排泄介助
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ポータブルトイレについて解説
ポータブルトイレとは? ポータブルトイレは個室トイレ以外の場所にも設置可能な簡易トイレのことです。・個室の水洗トイレへ移動するのが難しい・歩行速度が遅くなりトイレまで間に合わない・ふらつきがあり移動中に転倒の恐れがあるなど、個室トイレで排泄することへのリスクが高い方が使用します。 ポータブルトイレは排泄に使用する用具なので、椅子のような形をしています。トイレの便器と同じように中心には便座があり、便座の下には排泄物を受け止めるためのバケツが設置されていることがほとんどです。また、座った時に姿勢の保持がしやすいよう、多くの製品には背もたれや肘掛がついています。 ポータブルトイレの機能 基本機能に加えて、福祉用具は各個人の身体機能に合わせた便利な機能が搭載されています。ポータブルトイレは搭載されている機能や特徴に応じて、いくつかの種類に分類することができます。 肘掛を跳ね上げ・取り外し・昇降できるもの 肘掛が可動式になっており、移乗するときは障害物とならないように肘掛を椅子の横から逃がすことができます。排泄時は姿勢を支えるために元の位置に戻し、肘掛けとして使います。 椅子、肘掛の高さ調整ができるもの 利用者の体格や身体状況に合わせた微調整が可能です。 便座のタイプが選べるもの お手入れしやすい樹脂(プラスチック)製柔らかい肌当たりで長時間座りやすいウレタン製寒い季節でもお尻がひんやりしない暖房便座陰部洗浄がしやすいシャワー機能付便座などがあります。 脱臭機能がついたもの 気になる排泄臭を吸引して設置場所に残さないような装置が付いたものがあります。 バケツを洗わないもの 排泄処理袋と呼ばれる袋をバケツに被せて袋の中に排泄をすることで袋ごと処分するタイプ自動ラップユニットを搭載して排泄物を袋の中に密封するタイプポンプなど配管工事をして個室トイレ以外にも設置できる水洗ポータブルトイレなどがあります。いずれもバケツを洗う労力や排泄物の臭い軽減に大きな効果があります。 その他の機能 ひじかけの長さ調整(つかみやすい)キャスター付(ポータブルトイレを移動しやすい)便座の角度調整(排泄姿勢が取りやすい、立ち上がりやすい)座面・便座穴の幅(体格や排泄姿勢に合わせたサイズが選べる)便座の抗菌加工(お手入れしやすい)など、排泄やトイレ本体の維持管理がしやすくなる様々な工夫がポータブルトイレには施されています。 ポータブルトイレのメリット・デメリット ポータブルトイレを使うメリットとしては 排泄の自立度を維持し、介助量を少なく出来る可能性がある「トイレで排泄する」生活習慣を継続できる自分で排泄する尊厳を守れる近くにトイレがあることで不安を和らげる座ると排泄しやすい姿勢を取ることができ、スムーズな排泄ができる といったことが挙げられます。 一方デメリットとしては、 排泄物の処理に肉体的・精神的な負担がかかる設置場所の衛生面や臭いが気になる「個室トイレ以外の場所での排泄」に抵抗がある方もいる といったことが挙げられます。 ポータブルトイレの素材 搭載されている機能の他に、ポータブルトイレに使われている素材も、使い心地や商品金額を左右します。 樹脂製のポータブルトイレ ポータブルトイレの素材として最もポピュラーなものは樹脂(プラスチック)です。水洗いがしやすく比較的軽量・安価なのがメリットです。ポータブルトイレは衛生用品ですので、汚れても水洗いやアルコールなどでの消毒がしやすいのは大きな利点となります。また機能やデザインなどの種類が豊富で選択肢が多いことも利点として挙げられます。 デメリットとしては耐久性と、軽量であるがゆえの不安定さです。本体重量が軽量なものだと約3kg、重くても約10~15kg程度の製品が多いので、片麻痺の方など肘掛に体重をかけて座りたい場合にバランスがとりにくい可能性があります。 金属製のポータブルトイレ 軽量かつシンプルなものとしてスチール・アルミなど金属製のタイプがあります。金属製のポータブルトイレは「コモード型」とも呼ばれます。パイプを組み合わせたような形状のためパーツが少なく、トイレ本体のお手入れは最もしやすいです。シンプルな形状が故に最も「トイレっぽい」見た目をしており、居室など設置場所との調和が難しい点がデメリットです。 木製(家具調)ポータブルトイレ ポータブルトイレとして使用しない時には便フタを閉めることで椅子のようになり、居室の雰囲気を損ねにくい木製のものもあります。木製のポータブルトイレは椅子のよう=一般的な家具のように見えることから「家具調ポータブルトイレ」とも呼ばれます。このタイプの便フタにはクッションがついており、実際に椅子として使用することも可能です。便フタを持ち上げることで便座が露出し、トイレの機能を果たします。木製のメリットは前述の居室の雰囲気を損ねにくい点に加えて、重量があるので安定感がある点です。木製タイプの重量は約15~20kg程度のものが多いので、立ち座りが不安定な方でもしっかりつかまりながら動作を行えます。 デメリットは、比較的高価であることと、特に木製部分のお手入れ方法が限られてしまうことです。便座やバケツなど汚れやすい部分は樹脂製(便座は前述の通り樹脂以外の製品もあります)なので水洗いや消毒も簡単です。しかし、椅子本体の木製部分は水分が染み込んで素材を痛める可能性があるため多量の水で洗い流せません。汚れが付着した場合は可能な限り速やかに乾いた布やペーパータオルで拭き取る必要があります。 ポータブルトイレを選ぶポイント ポータブルトイレを選ぶ際、まず考慮しなければならないのが「利用者本人の身体能力」です。トイレでの排泄に必要な動作は 立ち上がる座る歩く の3つです。この3つの動作がどのくらい可能なのかで必要な機能が変わります。 身体の残存能力・体格に合わせたサイズを選択する まずは身体能力に合わせた機能が付いたトイレを選んだうえで、体格に合わせたサイズであることも重要なポイントです。 例えば、 小柄なので床に足を着けて排泄姿勢をしっかり取れるように、椅子の高さが低めのものが良い。しっかり立位が取れず、介助者の支えをもらってベッドサイドで座位で移乗したいので、肘掛可動式が良い。またベッドサイドにトイレを置くため臭いが少ないものが良い。短距離なら安全に移動できるので廊下に置けて動かしやすいサイズのものが良い という風に考えて商品を選定していきます。 住環境に合わせた機能を選択する 同じく重要なのが、住環境(介助者のマンパワー含む)です。 例えば、 寒い地域なので暖房便座タイプが良い夜間で介助者が休んでいる時間帯に頻回使用がありすぐに片付けが出来ないので、バケツ清掃が不要なものが良いベッド近辺にあまりスペースがないのでコンパクトなタイプが良い といった観点を考慮します。 その他に考慮すべき条件 既出の項目を重視しつつ、以下の条件にも合致する商品があれば、最善の選択といえるでしょう。 予算見た目、色などデザイン在庫状況(入院していた家族の退院日が決まった、などで必要な日までに届くかどうか) ポータブルトイレの使用方法 ポータブルトイレの使用方法は、バケツの有無で若干異なります。 排泄前 ポータブルトイレで排泄する前に、バケツタイプのトイレの場合は予めバケツに水を張っておきます。水を張ってあるとバケツに排泄物が付着しにくく掃除がしやすくなります。排泄物の臭いも広がりにくくなるので、忘れずに入れましょう。各メーカーから発売されている消臭剤を水と一緒にいれるのも効果があります。排泄処理袋を使用する際や自動ラップ式のトイレの場合は、予め袋となるものをセットしておきます。水分を固めるための凝固剤も排泄前に入れる方が入れ忘れを防止できます。 排泄時 実際の排泄は、個室の水洗トイレとさほど変わらない感覚で行えます。移乗・立ち座りなど安全に気を付けてゆっくり動作するようにしましょう。なお、安定した姿勢を保つために男性の小便の場合も座ることがほとんどです。 排泄後 バケツタイプの場合はバケツの掃除が必要です。トイレ本体からバケツを取り出し、個室のトイレまで運びます。この時に付属のバケツフタを使用すると運搬時の飛び跳ねや臭いの広がりを防止できます。トイレへ着いたらバケツの中身を便器に注いで流しましょう。空になったバケツをお風呂場などで洗って汚れを落とし、よく水気を切ってから再びポータブルトイレにセットします。 排泄処理袋タイプの場合は、バケツから袋を取り外して口をしっかり結んで処分します。排泄処理袋と自動ラップタイプの排泄ゴミは「紙おむつ」と同様の処分が可能です。この時、凝固剤が十分な量投入されていないと排泄物の水分が固まらずそのまま残ってしまいます。水分が残っていると「紙おむつ」として処分が出来なくなりますので、水分が残っている場合は凝固剤を追加投入します。自動ラップタイプの場合、トイレ本体のボタンを押してラップユニットを作動させます。処理が完了すると椅子部分の下から排泄物が密封された袋が落ちるので拾って処分します。こちらも水分が残っている場合は密封処理をする前に凝固剤を追加しましょう。 ポータブルトイレが購入できる場所 ポータブルトイレを購入出来る場所についてもご紹介します。※なお、ポータブルトイレは衛生用品のためレンタルすることは出来ません。 福祉用具販売店 「福祉用具専門相談員」という公的資格を持ったプロフェッショナルが必ず在籍していますので、利用者本人に合う製品を実際に試しながら適切に提案してもらえます。また介護保険を利用して購入する場合は都道府県に認定された事業所で購入する必要があるため、特別な事情がなければこちらで購入することが一般的です。製品の故障やメンテナンスなども対応してもらえます。 ホームセンター・デパートなどショッピングセンター おむつ、杖、シルバーカーなどを中心に様々な福祉用具が取り扱われています。トイレはシンプルなタイプのものが販売されている場合があります。こちらも実物を見ながら選定でき、店員さんが相談にのってくれる場合もありますが、介護保険の事業所ではないため介護保険を利用して購入することはできません。 インターネットショップ Amazonや楽天など大手モールでも福祉用具を販売するショップが増えました。自宅まで商品を届けてくれる点や、実店舗より若干安価で購入できる場合もあることが利点です。また実店舗より豊富なラインナップがあることも多く、幅広い製品の中から選ぶことが出来ます。気軽に利用できる半面デメリットも多く、実物を見ることが出来ないため利用者本人に合うサイズ感か?など重要なポイントの確認が出来ません。介護保険利用も不可です。アフターフォローなども購入者が自分でメーカーに問い合わせるなど自発的な行動が必要です。 最後に ポータブルトイレと聞くと、どうしてもの非常時やおむつ使用までの繋ぎなど「一時的な利用」というような簡易な印象を受ける方もいるかもしれません。しかし、弊社が実施したインターネットアンケート(現役ケアマネージャー対象)によると、約半数が「ポータブルトイレを1年以上使用した」と回答しています。排泄は複数の動作を組み合わせて全身をバランスよく使用する行為です。適切なポータブルトイレの使用は利用者本人のADLの低下予防に繋がります。メリット・デメリットをよく理解・検討して、ポータブルトイレの導入によって良い効果が得られるような排泄介助を目指しましょう。
2024.04.22
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排泄介助に使う福祉用具について解説
ポータブルトイレ ADLが低下してきた時、排泄介助用具として最初に検討すべき用具として挙がるのがポータブルトイレです。ポータブルトイレは移動が可能な簡易便器のことです。次のような身体状況の方に適しています。 個室トイレまでの移動時に転倒リスクが高い歩行がゆっくりになり尿意・便意を感じてから個室トイレまでの移動が間に合わない座位や立位の保持は可能な筋力がある 素材は最もシンプルなスチールやアルミの金属製、軽量でお手入れがしやすい樹脂製、安定感があり居室に馴染む椅子のような外見の木製などがありますトイレの中には排泄物を受け止めるバケツが入っているものが多く、排泄後は介助者がバケツの清掃をします。バケツがなく排泄物を特殊フィルムで密封する「ラップ式」のポータブルトイレも、ラップポンを始めとして近年では多く導入されるようになりました。通常はベッド脇や居室近くの廊下など、利用する本人が安全に移動できる場所に設置します。自分の居場所に近いところにトイレがあることで「いつでもトイレに行ける」安心感が生まれます。また、本人にとって個室トイレに近い感覚で使用出来るので、排泄の自立を維持しやすいメリットがあります。 尿器、差し込み便器 移動や立ち上がりが難しくなり日中もベッド上で過ごすことが多くなってくると、排泄介助はおむつの使用を検討する段階です。ですが、 尿意や便意を感じることができる このような方は尿器や差し込み便器を使用する介助方法もあります。尿器は取っ手の付いた筒状をしており、陰部に尿器の入り口をしっかりあてて尿を受け止めます。尿器は人間の身体構造に合わせて男性・女性用があります。 差し込み便器は例えるならば「深型のちりとり」のような形状をしています。差し込み便器はお尻の下に置いて使用し、排泄が済んだら腰を浮かせて取り出します。差し込み便器は男女兼用ですが、女性の場合は男性に比べると尿器が当てづらいため、排尿時にも差し込み便器を使用することがあるようです。 尿器・差し込み便器を使うと排泄物が肌に触れないので、衛生的な介助が出来ます。また本人から言葉で尿意・便意を伝えることが難しい場合はしぐさなどから介助者が排泄のタイミングを見計らうことが必要なこともありますが、「自分の意志で排泄が出来る」ことは本人を尊重することにも繋がります。 ポータブルトイレや尿器が購入できる場所 今回紹介した排泄介助用具は下記で購入することが出来ます。 福祉用具レンタル・販売店ホームセンターの介護グッズ売り場百貨店などの福祉用具売り場インターネット 店舗で購入する場合、実物を見ることで使用イメージが湧きやすいことが特徴です。実際の大きさや座り心地を試すことが出来るデモ品を展示している店舗もあります。特に福祉用具レンタル・販売店には「福祉用具専門相談員」という資格を持ったプロフェッショナルがいますので、住環境や本人の身体状況に適した製品を一緒に選んでもらうことができます。 オンラインでの購入は自宅まで届けてもらえるのがメリットです。 ポータブルトイレを介護保険を用いて購入する 排泄介助用具の中でもポータブルトイレは介護保険の「特定福祉用具購入」サービスを利用して通常より少ない個人負担で購入することが可能です。このサービスを利用するには介護保険の認定を受けた上で、各都道府県から指定を受けた「特定福祉用具販売事業者」で購入する必要があります。福祉用具レンタル・販売店は多くの場合が該当しますが、店舗に問い合わせたり、各市区町村や都道府県のホームページで指定事業者を確認することが出来ますので事前にチェックしましょう。 ホームセンターの介護グッズ売り場、百貨店などの福祉用具売り場、インターネットでの購入は対象外です。 そもそもなぜ介護用のトイレが必要なのか? トイレの介助で重要になることは「転倒などケガのリスクを防ぐこと」です。 トイレで排泄するためには、立ち上がる・歩く・座るなど複数の動作をします。これらを安全に行えるような配慮が必要ですが、本人の身体状況や介助者のマンパワー、トイレや住環境などによっては実現が難しいこともあり得ます。 トイレでの排泄が難しくなった時、使用を検討することが多いのがおむつです。パンツタイプなど簡易型を除き、おむつは介助者の手が無ければ装着できず、使用者本人は受け身での排泄介助となることがほとんどです。受け身での排泄介助が続くと、本人が排泄に対する意欲を失ってしまいます。またおむつを使用するとベッド上で寝たまま排泄が可能となり、排泄の為に身体機能を使う必要がなくなるため離床機会が減少します。これがADL・QOLの低下を招くこともあります。 トイレ介助でケガリスク低減と同時に最も大切なことは「本人の尊厳を守ること」です。 短い距離なら移動が出来る歩行は難しくても立ち上がることはできる など、身体機能を少しでも生かせる適切な排泄介助用具を積極的に取り入れていきましょう。おむつの前段階として、介助者に遠慮しない「自力での排泄」を叶えることができます。
2024.04.03
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トイレ介助の流れやポイントを解説
トイレ介助の流れ 個室のトイレで排泄をするまでには大きく3つの動作があります。 トイレまで歩く便器に座る立ち上がる それぞれの動作で介助のポイントがあります。共通して重要なのは、転倒のリスクを避けること、そして本人の尊厳を尊重することです。 トイレまで歩く:歩行の介助 個室のトイレは一般家庭の場合は居室内にないので、個室へ向かうことが必要です。 ひとりで歩ける場合、介助者が付き添って支える場合、福祉用具を使用する場合などパターンは様々ですが、最も気を付けなければならないことは「転倒リスク」です。高齢者にとって転倒は骨折など大けがに繫がり大変危険です。たった1回の転倒がADLの低下を招き、そのまま寝たきりになってしまう可能性すらあるのです。安全に移動できるように体重を支える手すりを設置したり福祉用具を活用することはもちろんのこと、滑りにくいマットや室内履きを使用して足元の環境を整えるとリスクを低減できます。 また歩行に必要な筋力が弱まると歩行のスピードがゆっくりになります。その結果トイレまで間に合わず失禁してしまうことがあり、本人の尊厳を傷つけてしまいます。その場合は介助者がタイミングを計ってトイレへの誘導声掛けをすることで個室トイレでの排泄を実現できることがあります。(無理をせずポータブルトイレを設置することもひとつの方法です) 便器に座る:トイレでの座位の介助 座位とは座った姿勢のことです。トイレでは座って排泄をしますが、高齢者の場合いきむ力が弱まります。すると自然に尿や便が体外へ排出するまでに、若い時に比べて時間を要するようになります。中には10分以上便座に座ったまま…という方も見られます。しかし腹筋・背筋が弱まり座った姿勢を保つことが難しくなると、トイレからの転落などケガのリスクが高まります。転落リスクを防ぐために排泄中も常時介助者が個室内で本人の身体を支えるとなると、人目を気にせず落ち着いて排泄することも困難です。 この場合、体重・体勢を支えるための手すりを設置することが有効な方法のひとつです。手すりにはイスのひじ掛けのように座った本人の左右に設置するものや、座った時の前方にテーブルのように設置するものなど様々な種類があります。本人の身体が傾きがちだったり、力を入れやすい方向をチェックして適切に設置しましょう。 また、トイレでいきむと血圧が瞬間的に上昇し、意識を失ってしまうことが有り得ます。そういった可能性がある場合も適切な手すりを設置することで身体を支えることが出来れば、転落を防ぐことが可能です。(ただしこの場合は脳卒中など危険な病気が原因であることも考えられるため、あまり長時間トイレから出てこないようであれば様子を伺いましょう) 立ち上がる:トイレでの立ち上がりと立位保持の介助 トイレでの衣服の着脱や排泄後の陰部の拭き上げをする際に必要な動作です。自分で立位を保つことが出来れば、介助者は介助動作に専念することができます。 しかし立位の保持が難しい場合は、介助者は介助動作に加えて本人の体重を支える必要があります。介助者が本人の身体を支えながら下肢へ手を伸ばす必要があるためバランスを崩しやすく、転倒リスクが高まって危険です。そのため、本人の身体状況によっては介助者が1名では対応できず、2名での介助が必要となります。狭いトイレの個室内に介助者2名+本人1名の大人3名が入るにはスペースが不足します。特に在宅介護の場合は常時2名の大人で介助が必要となると、個室トイレでの排泄が実現困難となりかねません。 この場合も本人の力の入れやすい場所に手すりを設置するなど、30秒くらい立位を保てるように福祉用具を活用すると解決できる可能性があります。 トイレの介助に便利な用具 トイレの介助は用具を活用することで、転倒リスクをおさえたり、排泄をスムーズにしたり、QOLをより高めることにつながります。 滑り止めマット 個室トイレと居室を往復する間に転倒することを避けるため、滑るリスクがある箇所にマットを設置すると効果的です。下肢の力が弱まると、スリッパや靴下などは想像以上につまづきや滑りの要因となります。 介護用手すり 便器の前で立つ、座るといった全身運動を行う際、あるいは排泄時にいきむときに、手すりが設置してあると力が入りやすくなります。また移動中に体重を支えるために廊下に手すりを設置することも重要です。 ポータブルトイレ / 尿器 / おむつ 個室トイレまでの移動が困難な場合、ベッドのある部屋にポータブルトイレを置いたり、ベッドのうえで尿器やおむつを用いて用を足すという選択肢もあります。 日本ではトイレの介助が特に重要 日本に洋式便器が導入され始めたのは第二次世界大戦後。そこから温水洗浄や暖房便座など発展を遂げ、現代の日本のトイレ環境は世界で一番きれいで整っていると言われています。 トイレは各国や地域で独自の文化やルールがありますが、日本人はいつでもどこでも「清潔な水洗トイレ」に慣れ親しんでいます。更に日本人は比較的「排泄を恥ずかしいと思う」気持ちが強い傾向があると言われています。(例として「排泄音消し装置」は日本独自の文化のようですね)こういったことからも、出来る限り最後までプライバシーが守られ衛生的な水洗トイレでの排泄を希望する方が多いです。 トイレで排泄するということは、私たちが普段意識している以上に「全身運動」です。本記事で解説した通り、筋力が弱まるとトイレでの自立排泄を叶えるための動作が難しくなっていきます。 逆を言えば、トイレでの排泄を続ける事ができればADLの低下も防止できるということかもしれません。個室トイレでの排泄が出来る身体能力がある場合は、様々な工夫をして本人の希望を叶えてあげられるようにすることがQOLの向上にも繋がります。
2024.03.25
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排泄介助の種類や手順、ポイントを解説
個室トイレ 一般的な個室のトイレを使用する場合です。 まずはこの方法がとれるかどうかを検討することが多いかと思います。 個室トイレの介助手順 要介助者本人からの要望があったら、トイレへ移動します。 導線となる箇所に障害物になりそうなものが無いか確認しましょう。 自力で歩ける場合は見守りまたは手引きをします。歩行器や車いすなど移動に補助が必要な場合は、福祉用具を安全に使用出来るよう支援し、トイレへ向かいます。 トイレに到着したら、着座と衣服の脱ぎ下ろしを支援します。 この時、バランスを崩しやすく転倒リスクが上がるため、 手すりや介助者につかまってもらい身体をしっかり支えること体重の移動をゆっくりすること脱ぎ着しやすい衣服を着用すること などに気を付けましょう。衣服を脱ぎ終えたら便器に着座します。 排泄中は出来るだけ個室内に本人1人になれるようにします。 排泄中にバランスを崩し転倒してしまう恐れがある場合やいきみづらい時は、排泄姿勢を保持できるような福祉用具を利用する方法もあります。 排泄し終わったら声をかけてもらい、陰部を清潔にします。 立ち上がって衣服を整え、再度安全に配慮しながら居室へ戻ります。 ポータブルトイレ 要介助者のADLが下がってくると、「トイレまで間に合わない」「転倒リスクが高く歩行が安全でない」など個室トイレへの移動が難しくなるケースがあります。その場合は、ベッドなど普段過ごす場所の近くにポータブルトイレを置くことで排泄の自立を保つことが出来ます。なお、自力での移動が難しくなっても座位(座った姿勢)を取ることが出来ればトイレやポータブルトイレでの排泄が可能です。 ポータブルトイレは金属やプラスチック、木材などで作られた移動可能な簡易トイレです。多くのポータブルトイレの中には排泄物を受け止めるバケツが設置されており、排泄後はバケツをトイレに運んで溜まった排泄物を流し、綺麗に洗浄して再度設置します。 ※弊社の『ラップポン』はこのタイプに該当します! ポータブルトイレの介助手順 基本的な手順は個室トイレとほぼ同様ですが、移動に違いがあります。 ポータブルトイレは多くの場合で本人の過ごすベッドの近くなどに設置されるため歩く移動距離は短くなります。ただ、脚力が弱まり歩行に不安を抱える方が多いため、安全にポータブルトイレへ座れるように『移乗介助』が必要になることがあります。 自力で立ち上がりやお尻を持ち上げることが出来る場合は力を入れやすい位置に手すりを設置します。握った場所を支点として身体の向きを変えてポータブルトイレに座ります。場合によってはスライディングボードなど移乗支援用具を使用すると乗り移りやすくなります。自力でお尻を持ち上げることが出来ない場合は適切な用具等を使用し、周囲の安全を確保してから移乗を支援します。 バケツタイプのポータブルトイレ使用後は居室の衛生面を保つために、出来るだけ速やかにバケツ清掃を行うことが望ましいです。バケツに水を張り消臭剤等を使用することで排泄物の臭い等を軽減できます。 尿器・差し込み便器 安全に座ることやベッドからの移動が難しくなっても、尿意や便意を本人が感じることが可能な場合は尿器や差し込み便器を使うことでベッド上でも自分の意志で排泄が出来ます。 尿器・差し込み便器は皮膚を傷つけにくく清掃しやすいプラスチックやシリコン製が多く、それぞれ陰部に直接当てて使用します。排泄後は中身をトイレに流してから洗浄します。 尿器・差し込み便器の介助手順 ベッド上の要介助者本人の要望があったら用具を準備します。衣服をゆるめ、用具を陰部に当てて排泄します。差し込み便器の場合はお尻を浮かせて差し込む必要があるため、強く摩擦が起こらないよう配慮して介助します。 排泄後は陰部を清潔にし、衣服を整えてから用具を洗浄します。 おむつ ベッドからの移動が難しく尿意や便意が感じにくくなると、おむつを着用して排泄をします。おむつに排泄物が長時間付着していると皮膚のトラブルや感染症などのリスクが高まるため、排泄後はできるだけ速やかに新しいおむつに交換することが望ましいです。 おむつの介助手順 ベッド上の要介助者におむつをあて、排泄があった場合は陰部を清潔にして新しいものに交換します。 おむつにはそれぞれ吸収可能な量が設定されているので、本人の排泄量に応じたものを選びましょう。サイズや形も様々ですが、一般的にベッド上で一日を過ごす要介助者にはテープ止めタイプのものを使用します。あて方が緩かったりずれたりすると漏れの原因となります。 交換したおむつを処分する時は、居住市区町村のごみ分別の規則を必ず確認してください。 排泄介助のポイント 排泄介助の方法についてご紹介しましたが、どの場合でも最も大切なことは「要介助者本人を尊重する」ということです。 排泄行為は日常生活の中で最もプライバシーが守られるべき行為です。人目に触れることは非常に強い羞恥心と苦痛を伴います。たとえ介助が必要となっても「介助を受けているのだから」と配慮を怠ると本人の自尊心を傷つけ、ADLやQOLの低下を招きます。 ですが、意志を尊重して見守るあまりに必要な手助けが行われず、排泄の失敗を繰り返してしまっても「当たり前の行為が出来なくなってしまった」と自尊心は大きく傷ついてしまいます。 本人の残存機能を生かした上でプライバシーを尊重し、適切な介助で出来る限り自立した排泄を続けていけるように支援していきましょう。
2023.12.12