災害支援
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令和6年能登半島地震 トイレ支援現地レポート③
災害発生時のトイレ環境の悪化 トイレ環境が悪化する様子を、時系列で見てみましょう。 1:災害発生時、多くの場合で断水が発生します。すると直後に水洗トイレを流すことが出来なくなるため、使用不可になります。2:皆なるべくトイレを我慢しますが、時間経過と共に我慢できなくなります。3:やむを得ず水の流れないトイレで排泄をします。4a:排泄物はそのまま放置され、次の人もやむを得ずその上から排泄をします。これが繰り返され、排泄物がどんどん蓄積していきます。4b:近くの川やため池、プールなどから水を汲んできて、バケツなどで流そうとします。流すのに使用する水は随時汲んで用意しておきます。 最後はaとbの2パターンの悪化状況を想定しましたが、実際の現場ではどちらも有り得ることです。少し掘り下げてみましょう。 a:排泄物が蓄積していくパターン 排泄物そのものが残ったままなのでひどい悪臭がトイレ個室から漏れ出ます。また、トイレの便器そのものは排泄物を溜めておける容量がさほどないため、あっという間に満杯になってしまいます。その結果「排泄出来る場所そのものがない」という最悪の状況に陥ります。 排泄物がそのままになっている環境、そこは細菌・ウイルスの巣窟です。排泄物でいっぱいになったトイレは断水解消までそのままになるか、人力で掻き出したり掬ったりして清掃するしかありません。(そのようにして決死の想いでトイレ掃除をした方が実際にいるのです) b:バケツで排泄物を流すパターン 一方bは水で流すので一見清潔に見えますが、トイレを綺麗に流すために使う水量は新しいトイレでも5リットル、古いタイプだと10リットル程度とも言われます。この量の水が入ったバケツを持ち上げ、便器の真ん中めがけて勢いよく流すのは体力の無い人には困難です。トイレに行くたびにこの動作をし、使った分の水を汲んで重たいバケツをトイレまで運ぶ…数日なら頑張れても、この状況が1週間続くとトイレに行くだけで疲弊してしまいます。 更に、この時に使用する水は多くの場合で衛生的な上水ではありません。十分な手洗いの出来ない状況では、バケツに汲むときや流すときに不衛生な水が手や指に付着したままになりがちです。また、流したときトイレの床に水が飛び散ってしまうと、その上を歩くことで靴底にも汚れが付着します。これは汚れやウイルスをトイレから避難スペースへと持ち出すことに繋がります。 ※余談ですが、断水時に水を使ってトイレを流す場合「タンクに水を入れて流す」はやってはいけないと各トイレメーカーからもお知らせが出ています。タンク内に新たに水を補充することが出来ないため水量が足りず下水管のつまりなどの原因となります。必ずバケツで便器に直接水を投入するようにしましょう。 トイレ環境の悪化と災害関連死 排泄物の放置、バケツでの排泄物の処理…どちらの経過を辿っても、避難所のトイレ問題として共通することは「汚れやウイルスが広がる」「トイレに行かなくなる」の2点です。これはどちらも最悪の場合は命に関わるほど非常に重要な点です。 せっかく災害そのもので助かった命が、その後の避難生活で失われてしまう…これを「災害関連死」と呼びます。トイレの衛生環境悪化は災害関連死の大きな一因であり、これを防ぐことが大変重要です。 トイレ環境悪化による感染症の蔓延 「汚れやウイルスが広がる」ことは「感染症が蔓延する」ことに直結します。昨今新型コロナウイルス感染症が猛威を振るいましたが、それ以前から衛生環境が悪化し栄養バランスが偏りがちな避難所では、ノロウイルス・感染性胃腸炎・インフルエンザなどが流行することがありました。感染症の症状が出た人が通常の避難スペースに滞在しているとあっという間に感染症が拡大してしまうため、避難所では体調不良者が静養するための部屋を別途設ける事となっています。ただし、この部屋には限りがあり、その部屋を出入りする家族や職員なども常に感染の危険に晒されることとなってしまいます。免疫が低下している状態で感染症にかかるとどうなるか…想像に難しくないのではないでしょうか。 トイレ環境悪化によりトイレに行かなくなる 次に「トイレに行かなくなる」を順を追って説明します。 私たち人間は食べたり飲んだりすることで生きていますが、飲食をすると必ず老廃物を排泄物として体外へ排出します。ということは「飲食をしなければトイレに行かなくて済む」と考えることも出来ます。避難所のトイレが汚れていたり使いにくかったりして苦痛になると、トイレに行かなくていいように実際に飲食の量を減らす人が出始めます。すると栄養分や水分が不足し、脱水症状や免疫力の低下を引き起こします。その状態が続くと高血圧や肺炎・持病の悪化などを招き、最悪の場合は心臓や脳血管の疾患・誤嚥性肺炎・エコノミークラス症候群など致命的な病気へと繋がる可能性があります。 災害関連死を防ぐラップポンの被災地支援 合言葉はTKB(W)48 防災に取り組む人々の間では「TKB(W)48」という合言葉がよく知られています。これは ・T:トイレ※衛生的で快適に使える・K:キッチン※暖かくバランスの良い食事が採れる・B:ベッド※身体をしっかり休めることが出来るを発災から48時間以内に整備する という意味で、すべてが災害関連死を防ぐために重要なポイントとされています。(寒冷地では W:ウォーム※身体を温めるもの も必要と言われています) 実はラップポンの被災地支援初回出動は、最大震度6弱を観測した2007年の能登半島地震でした(まさか短期間に同じ地域で2度も大きな地震が起こるとは思いもしませんでした)。ラップポンの強みは屋内でも「汚れを残さない」「臭わない」「排泄物も菌も漏らさない」トイレであることです。2007年当時ではまだ災害関連死という単語はマイナーで一部の有識者だけが使うものでしたが、介護の現場から生まれたラップポンは「日常生活でトイレに困る人は災害時にはもっと困るはず」との想いから災害被災地でのトイレ支援活動を始めました。 自分の避難スペースから比較的近い屋内にいつでも清潔で安全に使えるトイレがあることで、屋外のトイレまで行くことの難しい人でも安心して飲食することが出来るようになります。しっかり食べて排出し、睡眠をとる。このサイクルが周ることで、災害関連死の防止に繋がります。災害の発生を防止するのは難しいですが、災害関連死の防止は準備と避難所運用次第で実現可能です。 なかなか語られないが、なくてはならない清潔なトイレ トイレや排泄の話題はデリケートな内容でもあることから日常生活でもあまり活発になされることはありません。特に日本人は「大変な時に贅沢・わがままを言ってはいけない」という気持ちが働きやすい面もあり、災害時にトイレについて「困っている」「悩んでいる」といった声が具体的な内容を伴って表面化することが少ないのが現実です。更にトイレという場所の性質上、悲惨な状況になったトイレの映像や写真は報道で流されることはまず無いため、非常時のトイレの状況について事前に想像することが難しいのも事実です。 しかしながら実際に被災地の避難所でラップポンの設置に伺うと、組み立てや使い方の説明を聞きながら「トイレが近い体質なのでなるべく飲まないようにしていました」「ずっと心配だったのでこれで安心できます」と誰にも言えなかった不安な気持ちを仰る方が沢山います。水が出るようになり、ラップポンの撤収に伺った際には「快適に使えました」という安堵の言葉に加えて「トイレが不便だとこんなに困るとは思っていなかったです」と素直に伝えてくださる方もいます。多くの場合、これらを伝えてくださるときは皆笑顔です。 生きている人間は生理現象として必ずトイレを利用します。トイレは陰になりがちですが無くてはならない必須設備だからこそ、災害時でも快適に使えるトイレがあることは、不安な中でも安心して日常生活を取り戻す一助になるはずです。 綺麗なトイレで災害関連死を防ぎ、生きる活力が湧いてくるような日常生活が送れるような力添えが出来るように。大変な業務ですが、ラップポンメンバーはそんな想いで被災地支援にあたっています。
2024.04.30
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令和6年能登半島地震 トイレ支援現地レポート②
被災地支援で用いられるラップポン 被災地支援に用いられるラップポンは「ラップポン・トレッカー」です。この製品は従来のラップポン製品と同様にボタン操作のみで自動熱圧着処理が出来る自動ラップ式です。アルミ製のボディなのでアルコールや次亜塩素酸水での消毒がしやすく、丈夫なのに軽量である点が大きな特長です。また、ラップに使用するフィルムは特殊防臭素材「BOS」を採用しており、熱圧着による密封効果と併せてフィルム内部の臭いや菌を1ヶ月程漏らさないようになっています。そのため、ゴミの収集が通常通りに行われず避難所や施設内で保管が必要な場合でも、環境を汚すことなく保管することができます。オプションで専用バッテリーや背もたれ・手すりを用意しており、様々な状況で安全に使用可能です。 ラップポンに背もたれ・手すりを付けて設置した例 被災地で必要なトイレの台数 このラップポン・トレッカーを、認定NPO法人災害医療ACT研究所の指示によって主に市町村の指定避難所・医療機関(病院やクリニック)・福祉施設(介護施設や障害者施設)など公共施設やそれに準ずる施設で、屋内トイレを必要とする場所に設置していきます。また地域住民が集まる指定外の自主避難所にも設置をします。なぜこれら施設が特に優先されるのかというと、まずは率直に「大勢の人が集まるためトイレの台数も沢山必要になる」からです。 災害用トイレの必要台数の目安ですが、発災後多くの人が出入りする急性期では50人に1台、少し落ち着いてきた頃には20人に1台、それぞれ男女別に必要とされています。トイレの利用時間の違いから、女性用と男性用のトイレの数の割合を3:1にすると良いとも言われます。仮に300人(男女比1:1)の避難所があった場合、最低限のトイレの台数は男性3基・女性9基の合計12基ということになります。(ただしこれは仮設トイレ・簡易トイレ・携帯トイレなど災害時に使用可能なトイレを全て合わせた数で大丈夫です) ずらっと並ぶ屋外の仮設トイレこの避難所には訪問当時170名の避難者がいました 災害時には複数タイプのトイレを用意する ラップポンを住民が集まる避難所・施設に設置するもうひとつの理由は「災害時に使用されるトイレは複数のタイプがあった方がよいから」です。 「避難所のトイレ」というと、まずは大きな扉がついたボックス型の屋外向け仮設トイレを思い浮かべる方が多いのではないかと思います。このトイレを備蓄品として有している自治体はまれで、多くは近隣市町村の建設向け機器レンタル業者やトイレ業者などと災害時協定を結び、必要に応じて輸送し設置をしてもらうようになっています。衛生面などを考慮するとトイレを居住空間と分けて屋外に設置した方が環境を整えやすいので、多くの避難所にこのタイプのトイレが配備されます。 しかし、多くの人の集まる場所では複数タイプの災害用トイレを用意し使い分けることが重要です。なぜそのような配慮が必要なのでしょうか? 複数タイプのトイレ設置が必要な理由 避難所にはお年寄り・身体に障害のある方・乳幼児・妊娠中の女性・持病を抱えた方などいわゆる「災害弱者」の方が多く集まり、中には 階段や段差を上り下りできない一人での移動が難しい足腰が弱かったり膝が悪いため和式トイレが利用できない など屋外のトイレを使用することが困難な方がいます。また今回の災害は真冬ということもあり、避難所内は暖房がしっかり効いていました。その分、屋外のトイレを利用する際は、急激に寒気に触れると心臓に負担がかかり意識を失ってしまう「ヒートショック」に注意するよう呼びかけられていました。ヒートショックは冬場のお風呂などで発生しやすいと聞いたことがある方もいるかもしれませんが、高血圧を抱えやすいお年寄り・妊婦さんなどは特に配慮が必要です。 その他にも、衛生環境の悪化する避難所で流行しがちなノロウイルスやインフルエンザ・新型コロナウイルスなどの感染症患者・発熱者、慣れない環境で過ごすことで持病が悪化したりストレスによる体調不良者など、隔離が必要な方も避難所では発生します。特にウイルス性の感染症患者は健康な避難者と同じトイレを使用すると感染症拡大を招く原因となりかねないため、屋内(隔離室内)で使用出来るトイレが必要です。 屋内にトイレを設置する場合に考慮すべきこと 屋内にトイレを設置するためには プライバシーの確保衛生環境の整えやすさ動線のよさ を考慮する必要があります。通常ラップポンは既存トイレの個室内に設置します。既存のトイレには男女ともに鍵のかかる個室が必ずありますので、その個室を利用できればベストです。ですが、個室には洋式の水洗トイレが設置されていることが多いため、ラップポンを設置することでドアの開閉や衣服着脱のスペースが十分確保できない場合は別の方法を考えます(少なくなりましたが和式トイレ個室がある場合は便器の上からラップポンを設置出来るため、私たちにとっては好都合です) 医療・福祉施設の場合は十分な広さの多目的トイレがあることが多いため、ラップポンを設置しやすい特徴があります。既存トイレの個室内に設置できない場合、プライバシー確保のためにテントやパーティション、カーテンといった目隠しになるもの(使用中に内側から鍵をかけるためにも、可能であれば鍵付きのテントが望ましい)が必要になります。これらを利用し、トイレ内の通路や施設内廊下の突き当り、空き部屋に設置します。 ただし設置場所については必ずしも廊下や空き部屋であれば良いというわけではありません。お年寄りや足に障害がある方など移動が困難な方の場合はトイレまでの動線が遠いと間に合わない可能性があるため、出来るだけ割り当てられた居住スペースの近くにトイレ設置を希望することもあります。体育館など広い避難スペースを有した施設ではフロアの入口側まで歩いていかなくても良いように、ステージの緞帳の裏側や器具倉庫にテントを立ててラップポンを設置した例もありました。前述した感染症患者や体調不良者などの隔離室内に設置する場合もテント等が必要です。 ラップポンは設置がゴールではない これらいくつかの条件を念頭に置きながら、まずは災害医療ACT研究所所属の医療従事者が各施設の責任者や担当者と状況を踏まえて検討し、ラップポンが必要と判断された場合にはどこに何台置くべきか?を再度確認して必要台数の搬入・組み立て設置を進めていきます。設置をした後は使用していただく中で消耗品の補充依頼やエラー発生などの連絡を頂き、常駐しているメンバーが現地訪問する…という流れが2024年3月下旬も続いています。水洗トイレが使用出来るようになった場合は撤去作業も実施します。これらは現在開設されている避難所が閉鎖になるまで、医療・福祉施設の場合は水洗トイレが復旧するまで継続することとなります。 入所者150名の介護老人保健施設@七尾市 にてラップポンを組み立て中職員数も多いため計10台設置しました ※2024年1月8日 トイレ掃除をどうするかも重要 災害時のトイレ支援についてキーポイントとその方法などをお伝えして来ましたが、被災地の衛生環境を整えるために、災害用トイレの種類に関わらず重要なことがあります。 それは「トイレ掃除をどのようにするか」です。 トイレが設置されていても、管理が行き届いていないと臭いや汚れが酷い状況になりがちです。汚れたトイレは利用しづらくなり、衛生状況の悪化や体調不良に繋がってしまいます。反対に綺麗なトイレを維持している避難所や施設は、早い段階でトイレの衛生管理のルールを構築していることが多いように見えます。そういった施設はトイレだけに限らず皆で環境を良くしようという動きが見え、避難者・スタッフ共に皆辛い状況でも明るい雰囲気を感じます。災害とは別の話ですが、以前東京のとある商業施設がトイレの美化に力を入れたところトイレの利用客が増え、その結果集客・売上がアップしたという話を聞いたことがあります。それだけトイレが綺麗な状況はそこにいる人の気持ちに影響を及ぼすものでもあります。 たとえ非常事態であっても、トイレはいつも清潔に、誰にでも使いやすく。ラップポン部隊はいつでもその信念を持って、被災地支援を続けています 次回は、一見当たり前なようですが深く考えるとなるほどと思う「トイレ支援が重要な理由」と「ラップポンが被災地支援をする理由」についてお話します。
2024.04.15
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令和6年能登半島地震 トイレ支援現地レポート①
発災から支援開始までに5日間 災害医療ACT研究所を通じて支援要請が届き、大急ぎで支度や車両手配などをしてラップポンの先発部隊が石川県へ駆け付けたのが1月4日。現地の状況や物資の確認を分かっている範囲で済ませ、翌5日からまずは七尾市にて設置支援活動を開始しました。 報道でご存知の方も多いと思いますが、特に被害が大きかった市町村としてよく名前が上がるのは七尾市の他に輪島市・珠洲市・能登町・志賀町・穴水町などです。 しかしながら、支援活動開始の1月5日の時点で私たちが辿り着けたのが七尾市まで。その他の地域で活動が出来るようになったのはさらにその翌日からでした。既に発災から5日が経過し、なぜ多くの被災者が広範囲で待っているのに、迅速に支援活動が出来なかったのでしょうか? 支援には優先順位がある 被災地支援と一口に言っても、その支援内容は人命救助、医療支援、インフラなどの整備、復興支援…など多岐に渡ります。また、時間が経過するにつれて必要な支援は刻々と変化していきます。 ラップポンの活動はトイレ支援。これは「命を守る」という意味では人命救助の一環とも言えますが、「避難所の衛生環境整備」にあたります。 私たちが石川県に到着した頃、被災した市町村では最優先とされる「人命救助&捜索」の真っ只中。救助を待つ人の生存率に関わる「72時間の壁」という言葉を報道で耳にした方も多いかと思いますが、救助に携わる自衛隊や都道府県警察・消防や医療体制を整えるための各都道府県DMAT隊が続々と駆け付け昼夜問わず活動している状況では、まだ「避難所整備」の支援に本格的に入ることは難しいのです。(ただし医療支援スタッフが医療ケアをしながら各避難所の環境整備に着手する場合もあるため、避難所支援が全く手つかずということはありません) この段階では各市町村役場でも避難所の状況を把握しきれず、物資の受け入れや配布の態勢が整っていないため、支援物資の均等かつ適切な割り振りが難しいことも多いです。 被害の大きな地域や孤立集落へ向かう自衛隊車両やDMAT隊にラップポンを託しました 安全行動のため移動範囲が限られる 更に、支援活動において最も重要なことのひとつは「安全に行動すること」です。 現地へ到着した段階ではまだ道路の損壊状況が甚大で、あちこちに亀裂が入ったり路肩が崩れたり、マンホールが飛び出したりして車両の通行が不可能もしくは困難な箇所ばかり。道路上には倒壊家屋の瓦や梁、家財道具などが溢れている箇所もある状態で、特に夜間の車移動は視界の悪さも相まって非常に危険を伴う状況でした。真冬の能登半島は雪の多い地域であることも移動を困難としました。 地震によって亀裂が入ったり(上)、土砂や石垣が崩れた(右)場所も沢山ありました 各携帯電話キャリアの基地局車もまだ被災地へ向かっている段階で、携帯電話の電波が不安定な地域も多い状態では、何かトラブルがあっても助けを呼ぶことすら出来ません。特別な装備を持つ車両の無い私たちでは安全な移動を確保することができず、行動範囲が限られたり移動に大幅な時間を要してしまい、肝心の支援活動があまり出来ないということもありました。 発災後すぐに支援は来ない その他様々な要因はありますが、支援者も「支援に行きたくても行けない」という事情があることをここまでお伝えしました。 これらのことから是非心に留めていただきたいのが「発災後すぐに支援は来ない・来られない」ということです。 発災直後は被災市町村の職員や地域住民…つまり被災者自身で避難所を開設し、その時点で手元にある物資…事前の備蓄品だけが命綱となります。よく『災害用の備蓄は最低3日間、出来れば1週間分用意しましょう』と言われますが、これは前述したような事情から備蓄品で乗り切らなければならない日数の目安です。 災害が発生したとき、助けや支援は必ず来ます。その助けが来るまでの期間を、いかに安全に過ごすことが出来るか?が自分や周囲を守るための大きなポイントとなるのです。 次回は「ラップポンでのトイレ支援」についてお伝えします。
2024.03.29