2024年1月1日、元旦の夕方。日本列島は大きな地震に見舞われました。
震源は石川県能登地方。北は北海道から南は鹿児島県まで非常に広い地域が揺れ、最大震度7を観測しました。
地震の揺れに伴う被害に加えて沿岸部には大津波警報が発令され、気象庁によって「令和6年能登半島地震」と命名されたこの大地震は、新しい年を迎えたお祝いムードを一変させました。

認定NPO法人災害医療ACT研究所の活動の一環として予てより「ラップポン」で大規模災害の被災地でのトイレ支援活動を実施してきた日本セイフティー株式会社は、令和6年能登半島地震の被災地でもトイレ支援活動を行っています。
この活動について、今回から数回に分けてレポートを掲載します。
トイレ支援の内容について触れる前に、初回は「なぜ迅速に支援が行われないのか」について、私たちのケースをお話します。

発災から支援開始までに5日間

災害医療ACT研究所を通じて支援要請が届き、大急ぎで支度や車両手配などをしてラップポンの先発部隊が石川県へ駆け付けたのが1月4日。現地の状況や物資の確認を分かっている範囲で済ませ、翌5日からまずは七尾市にて設置支援活動を開始しました。

報道でご存知の方も多いと思いますが、特に被害が大きかった市町村としてよく名前が上がるのは七尾市の他に輪島市・珠洲市・能登町・志賀町・穴水町などです。

しかしながら、支援活動開始の1月5日の時点で私たちが辿り着けたのが七尾市まで。その他の地域で活動が出来るようになったのはさらにその翌日からでした。
既に発災から5日が経過し、なぜ多くの被災者が広範囲で待っているのに、迅速に支援活動が出来なかったのでしょうか?

支援には優先順位がある

被災地支援と一口に言っても、その支援内容は人命救助、医療支援、インフラなどの整備、復興支援…など多岐に渡ります。また、時間が経過するにつれて必要な支援は刻々と変化していきます。

ラップポンの活動はトイレ支援。これは「命を守る」という意味では人命救助の一環とも言えますが、「避難所の衛生環境整備」にあたります。

私たちが石川県に到着した頃、被災した市町村では最優先とされる「人命救助&捜索」の真っ只中。救助を待つ人の生存率に関わる「72時間の壁」という言葉を報道で耳にした方も多いかと思いますが、救助に携わる自衛隊や都道府県警察・消防や医療体制を整えるための各都道府県DMAT隊が続々と駆け付け昼夜問わず活動している状況では、まだ「避難所整備」の支援に本格的に入ることは難しいのです。(ただし医療支援スタッフが医療ケアをしながら各避難所の環境整備に着手する場合もあるため、避難所支援が全く手つかずということはありません)

この段階では各市町村役場でも避難所の状況を把握しきれず、物資の受け入れや配布の態勢が整っていないため、支援物資の均等かつ適切な割り振りが難しいことも多いです。

安全行動のため移動範囲が限られる

更に、支援活動において最も重要なことのひとつは「安全に行動すること」です。

現地へ到着した段階ではまだ道路の損壊状況が甚大で、あちこちに亀裂が入ったり路肩が崩れたり、マンホールが飛び出したりして車両の通行が不可能もしくは困難な箇所ばかり。道路上には倒壊家屋の瓦や梁、家財道具などが溢れている箇所もある状態で、特に夜間の車移動は視界の悪さも相まって非常に危険を伴う状況でした。真冬の能登半島は雪の多い地域であることも移動を困難としました。

地震によって亀裂が入ったり(上)、
土砂や石垣が崩れた(右)場所も沢山ありました

各携帯電話キャリアの基地局車もまだ被災地へ向かっている段階で、携帯電話の電波が不安定な地域も多い状態では、何かトラブルがあっても助けを呼ぶことすら出来ません。特別な装備を持つ車両の無い私たちでは安全な移動を確保することができず、行動範囲が限られたり移動に大幅な時間を要してしまい、肝心の支援活動があまり出来ないということもありました。

発災後すぐに支援は来ない

その他様々な要因はありますが、支援者も「支援に行きたくても行けない」という事情があることをここまでお伝えしました。

これらのことから是非心に留めていただきたいのが「発災後すぐに支援は来ない・来られない」ということです。

発災直後は被災市町村の職員や地域住民…つまり被災者自身で避難所を開設し、その時点で手元にある物資…事前の備蓄品だけが命綱となります。よく『災害用の備蓄は最低3日間、出来れば1週間分用意しましょう』と言われますが、これは前述したような事情から備蓄品で乗り切らなければならない日数の目安です。

災害が発生したとき、助けや支援は必ず来ます。その助けが来るまでの期間を、いかに安全に過ごすことが出来るか?が自分や周囲を守るための大きなポイントとなるのです。

次回は「ラップポンでのトイレ支援」についてお伝えします。

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