介護ロボットは介護者の負担を軽減したり、利用者の自立をサポートしたりしてくれる存在です。
しかし、介護ロボットが実際にどのようなものかはあまり知られていないのが現状です。
そこで、この記事では介護ロボットのメリットや種類、介護保険を活用した導入方法などをわかりやすく解説します。

介護ロボットとは

厚生労働省によると、介護ロボットとはロボット技術を応用し、利用者の自立をサポートしたり介護者の負担を軽減したりする介護機器と定義されています。ロボット技術は以下の3つを指します。

  • 情報を感知する
  • 感知した情報から判断する
  • 判断した結果をもとに動作する

介護ロボットのサイズや形状、役割は製品によって異なります。そのため、自分たちの悩みや課題の解決に役立つ機能を持った介護ロボットを選ぶことが大切です。

出典:介護ロボットとは|厚生労働省

介護ロボットのメリット(導入後の生活の変化)

介護ロボットを導入すると、介護者にも利用者にもメリットがあります。

介護者のメリット

介護者が装着して使用できる介護ロボットは動きをサポートしてくれるため、身体の負担が軽減します。さらに、力が足りない・常に目を離せないなどの不安を介護ロボットで補い、少ない人員でも介護を継続できる環境作りにも役立ちます。
例えば、リフトは使わないほうが短時間での移乗介助が可能です。しかし、介護者の身体の負担を軽減するリフトを使用したほうが、長期的に介護を続けていけるでしょう。
また、見守りロボットを活用して夜間の巡回数を減らせば、介護者は安心して休めるようになります。

利用者のメリット

介護ロボットには、利用者の動作をサポートする製品があります。歩行や排泄、入浴などが一人でできるようになれば、他人に頼る申し訳なさが軽減されるでしょう。
さらに、歩行や排泄動作などを介護ロボットにサポートしてもらうことで転倒や転落のリスクを減らせるため、安心して生活できるようになります。 コミュニケーションを取れるロボットなら、一人暮らしの孤独感の軽減にも役立ちます。

介護ロボットの種類

介護ロボットは以下の9種類があります。

  • 移乗支援
  • 移動支援
  • 排泄支援
  • 見守り・コミュニケーション
  • 入浴支援
  • 介護業務支援
  • 機能訓練支援
  • 食事・栄養管理支援
  • 認知症生活支援・認知症ケア支援

ここからは、在宅介護で導入しやすい5種類の介護ロボットの特徴を解説します。

移乗支援

移乗支援の介護ロボットとは、ベッドや車いす、トイレなどを利用者が安全に乗り移れるようにサポートするものです。
介護者が身につける装着型と、利用者を持ち上げて移乗させる介護リフトといった非装着型 があり、どちらを使用しても介護者の腰の負担軽減 に役立ちます。
また、介護ロボットを活用すると体格差や介護者の経験年数に関係なく一定の移乗介助ができるため、利用者の身体的な負担や介助を受ける恐怖心も少なくなります。

移動支援

移動支援介護ロボットは、利用者が安全に移動できるようサポートしてくれます。
主に以下の3種類があります。

  • 屋外型:屋外での移動や荷物の運搬をサポートする
  • 屋内型:トイレへの往復といった屋内での移動をサポートする
  • 装着型:利用者が身につけることで、歩行や立ち座り、転倒予防をサポートする

排泄支援

排泄支援の介護ロボットは主に3種類あります。

1つ目は、排泄物処理のロボットです。排泄物の処理を自動で行ってくれるため、介護者の負担が少なくなります。
さらに、排泄物処理を他人に任せる不安や羞恥心が軽減され、利用者が尊厳を保ちながら生活できるメリットもあります。

2つ目は、排泄予測のロボットです。排泄のタイミングを予測し、利用者や介護者に知らせてくれます。
そのため、トイレの失敗の予防やスムーズなトイレ誘導に役立ちます。

3つ目は、動作支援のロボットです。ズボンや下着を脱ぐといった排泄に必要な動作をサポートしてくれるため、利用者が一人でトイレを使える可能性が高まります。利用者の自立した生活を支えるとともに、介護者の排泄介助の負担を減らす役割も果たします。

見守り・コミュニケーション

利用者の様子を見守る介護ロボットは、施設型と在宅型があります。
施設型は、同時に複数の利用者の見守りが可能です。カメラやセンサーで利用者の身体の状態や動きを検知し、介護スタッフに知らせてくれます。そのため、スタッフが少なくても効率的に安全を確保でき、利用者一人ひとりに目が届きやすくなります。
一方、在宅型は自宅で生活する利用者の様子を見守り、転倒といった問題が起こると家族や介護スタッフに通知を送るロボットです。通知によって離れて住む家族も利用者の様子を確認でき、介護スタッフも緊急時に迅速な対応ができます。
コミュニケーション機能を持つ介護ロボットは、会話したり歌ったりと製品によって機能はさまざまです。利用者の孤独感を和らげるだけでなく、ロボットとのやり取りを通じて認知機能を維持する効果も期待できます。

入浴支援

入浴支援の介護ロボットは、利用者が安全に入浴できるようサポートする製品です。
例えば、利用者が座ったまま浴槽をまたいだり湯船に浸かったりできる電動リフトや、全身を洗える箱型のシャワー入浴装置などがあります。利用者の身体を持ち上げる必要がないため、介護者の入浴介助の負担も軽減します。

介護ロボットを介護保険で導入する流れ

移乗支援や移動支援、排泄支援、入浴支援などの一部の介護ロボットは、介護保険でレンタルできます。
排泄予測機器や排泄物を自動処理するポータブルトイレなどは、介護保険で購入可能です。
ここからは、介護保険を活用した介護ロボットのレンタルと購入の流れを解説します。

レンタルの場合

介護ロボットをレンタルする場合、介護保険サービスの福祉用具貸与が利用できます。

  • 介護保険を申請し、要介護認定を受ける
  • ケアマネジャーにケアプランを作成してもらう
  • レンタル業者を選ぶ
  • 福祉用具専門相談員が自宅を訪問し、利用者に適した介護ロボットを選定する
  • 業者と契約し、レンタルを開始する
  • 業者による定期的なメンテナンスを受ける

ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談することで、自分たちに合った介護ロボットを選びやすくなります。
なお、福祉用具貸与でレンタルすると、支払いは自己負担分のみで済みます。そのため、高額な介護ロボットでも経済的な負担を抑えて導入しやすいです。

福祉用具貸与の詳細については、「福祉用具貸与で安心介護!レンタルできる福祉用具の種目と利用の流れ」をご覧ください。

購入の場合

介護ロボットを購入する場合は、介護保険サービスの特定福祉用具販売が利用可能です。

  • 介護保険を申請し、要介護認定を受ける
  • ケアマネジャーにケアプランを作成してもらう
  • 購入する業者を決める
  • 福祉用具専門相談員のアドバイスを聞きながら、購入する介護ロボットを選ぶ
  • 購入の際に支払い方法を確認する
  • 市区町村の窓口に介護保険の利用を申請する
  • 所得に応じた給付金が指定口座に振り込まれる

業者への支払い方法には、以下の2種類があります。

  • 償還払い:全額を業者に支払い、のちに介護保険の給付額を受け取る
  • 受領委任払い:自己負担額のみ業者に支払い、のちに介護保険の給付額が業者に振り込まれる

購入時は業者や支払い方法など決めることが多いため、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談しながら進めると安心です。

介護ロボットの価格

以下に、在宅介護で導入しやすく、介護保険を活用してレンタルできる介護ロボットの例とその価格をまとめました。
なお、自己負担割合は所得によって1〜3割と異なります。

種類名称本体価格(税込)介護保険を活用した月額レンタル価格(1割負担)
移乗支援ロボット(非装着型)Hug L1980,000円(非課税)約2,600円
移動支援ロボット(屋外型)ロボットアシストウォーカーRT.2147,180円~約750円
 入浴支援ロボットバスリフト466,400円約1,580円

※価格はすべて2025年9月時点のものです。

次に、介護保険を活用して購入できる介護ロボットの例と価格を紹介します。
介護保険で購入する際は、同一年度中に購入した金額のうち10万円までは所得に応じて1〜3割負担、10万円を超えた分は全額自己負担となります。

種類名称本体価格(税込)介護保険を活用した購入価格(1割負担)
排泄支援ロボット(排泄物処理)ラップポン・オーブ自動ラップ(S)99,880円~9,988円~

 ※ 価格はすべて2025年9月時点のものです。

介護ロボット導入の注意点

介護ロボットを導入する際の注意点を3つ解説します。

設置費用や修理費を確認しておく

介護ロボットを導入する際は、設置費用や修理費も事前に確認しておく必要があります。
介護ロボットをレンタルする場合は、メンテナンス費用がレンタル価格に含まれているのが一般的です。
一方、購入する際は故障時の保証内容によって修理費が異なります。

利用者が嫌がる場合がある

利用者のなかには、ロボットに介助されることに抵抗感があったり、センサーやカメラで常に見られたくないと考えたりする方もいます。
なお、利用者のプライバシーを保護するために、シルエット映像に変換する機能を搭載した見守り介護ロボットもあります。介護ロボットがどのような機能を持っているかを伝え、利用者の不安を取り除くようにしましょう。

使用環境を整えておく

リフトや歩行器などの大きな介護ロボットを導入する前には、使用環境を整えておく必要があります。あらかじめサイズを調べておき、設置や保管のスペースを確保しておきましょう。
また、畳や絨毯の上での使用を推奨していない製品もあるため、使用したい場所の床材を確認しておくことも大切です。
重量がある大きな介護ロボットは畳やフローリングを傷つけたりへこませたりする可能性がある点も考慮し、安全に使える環境を整えましょう。

介護ロボットで負担を軽減した事例

ここからは、介護ロボットで負担を軽減した事例を2つ紹介します。

他人に排泄物の処理を任せる負担がなくなった

排泄物を他人に処理されることに嫌悪感があり、不安定な歩行でトイレに行っていたAさんの事例です。
トイレの回数を減らすために水分摂取を控えるようになり、家族も心配していました。
そこで、ボタンを押すだけで排泄物を自動で処理できるラップポン・オーブを寝室に設置しました。
1回ごとに排泄物が密封されるため、寝室でもにおいが気になりません。トイレの不安が軽減され、水分摂取を控えることもなくなりました。

認知症の進行を遅らせることに役立った

認知症の症状が少しみられる一人暮らしのBさんの事例です。
家族がBさんに電話しても出ないときもあったため、離れていても見守りとコミュニケーションができる介護ロボットを導入しました。見守りのために導入しましたが、ロボットと対話することで刺激を受け、Bさんの認知症の進行が緩やかになるという嬉しい変化もありました。離れて暮らす家族もロボットを通じてBさんの様子がわかるようになり、安心して過ごせています。

まとめ

介護ロボットは冷たい機械のように感じたり、慣れるまでに手間や時間がかかったりする場合もありますが、介護者と利用者が安心して暮らせるよう支えてくれる存在です。介護保険を活用できる製品もあるため、導入を検討する際はケアマネジャーに相談すると安心です。
介護ロボットの力を上手に借りながら、利用者と介護者にとってより安全で心地よい暮らしを実現していきましょう。

参考文献

  1. 介護ロボットとは」厚生労働省
  2. 「ロボット技術の介護利用における重点分野」を改訂しました」厚生労働省
  3. 「(参考)介護テクノロジー利用の重点分野定義」厚生労働省
  4. 「どんなサービスがあるの? – 福祉用具貸与」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省
  5. 特定福祉用具を購入したとき (介護保険福祉用具購入費支給申請)」品川区
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