換することができます。身体状況の変化や、認知機能の低下などによって、福祉用具に対するニーズも変わるため、定期的にアップデートさせる必要があります。 その時々の身体機能などによって、簡単に福祉用具を切り替えることができる点は、レンタルのメリットであると言えます。例えば、最初の頃には通常のT字杖を使っていたのが、加齢に伴う身体機能の低下に合わせて四点杖や歩行器に変更するなど、その状況に合わせて利用することが可能です。 保管や処分の心配が不要 福祉用具貸与で使う用具は、購入する訳ではありませんので、使わなくなったら業者が引き取ってくれます。よって、用具の保管場所の確保や、処分方法で面倒な手間をかける必要がありません。 福祉用具貸与のデメリット 要介護度によって利用できない物品がある 福祉用具のうち、車いすや特殊寝台(介護用ベッド)などは、要介護2以上を対象としているため、軽度者(要支援1・2、要介護1)にとっては多少使いにくいサービスです。ただし、要介護認定などにおいて「必要」と認められれば、例外的に給付を受けられることもあります。 長期間になると費用がかさむ 利用者の自己負担は原則1割(所得によって2〜3割)とはいえ、レンタルする期間が長期間になればなるほど、その分の費用がかさみます。場合によっては、購入金額よりも上回ってしまうことがあります。 故意、または過失による破損は弁償することもある 故意、または過失によって、福祉用具を破損させた場合には、弁償をしなければならない場合があります。 例えば、外出先で杖を紛失してしまったり、車いすを乱雑に扱って部品を破損させた場合には、その代替品の購入や交換の費用を求められることがあります。 ただし、契約内容によって、弁償の要否や範囲、費用の負担割合が異なるため、実際の取り扱いはケースバイケースです。 万が一、使っている福祉用具を破損させたり、紛失してしまった場合には、福祉用具を取り扱う業者の担当者や、担当のケアマネジャーに相談しましょう。 福祉用具貸与を利用する流れ ここからは福祉用具貸与を利用する流れについて、順を追って説明します。 順内容詳細1要介護認定の申請・判定市町村の窓口に要介護認定の申請を行い、訪問調査を受けて要支援1・2、または要介護1~5のいずれかに判定される。2ケアマネジャーの選定とケアプランの作成要介護1~5と判定された場合:居宅介護支援事業所を選び契約。介護支援専門員へ福祉用具の利用希望を伝え、ケアプランを作成してもらう。要支援1・2と判定された場合地域包括支援センターを選び契約。介護支援専門員、保健師などに福祉用具の希望を伝え、ケアプランを作成してもらう。3福祉用具を取り扱う業者との契約どのような福祉用具、どのような業者が良いのかケアマネジャーに伝える。ケアマネジャーが業者を複数選んで、利用者へ提案がある。問題がなければ、業者を一つ選んで、そこと契約する。4サービス利用開始ケアプラン、契約に基づいて福祉用具の利用を開始する。5利用状況の確認、定期的なメンテナンス担当のケアマネジャーや、業者の定期的な訪問を受け、福祉用具の利用状況が確認される。必要に応じて福祉用具の取替えや、メンテナンスが行われる。 福祉用具貸与の業者の選び方 情報を収集する より良い業者を選ぶため、福祉用具に関する情報収集を行うことが重要です。評判の良い業者を探す場合には、担当のケアマネジャーに情報収集を依頼し、自身の希望する福祉用具を専門的に取り扱う業者がいるか、強みを持つ業者がいるかなどの情報を収集してもらうと良いでしょう。収集した情報を持ち寄って、自分のニーズに合う物品・料金かどうか、しっかりとしたメンテナンスを行ってくれるかどうか、一緒になって確認し、判断することが重要です。 有資格者がいるか 業者の担当者が、福祉用具を扱う専門資格を持っているか確認しましょう。福祉用具を扱う専門資格には次のようなものがあります。 福祉用具専門相談員 介護福祉士 など 福祉用具専門相談員とは、介護保険を使って福祉用具をレンタルしたり、購入したりしようとする利用者の相談に応じて、希望に沿った福祉用具の選定・提案を行い、個別の福祉用具サービス計画を作成する専門職です。 資格は専門の知識・技術を持っている証拠となります。担当者が専門資格を持っているか確認することが、良い業者を選ぶことに繋がりますので、ぜひ実践してみてください。 よくある質問 レンタル前に福祉用具を見たり試したりできる? できます。業者の多くが「無料お試し期間」を設けており、ある一定期間、無料で福祉用具を借りて試すことができます。 ただし、全ての業者がその期間を設けている訳ではありませんし、あったとしてもその期間が極端に短い場合もあるため注意しましょう。 また、福祉用具のメーカーはサンプル品を用意しており、地域の社会福祉協議会や福祉用具展示場、展示会で実物に触れることができます。 このように、自分が納得できる製品を選べる機会を使って、実際に手に取って試してみることをお勧めします。 福祉用具が汚損、故障した場合は? 福祉用具が汚れたり、壊れたりした場合は、担当のケアマネジャーか、福祉用具の業者へ連絡すると、取り替え・修理の対応をしてくれます。 福祉用具は日常的に使う物品であるため、汚れたり、壊れたりすることは少なくありません。このような場合には、遠慮せずに業者やケアマネジャーへ連絡し、速やかに対応してもらいましょう。 メンテナンスは誰がする? 使っている福祉用具の定期的なメンテナンスは、福祉用具を取り扱う業者の福祉用具専門相談員などが行います。もちろん、利用者自身でメンテナンスをすることもできますが、専門職に任せた方が安心です。 まとめ この記事では、介護の必要な高齢者が利用する福祉用具を取り上げ、なかでもレンタルできる物品にスポットを絞って、その種類を説明するとともに、利用までの流れについて解説してきました。 複数ある福祉用具のうち、どの物品が自分の生活を便利に、豊かにしてくれるのか、担当のケアマネジャーとともに考える機会を持ってください。 参考文献 「介護保険における福祉用具、住宅改修」厚生労働省 一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟=編集(2021)『最新 社会福祉士養成講座 高齢者福祉』中央法規 全国平均貸与価格及び貸与価格の上限(過去公表分)厚生労働省 「医療費を支払ったとき(医療費控除)」国税庁 「医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価」国税庁 「要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」厚生労働省 「どんなサービスがあるの? - 福祉用具貸与」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省
2025.08.01
