介護が必要になると様々なシーンで必要となる福祉用具ですが、購入を検討したら思ったより高価だった!ということも少なくありません。
そこで頼りになるのが「介護保険」です。
この介護保険を利用すると多くの福祉用具をレンタルして使用することが可能になりますが、中にはレンタルに適さず購入が必要な福祉用具もあります。
実はトイレ・排泄介助関連の用具は現在の介護保険制度ではレンタルをすることが出来ません。
その場合、介護保険でどのような補助を受けることが出来るのでしょうか?
Contents
介護保険(公的保険)について概要
介護保険とは「高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み」のことです。
日本に住民登録のある人が40歳になると居住市区町村に対して支払いが開始され、介護や支援を必要とする状況になった際は市区町村に申請することで審査を経て給付されます。
65歳以上が第1号被保険者、40~64歳が第2号被保険者とされます。ただし、第2号被保険者が給付対象となるためには、厚生労働省が定めた16種の特定疾病(※)に罹患していることが条件となります。
なお、療養型病床を除く病院への入院や障害者施設への入所の際は、それぞれ適用する保険が変更になる(公的医療保険や障害者手帳制度など)場合があるため、介護保険の給付を継続することができない可能性があります。事前に担当のケアマネージャーや施設職員、市区町村の介護保険担当課へ確認が必要です。
※参考|16種の特定疾病:
末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、後縦靭帯骨化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、早老性、多系統萎縮症、糖尿病性神経障害・腎症・網膜症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
トイレ・排泄関連用具に利用できる介護保険制度は?
下記の2種類があります。それぞれどのように利用できるか見てみましょう。
- 住宅改修
- 特定福祉用具購入
住宅改修とは
住宅改修制度は介護が必要な本人が暮らしやすくなるよう、住宅の設備を新設したり改善を加えたりするものです。
排泄介助に関わる部分では個室トイレを安全に使用するための改修となりますが、工事を伴う内容が対象です。後述する特定福祉用具購入制度と違い、介護専門の事業者で無くても制度を利用することが出来ます。
主な改修場所・内容は
- 廊下やトイレ個室内の手すりを取り付けて歩行や立ち座りの支えとする
- トイレへの導線上にある段差を解消させて安全に移動できるようにする
- トイレの開き戸を引き戸にして開け閉めしやすくする
- 和式便器を洋式便器に取り換えて負担の少ない排泄をする
- ウォシュレットを取り付けて排泄後の清潔を保ちやすくする
などが考えられます。
「マットを敷く」など工事を伴わない改修は本制度の対象外ですが、工事を伴わない手すりやスロープなどの設置は本制度ではなく同じ介護保険制度の福祉用具貸与(レンタル)で対応することが可能です。
住宅改修の給付金額上限は20万円で、かかった費用のうち7~9割の補助を受けられます。つまり個人の負担は1~3割です。介護保険の給付開始後、上限内であれば複数回利用可能です。上限額を超えた分は実費となります。
住宅改修の給付金は保険受給後1回のみです。年度による再給付がありませんので、上限額まで使い切った以降の改修費用はすべて実費です。ただし、被保険者の要介護度が大きく上がり更なる住宅改修が必要となった場合や、引っ越しなどで住居が変わった場合は新たに20万円が給付されます。
特定福祉用具購入とは
本記事の冒頭で「レンタルに適さず購入が必要な福祉用具がある」と述べましたが、このような福祉用具を購入するための補助を受けることができるのがこの制度です。
具体的には主に排泄・入浴に関する福祉用具が該当します。これらは直接肌に触れるものであり、衛生面の観点などからレンタルが難しいため購入して使用することとされています。
厚生労働省が定めた品目は次の6種類です。
- 1 腰掛便座
- 2 自動排泄処理装置の交換可能部品
- 3 排泄予測支援機器
- 4 入浴補助用具
- 5 簡易浴槽
- 6 移動用リフトの吊り具
このうちトイレ・排泄介助関連の主な品目は1となります(2・3・6も排泄介助に役立ちますが本記事では説明を省略します)。
腰掛便座とは
腰掛便座は次のようなものがあります。
- ポータブルトイレ
- 形状変換用便器
- 補高・補助便座
ポータブルトイレ
腰掛便座に含まれるもので一番多く購入されるのがポータブルトイレです。弊社製品「ラップポン」もここに該当します。
ポータブルトイレについて詳しく知りたい方は こちら の記事をご参照ください。
形状変換用便器
形状変換用便器とは便器取り換えの住宅改修をしなくても、既存の和式便器を洋式便器として使うことができるようにするアタッチメントのようなものです。
外見はプラスチック製の洋式便器のような形をしていますが、内側は一般的に空洞になっています。バケツのないポータブルトイレのようなイメージです。
和式便器の上からこれを被せて設置すると、見た目は洋式便器形状となり座って排泄することが可能です。排泄物は元々ある和式便器の中に落ち、既存の水洗設備を使って流すことができます。
補高・補助便座
洋式便器の便座の上に乗せ、座面高(床から便座までの高さ)や便座穴の径を調整するためのものです。
膝や股関節が曲がりにくくなると、姿勢を低くすることに痛みを伴います。特に古い洋式便器の場合、現在発売されている便器に比べて座面高が約5cm前後低くなっていることが多いです(これには日本人の平均身長の伸びが関係しているようです)。
立ち座りがしにくい場合は補高便座を使用して座る量を少なくすることで、関節への負担を減らすことが出来ます。
また、お尻が痩せて元々の穴の径だと沈みすぎてしまい安定して座れない場合は、補助便座を乗せて穴の径を小さく調整すると安全です。
特定福祉用具購入のポイントと注意点
特定福祉用具購入の給付金額上限は10万円で、かかった費用のうち7~9割の補助を受けることが出来ます。上限を超える分は実費です。
この給付金額は同年4月1日~3月31日の年度が切り替わると再度10万円が利用可能枠として給付されます。また、上限額以内であれば年度内で複数回利用可能です。
一例として、特定福祉用具購入制度を利用して「ラップポン・ブリオ(S)普通便座タイプ」を税込定価(¥119,250)で購入した場合の費用を見てみましょう。
※負担割合は年金収入を含めた前年度の被保険者の年間合計所得によって変化します
・1割負担の場合:¥10,000(上限10万円の1割)+ ¥19,250(上限超過分)=¥29,250
・2割負担の場合:¥20,000(上限10万円の2割)+ ¥19,250 = ¥39,250
・3割負担の場合:¥30,000(上限10万円の3割)+ ¥19,250 = ¥49,250
なお、特定福祉用具購入制度には注意すべき点があります。
この制度の補助額は「年度が切り替わると再度給付される」と前述しましたが、破損や利用者の身体状況の変化など特別な理由がない限りは同一品目種の福祉用具を再度購入することは認められません。
「価格の安さを重視しすぎて、必要な機能が不足してしまった」「沢山機能がついたものを選んだが、使いこなせなかった」など購入してから後悔したというケースは多いです。
購入を検討する際には希望をしっかり伝えた上で、理学療法士・作業療法士・ケアマネージャー・福祉用具専門相談員などプロフェッショナルの見解を交えながら慎重に選定しましょう。
また、この制度を利用するためには各都道府県から指定を受けた「特定福祉用具販売事業者」で購入する必要があります。インターネットやホームセンターでの購入は適用外となるため注意が必要です。
介護保険を適用した場合の支払い方法
この記事内で紹介した
- 住宅改修
- 特定福祉用具購入
の双方の制度に関する費用の支払い方法は、一般的に「償還払い」と呼ばれる方式が取られます。
これは一時的に被保険者が全額を支払い、介護保険の給付を受けている市区町村の介護保険担当課に申請することで補助額を後日受け取るものです。
市区町村によっては予め補助額を差引いて支払いが出来る「受領委託支払い」が可能な場合もありますので、詳しくは市区町村役場の介護保険担当部署へお問い合わせください。