トイレまでの移動でふらついたり、トイレに間に合わないことが増えてきたりすると、利用者は不安を感じやすくなります。
介護者も排泄介助の負担が増え、肉体的にも精神的にもストレスを抱えやすくなります。
こうした排泄に対する不安や負担の軽減に役立つのが尿瓶(しびん)です。
この記事では、尿瓶を導入するサインや使い方、導入メリットなどをやさしく解説します。

尿瓶とは

尿瓶(しびん)とは、利用者の排尿を受け止めるために使用する横に細長い容器です。
手で支えやすいように側面に持ち手が付いており、先端には尿を受けるための少し広がった受け口があります。
受け口の形は性別によって異なり、男性用は差し込みやすいよう細長い筒状になっています。一方、女性用は利用者の陰部に当てやすいよう、受け口の幅が広いです。
尿瓶を活用すると、尿意はあるのにトイレまで行って排泄するのが難しい方でも自分で排泄しやすくなります。利用者の「できるだけ他人にトイレの世話を任せたくない」「まだおむつはいやだ」という思いを叶える福祉用具です。
なお、尿瓶は排尿(小便)専用の福祉用具です。大便の介助が必要な場合は、差し込み便器(ベッドパン)という別の用具を使用します。

尿瓶と尿器の違い

尿器とは、利用者がベッドで横になっている状態や座った状態で排泄する際に使用する福祉用具の総称です。尿瓶は数ある尿器のなかの一種であり、ほかにも尿を自動で吸引する自動排泄処理装置や、受け口と本体がホースでつながっているホース型の尿器などがあります。
このように尿瓶は尿器の一種であり、日常的には特に区別をせず「尿器」と呼ばれることも多いです。尿器は種類によって違った特徴があるため、利用者の状態によって適したものが異なります。どの尿器を選べばよいか迷う場合は、ケアマネジャーに相談してみましょう。
ケアマネジャーがついていない場合は、利用者が住んでいる地域にある地域包括支援センターに相談するのも一つの方法です。 福祉や医療の専門家がサポートしてくれます。
地域包括支援センターについて詳しく知りたい方は「地域包括支援センターとは?役割や利用対象者、相談内容例を解説」もあわせてご覧ください。

尿瓶の導入を検討するサイン

尿瓶をいつから使い始めるのか検討するためには、日常生活の中に潜むサインを見逃さないことが大切です。
以下は、尿瓶の導入を検討するサインの例です。

  • 夜間にトイレまで移動するのが不安
  • トイレまでの移動でふらつく
  • トイレに間に合わないことが増えた
  • おむつやポータブルトイレに強い抵抗感がある 
  • 起き上がる動作がつらい
  • 夜間の付き添いで介護者が寝不足
  • 移乗介助やシーツ交換が増えて介護者の負担が大きい

「まだ早いかもしれない」と思う段階で検討を始め適切なサポートを行えば、無理にトイレに行こうとして転倒してしまうのを防いだり、排泄の失敗による不安を軽減できたりします。

尿瓶を使うメリット

尿瓶を使うことは、利用者側にも介護者側にもメリットがあります。

利用者のメリット

尿瓶を使うと、尿意はあるのにベッドから起き上がるのが難しい方やトイレへ行くのが間に合わない方でも、自分で排尿できるようになります。トイレに間に合うよう焦って転倒したり、間に合わずに失敗してしまい自尊心が傷ついたりするのも防げます。
また、おむつでの排尿に抵抗感がある方にとっても、尿瓶は精神的なストレスが少ない排泄方法です。おむつに頼りすぎないことで、排泄のタイミングを自分で感じ取る力や身体を起こすといった運動能力を維持しやすくなるでしょう。
濡れたおむつが長時間肌に触れていると、かぶれたり感染症にかかったりするリスクもあります。尿瓶を使えば尿をすぐに処理できるため、かぶれや感染症のリスクの軽減も可能です。

介護者のメリット

トイレの誘導や介助は何度もトイレまで往復したり、利用者の身体を支えたりする必要があるため、介護者に大きな負担がかかります。特に夜間は寝不足もあり、もし失敗してしまうとより一層ストレスを感じやすいでしょう。
夜間のトイレ介助だけでも尿瓶で済ませられるようになると、睡眠時間を確保しやすくなります。ストレスの軽減や睡眠時間の確保は、長期的に無理なく介護を続けていくために大切です。
また、おむつ交換は利用者の身体を動かす必要があり、身体的な負担が大きい介助です。漏れていた場合は着替えやシーツ交換もするため、精神的なストレスも感じやすくなります。
尿瓶を活用すれば利用者の身体を大きく動かさずに介助できるようになり、介護者の負担を軽減できます。さらに、頻繁におむつを交換すると出費がかさむため、長期的にみると尿瓶のほうが経済的な負担を抑えられる場合も多いです。

尿瓶を選ぶポイント

尿瓶はたくさん種類があるため、選ぶ際のポイントを理解しておくと使いやすい製品を見つけやすくなります。

素材 

尿瓶はプラスチック製のものが主流ですが、ガラス製のものもあります。また、製品によっては、直接肌に触れる受け口がやわらかい素材でできているものもあります。
プラスチック製は軽くて扱いやすく、肌に当てたときの違和感が少ないです。日常的に使いやすいですが、洗ってもにおいが残りやすいデメリットがあります。
一方、ガラス製は長期間使用しても劣化しにくく、汚れも落としやすいです。熱にも強いため、熱湯消毒がしやすいという特長もあります。
ただし、重さがあり、落とすと割れてしまう可能性がある点には注意が必要です。

透明さ

透明な尿瓶は、尿の量や色を観察したい場合に便利です。病気といった理由から尿の状態を観察する必要があるなら、透明な尿瓶を選びましょう。
また、目盛り付きの製品であればいつどれくらいの尿が出るのか把握しやすく、健康管理にも役立ちます。
中が見えることに抵抗感がある方は、半透明や白色の製品なら使いやすいです。半透明や白色でも抵抗感があるなら、カバー付きの製品を選ぶと中身が見えないため、より安心して排尿しやすくなります。

逆流防止機能

中身がこぼれにくくなるよう、受け口に逆流防止弁(しきりのような部品)がついている製品があります。逆流防止弁とは、受け口から本体へ尿が流れるときは開きますが、排尿後は閉じる部品です。
逆流防止弁がついていると、排尿後に股の間から抜き取るときや持ち運ぶときにこぼれにくくなります。また、排尿時に尿瓶の位置がずれてしまっても、大量にこぼれてしまう心配も減るでしょう。使わないときは弁が閉じるため、においの防止にも役立ちます。
ただし、尿を処理する際に受け口の部品を取り外す必要があります。そのため、尿を処理する方にある程度の握力がないと扱いにくい場合もある点は注意しましょう。

ベッドでの尿瓶の使い方

ここからは、介護者が戸惑いやすいベッド上で横になっている方への尿瓶の使い方を解説します。ベッド上でのサポートができるようになれば、夜間の排泄介助の負担も少なくなるでしょう。

使う前の準備

腰の下に防水シーツや吸水シーツを敷き、利用者の「布団を汚したらどうしよう」という不安を軽減できる環境を整えましょう。また、バスタオルをかけて肌の露出を減らし、プライバシーに配慮するのも大切です。
利用者には仰向けの姿勢になってもらい、両膝を立ててもらいます。可能であれば、ベッドの背上げ機能を活用し上半身を起こすと、お腹に力を入れやすくなり排尿しやすくなります。

尿瓶を当てる

尿瓶の受け口を利用者の陰部に当てます。女性は隙間ができやすいため、短冊状に折ったトイレットペーパーを陰部から受け口にかけて挟んでおくと、つたい漏れを防ぎやすくなります。

排尿中

排尿中は「見られていると出にくい」と感じる方も多いです。利用者自身が尿瓶を持っておけるなら「終わったら教えてね」と声をかけてから離れて待ちましょう。支えが必要であれば、目線を外すようにすると利用者も安心できます。
なかなか出ない場合も「ゆっくりで大丈夫だよ」と優しく声をかけると、利用者も焦らずに排尿を終えられます。

排尿後の処理

排尿後は、尿瓶の受け口を少し上に向けながらゆっくりと陰部から外します。トイレットペーパーやウェットティッシュで陰部をきれいに拭き取りましょう。

利用者が自分で尿瓶を使うポイント

利用者の身体の状態によっては、介助を受けずに自分で尿瓶を使うことも可能です。自分で排泄できることは利用者の自信につながり、介護者の負担軽減にも役立ちます。
ここからは、利用者が無理のない範囲で安全に尿瓶を使うためのポイントを解説します。

環境を整える

利用者が使いやすいよう、すぐに手に取れる位置に尿瓶を置きましょう。トイレットペーパーやウェットティッシュなど必要なものを近くにまとめておくと、スムーズに排泄を終えられます。
夜間に使用する場合は足元や手元が見えるよう、小さなライトを用意しておくと安全です。

無理のない使い方を心がける

利用者がベッド上で横になって使用する際は、背もたれの角度を調整し、上半身を起こすと排尿しやすくなります。座って使用するなら、姿勢が安定するよう手すりといった支えがあると安心です。
体をひねったり無理に手を伸ばしたりすると、痛みやベッドからの転落などの原因になる可能性があります。動作に不安がある場合は一部だけサポートしてもらい、状況に応じた使い方をするのが大切です。
使用後の処理が難しい方は、使い終わったら声をかける、決まった場所に置いておくなどのルールを介護者と決めておくとよいでしょう。

尿瓶のお手入れ方法 

尿瓶のお手入れは高価な道具は必要なく、家庭にあるもので対応できます。
まずは、使用後の尿瓶をトイレへ運び中身を捨てます。汚れの付着を防ぐために、空になった本体に中性洗剤を薄めた水またはぬるま湯を入れ、柄がついたブラシでこすりましょう。 製品によっては洗浄用のブラシが一緒に販売されているものもあります。
逆流防止弁がついているタイプは、受け口も取り外して洗いましょう。洗浄後は水で洗い流し、直射日光が当たらない場所で乾かしておきます。
消毒はアルコール系の消毒液や薄めた逆性石けん液など、取扱説明書に記載されている方法でおこないましょう。市販の尿瓶用の洗浄剤を使うのも一つの方法です。

尿瓶は介護保険で導入できるか

尿瓶は介護保険の対象ではないため、購入は全額自費となります。ただし、尿瓶の相場は1,000〜6,500円程度であり、自費で購入してもそこまで大きな出費にはなりません。
なお、トイレまで行くのは難しいですが一人で座れる利用者の場合は、ポータブルトイレも選択肢になります。ポータブルトイレは介護保険を活用した購入の対象であり、所得によって1〜3割の自己負担額で購入可能です。
ポータブルトイレについて詳しく知りたい方は「ポータブルトイレについて解説」もあわせてご覧ください。

尿瓶はどこで買えるか

尿瓶が購入できる場所は以下のとおりです。

  • 福祉用具レンタル・販売店
  • ホームセンター
  • ドラッグストア
  • インターネットショップ

利用者や介護者が使いやすい製品を選ぶためにも、可能であれば店舗で実際に見てから購入するのがおすすめです。
特に、福祉用具レンタル・販売店であれば福祉用具専門相談員がいるため、より専門的なアドバイスをもらいやすいです。
福祉用具専門相談員について詳しく知りたい方は、「福祉用具専門相談員の役割と活用法を徹底解説」をご覧ください。

まとめ

尿瓶は「自分でできるだけ排泄したい」「おむつはまだ使いたくない」という気持ちを守りながら、利用者と介護者の負担を軽くしてくれる福祉用具です。適切なタイミングで導入し、使い方に慣れていけば、排泄に対する不安が和らぎます。
排泄の悩みを解決できる福祉用具は、尿瓶以外にもたくさんあります。そのため、自分たちだけで抱え込まず、ケアマネジャーや地域包括支援センター、福祉用具専門相談員などに相談するのがおすすめです。
状況に合った方法で排泄の負担を減らしながら、利用者も介護者も安心して過ごせる環境を整えていきましょう。

参考文献

「介護保険福祉用具購入に係るQ&A」藤沢市

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