日常生活の動作に介護が必要となる中で身体機能が更に低下してくると、様々な要因から個室の水洗トイレで排泄をすることが難しくなります。
そんな時でも、「排泄の自立」を継続支援できるような福祉用具として、
・ポータブルトイレ
・尿器、差し込み便器
があります。それぞれどのような場合に役立つのか見ていきましょう。
ポータブルトイレ
ADLが低下してきた時、排泄介助用具として最初に検討すべき用具として挙がるのがポータブルトイレです。
ポータブルトイレは移動が可能な簡易便器のことです。次のような身体状況の方に適しています。
- 個室トイレまでの移動時に転倒リスクが高い
- 歩行がゆっくりになり尿意・便意を感じてから個室トイレまでの移動が間に合わない
- 座位や立位の保持は可能な筋力がある
素材は最もシンプルなスチールやアルミの金属製、軽量でお手入れがしやすい樹脂製、安定感があり居室に馴染む椅子のような外見の木製などがあります
トイレの中には排泄物を受け止めるバケツが入っているものが多く、排泄後は介助者がバケツの清掃をします。
バケツがなく排泄物を特殊フィルムで密封する「ラップ式」のポータブルトイレも、ラップポンを始めとして近年では多く導入されるようになりました。
通常はベッド脇や居室近くの廊下など、利用する本人が安全に移動できる場所に設置します。
自分の居場所に近いところにトイレがあることで「いつでもトイレに行ける」安心感が生まれます。
また、本人にとって個室トイレに近い感覚で使用出来るので、排泄の自立を維持しやすいメリットがあります。
尿器、差し込み便器
移動や立ち上がりが難しくなり日中もベッド上で過ごすことが多くなってくると、排泄介助はおむつの使用を検討する段階です。
ですが、
- 尿意や便意を感じることができる
このような方は尿器や差し込み便器を使用する介助方法もあります。
尿器は取っ手の付いた筒状をしており、陰部に尿器の入り口をしっかりあてて尿を受け止めます。
尿器は人間の身体構造に合わせて男性・女性用があります。
差し込み便器は例えるならば「深型のちりとり」のような形状をしています。
差し込み便器はお尻の下に置いて使用し、排泄が済んだら腰を浮かせて取り出します。
差し込み便器は男女兼用ですが、女性の場合は男性に比べると尿器が当てづらいため、排尿時にも差し込み便器を使用することがあるようです。
尿器・差し込み便器を使うと排泄物が肌に触れないので、衛生的な介助が出来ます。
また本人から言葉で尿意・便意を伝えることが難しい場合はしぐさなどから介助者が排泄のタイミングを見計らうことが必要なこともありますが、「自分の意志で排泄が出来る」ことは本人を尊重することにも繋がります。
ポータブルトイレや尿器が購入できる場所
今回紹介した排泄介助用具は下記で購入することが出来ます。
- 福祉用具レンタル・販売店
- ホームセンターの介護グッズ売り場
- 百貨店などの福祉用具売り場
- インターネット
店舗で購入する場合、実物を見ることで使用イメージが湧きやすいことが特徴です。
実際の大きさや座り心地を試すことが出来るデモ品を展示している店舗もあります。
特に福祉用具レンタル・販売店には「福祉用具専門相談員」という資格を持ったプロフェッショナルがいますので、住環境や本人の身体状況に適した製品を一緒に選んでもらうことができます。
オンラインでの購入は自宅まで届けてもらえるのがメリットです。
ポータブルトイレを介護保険を用いて購入する
排泄介助用具の中でもポータブルトイレは介護保険の「特定福祉用具購入」サービスを利用して通常より少ない個人負担で購入することが可能です。
このサービスを利用するには介護保険の認定を受けた上で、各都道府県から指定を受けた「特定福祉用具販売事業者」で購入する必要があります。
福祉用具レンタル・販売店は多くの場合が該当しますが、店舗に問い合わせたり、各市区町村や都道府県のホームページで指定事業者を確認することが出来ますので事前にチェックしましょう。
ホームセンターの介護グッズ売り場、百貨店などの福祉用具売り場、インターネットでの購入は対象外です。
そもそもなぜ介護用のトイレが必要なのか?
トイレの介助で重要になることは「転倒などケガのリスクを防ぐこと」です。
トイレで排泄するためには、立ち上がる・歩く・座るなど複数の動作をします。
これらを安全に行えるような配慮が必要ですが、本人の身体状況や介助者のマンパワー、トイレや住環境などによっては実現が難しいこともあり得ます。
トイレでの排泄が難しくなった時、使用を検討することが多いのがおむつです。
パンツタイプなど簡易型を除き、おむつは介助者の手が無ければ装着できず、使用者本人は受け身での排泄介助となることがほとんどです。
受け身での排泄介助が続くと、本人が排泄に対する意欲を失ってしまいます。
またおむつを使用するとベッド上で寝たまま排泄が可能となり、排泄の為に身体機能を使う必要がなくなるため離床機会が減少します。
これがADL・QOLの低下を招くこともあります。
トイレ介助でケガリスク低減と同時に最も大切なことは「本人の尊厳を守ること」です。
- 短い距離なら移動が出来る
- 歩行は難しくても立ち上がることはできる
など、身体機能を少しでも生かせる適切な排泄介助用具を積極的に取り入れていきましょう。
おむつの前段階として、介助者に遠慮しない「自力での排泄」を叶えることができます。