認定NPO法人災害医療ACT研究所の活動の一環として予てより「ラップポン」で大規模災害の被災地でのトイレ支援活動を実施してきた日本セイフティー株式会社は、令和6年能登半島地震の被災地でもトイレ支援活動を行っています。

活動レポートの1回目は、「なぜ迅速に支援活動が出来ないのか」についてまとめました。
レポート第2回目は、「トイレ支援活動の実際」についてです。

被災地支援で用いられるラップポン

被災地支援に用いられるラップポンは「ラップポン・トレッカー」です。
この製品は従来のラップポン製品と同様にボタン操作のみで自動熱圧着処理が出来る自動ラップ式です。
アルミ製のボディなのでアルコールや次亜塩素酸水での消毒がしやすく、丈夫なのに軽量である点が大きな特長です。
また、ラップに使用するフィルムは特殊防臭素材「BOS」を採用しており、熱圧着による密封効果と併せてフィルム内部の臭いや菌を1ヶ月程漏らさないようになっています。
そのため、ゴミの収集が通常通りに行われず避難所や施設内で保管が必要な場合でも、環境を汚すことなく保管することができます。
オプションで専用バッテリーや背もたれ・手すりを用意しており、様々な状況で安全に使用可能です。

ラップポンに背もたれ・手すりを付けて設置した例

被災地で必要なトイレの台数

このラップポン・トレッカーを、認定NPO法人災害医療ACT研究所の指示によって主に市町村の指定避難所・医療機関(病院やクリニック)・福祉施設(介護施設や障害者施設)など公共施設やそれに準ずる施設で、屋内トイレを必要とする場所に設置していきます。
また地域住民が集まる指定外の自主避難所にも設置をします。
なぜこれら施設が特に優先されるのかというと、まずは率直に「大勢の人が集まるためトイレの台数も沢山必要になる」からです。

災害用トイレの必要台数の目安ですが、発災後多くの人が出入りする急性期では50人に1台、少し落ち着いてきた頃には20人に1台、それぞれ男女別に必要とされています。
トイレの利用時間の違いから、女性用と男性用のトイレの数の割合を3:1にすると良いとも言われます。
仮に300人(男女比1:1)の避難所があった場合、最低限のトイレの台数は男性3基・女性9基の合計12基ということになります。
(ただしこれは仮設トイレ・簡易トイレ・携帯トイレなど災害時に使用可能なトイレを全て合わせた数で大丈夫です)

ずらっと並ぶ屋外の仮設トイレ
この避難所には訪問当時170名の避難者がいました

災害時には複数タイプのトイレを用意する

ラップポンを住民が集まる避難所・施設に設置するもうひとつの理由は「災害時に使用されるトイレは複数のタイプがあった方がよいから」です。

「避難所のトイレ」というと、まずは大きな扉がついたボックス型の屋外向け仮設トイレを思い浮かべる方が多いのではないかと思います。
このトイレを備蓄品として有している自治体はまれで、多くは近隣市町村の建設向け機器レンタル業者やトイレ業者などと災害時協定を結び、必要に応じて輸送し設置をしてもらうようになっています。
衛生面などを考慮するとトイレを居住空間と分けて屋外に設置した方が環境を整えやすいので、多くの避難所にこのタイプのトイレが配備されます。

しかし、多くの人の集まる場所では複数タイプの災害用トイレを用意し使い分けることが重要です。なぜそのような配慮が必要なのでしょうか?

複数タイプのトイレ設置が必要な理由

避難所にはお年寄り・身体に障害のある方・乳幼児・妊娠中の女性・持病を抱えた方などいわゆる「災害弱者」の方が多く集まり、中には

  • 階段や段差を上り下りできない
  • 一人での移動が難しい
  • 足腰が弱かったり膝が悪いため和式トイレが利用できない

など屋外のトイレを使用することが困難な方がいます。
また今回の災害は真冬ということもあり、避難所内は暖房がしっかり効いていました。
その分、屋外のトイレを利用する際は、急激に寒気に触れると心臓に負担がかかり意識を失ってしまう「ヒートショック」に注意するよう呼びかけられていました。
ヒートショックは冬場のお風呂などで発生しやすいと聞いたことがある方もいるかもしれませんが、高血圧を抱えやすいお年寄り・妊婦さんなどは特に配慮が必要です。

その他にも、衛生環境の悪化する避難所で流行しがちなノロウイルスやインフルエンザ・新型コロナウイルスなどの感染症患者・発熱者、慣れない環境で過ごすことで持病が悪化したりストレスによる体調不良者など、隔離が必要な方も避難所では発生します。
特にウイルス性の感染症患者は健康な避難者と同じトイレを使用すると感染症拡大を招く原因となりかねないため、屋内(隔離室内)で使用出来るトイレが必要です。

屋内にトイレを設置する場合に考慮すべきこと

屋内にトイレを設置するためには

  • プライバシーの確保
  • 衛生環境の整えやすさ
  • 動線のよさ

を考慮する必要があります。
通常ラップポンは既存トイレの個室内に設置します。
既存のトイレには男女ともに鍵のかかる個室が必ずありますので、その個室を利用できればベストです。
ですが、個室には洋式の水洗トイレが設置されていることが多いため、ラップポンを設置することでドアの開閉や衣服着脱のスペースが十分確保できない場合は別の方法を考えます
(少なくなりましたが和式トイレ個室がある場合は便器の上からラップポンを設置出来るため、私たちにとっては好都合です)

医療・福祉施設の場合は十分な広さの多目的トイレがあることが多いため、ラップポンを設置しやすい特徴があります。
既存トイレの個室内に設置できない場合、プライバシー確保のためにテントやパーティション、カーテンといった目隠しになるもの(使用中に内側から鍵をかけるためにも、可能であれば鍵付きのテントが望ましい)が必要になります。
これらを利用し、トイレ内の通路や施設内廊下の突き当り、空き部屋に設置します。

ただし設置場所については必ずしも廊下や空き部屋であれば良いというわけではありません。
お年寄りや足に障害がある方など移動が困難な方の場合はトイレまでの動線が遠いと間に合わない可能性があるため、出来るだけ割り当てられた居住スペースの近くにトイレ設置を希望することもあります。
体育館など広い避難スペースを有した施設ではフロアの入口側まで歩いていかなくても良いように、ステージの緞帳の裏側や器具倉庫にテントを立ててラップポンを設置した例もありました。
前述した感染症患者や体調不良者などの隔離室内に設置する場合もテント等が必要です。

ラップポンは設置がゴールではない

これらいくつかの条件を念頭に置きながら、まずは災害医療ACT研究所所属の医療従事者が各施設の責任者や担当者と状況を踏まえて検討し、ラップポンが必要と判断された場合にはどこに何台置くべきか?を再度確認して必要台数の搬入・組み立て設置を進めていきます。
設置をした後は使用していただく中で消耗品の補充依頼やエラー発生などの連絡を頂き、常駐しているメンバーが現地訪問する…という流れが2024年3月下旬も続いています。
水洗トイレが使用出来るようになった場合は撤去作業も実施します。これらは現在開設されている避難所が閉鎖になるまで、医療・福祉施設の場合は水洗トイレが復旧するまで継続することとなります。

入所者150名の介護老人保健施設@七尾市 にてラップポンを組み立て中
職員数も多いため計10台設置しました ※2024年1月8日

トイレ掃除をどうするかも重要

災害時のトイレ支援についてキーポイントとその方法などをお伝えして来ましたが、被災地の衛生環境を整えるために、災害用トイレの種類に関わらず重要なことがあります。

それは「トイレ掃除をどのようにするか」です。

トイレが設置されていても、管理が行き届いていないと臭いや汚れが酷い状況になりがちです。汚れたトイレは利用しづらくなり、衛生状況の悪化や体調不良に繋がってしまいます。
反対に綺麗なトイレを維持している避難所や施設は、早い段階でトイレの衛生管理のルールを構築していることが多いように見えます。
そういった施設はトイレだけに限らず皆で環境を良くしようという動きが見え、避難者・スタッフ共に皆辛い状況でも明るい雰囲気を感じます。
災害とは別の話ですが、以前東京のとある商業施設がトイレの美化に力を入れたところトイレの利用客が増え、その結果集客・売上がアップしたという話を聞いたことがあります。
それだけトイレが綺麗な状況はそこにいる人の気持ちに影響を及ぼすものでもあります。

たとえ非常事態であっても、トイレはいつも清潔に、誰にでも使いやすく。
ラップポン部隊はいつでもその信念を持って、被災地支援を続けています

次回は、一見当たり前なようですが深く考えるとなるほどと思う「トイレ支援が重要な理由」と「ラップポンが被災地支援をする理由」についてお話します。

  • よくある質問

    お問い合わせの多いご質問に
    お答えします。

    詳しく見る

  • SNS

    ラップポン公式SNS。災害や介護、
    防災のトイレに関する情報を発信。

  • お問い合わせ

    製品やサービスについて、
    質問を受け付けております。

    詳しく見る

  • 送料・購入

    最短3営業日以内に発送

  • オンラインショップ

    ラップポン本体と
    消耗品を販売しています。

    詳しく見る