「介護休暇って、どんな時に使えるの?」「手続きは複雑なの?」
介護休暇は家族を介護する方が取得できる休暇制度ですが、どのような時に使えば良いか、どのような申請方法なのか、自身は対象になるのか、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、介護休暇に関するよくある質問に答えるとともに、制度の基礎知識をわかりやすく解説します。

介護休暇とは

介護休暇とは、育児・介護休業法によって定められている休暇で、労働者が家族の介護などを理由に短期的な休暇を取ることができる制度です。年次有給休暇とは別に取ることができます。
次のようなシーンでの利用が期待されています。

  • 配偶者の介護(食事、入浴、排泄などの身体介助)のために休みがほしい
  • 親の通院に付き添うため午前中の休みがほしい
  • 親の要介護認定があるので、それに同席したい など

上記のとおり、対象家族への直接的な介護だけでなく、医療や介護の諸手続きなどの理由でも取得することが可能です。
この休暇を利用することで、仕事と介護の両立を図り、介護離職を防ぐことが期待されます。

介護休暇と介護休業の違い

介護休暇に似た制度に「介護休業」があります。
介護休業は、介護休暇と同じく家族の介護のために取得できる制度ですが、より長く仕事を休むことができます(詳しくは別記事にて説明します)。
両者の違いは次のとおりです。

介護休暇介護休業
目的対象家族の介護と仕事との両立を図るため対象家族の介護・その準備と、仕事との両立を図るため   
対象家族配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫同左
期間・対象家族1人につき5日/年
・対象家族2人以上なら10日/年
※時間単位でも取得可
対象家族1人につき93日
※3回まで分割して取得可
要介護認定の要否対象家族が要介護認定を受けていなくても取得可同左
給与との関係原則、発生しない原則発生しないが、申請すれば介護休業給付金を取得可。

介護休暇は取得できる日数が年間5日間/人に限られていますが、介護休業は93日間/人で、最大3回に分けて取得することができます。
介護やその準備に専念しなければならないような場合であれば、介護休業を利用して仕事を長期間休む方が適切です。

取得できる労働者は

取得できる労働者は、対象家族(後述)を介護する労働者です(日雇い労働者などは対象外)。ただし、労使協定があって次のケースでは介護休暇を取得できない場合があります。

  • 勤続6ヶ月未満の労働者(※2025年4月1日からこの要件は廃止される予定)
  • 週の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 半日単位で介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者(※1日単位での申出は拒めない)
  • 1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は、半日単位での取得はできない。

ご自身が対象となるかどうか分からない方は、勤務先の人事・総務の担当者へご確認ください。

対象となる家族

介護休暇の対象となる家族は、次のとおりです。

  • 配偶者
  • 父母
  • 配偶者の父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹

なお、対象家族との同居・別居は問われません。配偶者は内縁関係(事実婚)も含みますが、子の範囲は法律上の親子関係がある子のみです。

事例紹介

介護休暇はどのような時に取れば良いのでしょうか。以下、いくつかの事例をもとに、活用するポイントを紹介します。

Aさん

Aさん(55歳・男性)は、不動産販売会社に正社員として勤務しています。家族は専業主婦の妻、高校生の娘が1人います。

対象家族の状況

離れて暮らす母親が2年前に肺炎を患い、退院したあと、外出や買い物で介助が必要となりました。これまでは妻が母親を定期的に訪問していましたが、体調を崩してしまったため、Aさんが代わりに訪問して介護することになりました。

介護休暇の取得へ

早速、Aさんは職場の上司に相談しました。上司は仕事に支障がないように業務分担などの対策を取り、介護休暇を取りやすい環境・雰囲気を作ってくれました。
結果、介護休暇の取得が認められ、日程調整もスムーズに進み、規定の書式を使って総務課へ申請し、翌日・翌々日の2日間休暇を取ることとなりました。

Bさん

Bさん(45歳・女性)は、実父と高校生の息子との3人暮らし、スーパーマーケットでパートタイム勤務をしています。勤務は今年で6年目を迎えました。

対象家族の状況

実父が軽い認知症を患い、介護保険制度の要介護認定を受けるため市町村へ申請を行いました。その後、役所の担当者から連絡があり、約1週間後に自宅で訪問調査が行われることになりました。Bさんはこれに同席するため、介護休暇を取りたいと考えました。

介護休暇の取得へ

Bさんが勤務先に相談すると、店長が他のパートタイム従業員とシフトの調整を行い、介護休暇が1日間取得できるよう段取りしてくれました。申請は口頭で行われ、取得が認められました。

Cさん

Cさん(27歳・男性)は、実母との二人暮らしで、自宅近くのコンビニエンスストアで週に2日間アルバイト勤務して、約3ヶ月が経過しました。

対象家族の状況

同居する実母の体調が悪くなり、通院に付き添うことになりました。しかし、その日はアルバイトのシフトが入っていることから、介護休暇の取得を申し出ました。

介護休暇が取得できない?

事業主は繁忙期であることと、Cさんの週の所定労働日数が2日以下であることを理由に拒否しました。
結果としてCさんは介護休暇を取得できなかったため、シフトを調整し、通常の休みを取ったうえで通院に付きそうこととなりました。

取得できる日数・単位

介護休暇を取得できる日数・単位は次のとおりです。
※毎年4月1日から翌年3月末まで(事業主による定めが特にない場合)

項目内容
取得できる日数対象家族が1人の場合は、年5日まで
対象家族が2人の場合は、年10日まで
取得できる単位1日または時間帯で取得可

このように、労働者は日単位・時間単位どちらかを選んで介護休暇を取得することができます。休暇の目的や、対象家族の心身状況によって自由に選び、便利に使うようにしましょう。

介護休暇と給与の関係

介護休暇と給与との関連については、法律上の定めがありません。また、介護休業給付金のように公的な現金給付がある訳ではありませんので、多くの場合は無給となります。
人によっては介護休暇ではなく有給休暇を取った方が金銭的にはメリットがあります。状況に合わせて、不利益がないよう判断しましょう。

介護休暇を取得する方法

介護休暇を取得するには、勤務先・事業主への申請が必要です。手続き方法は、書面の提出に限定されておらず、口頭での申し出も可能です。
ただし、勤務先で規定の書式や添付書類が定められている場合がありますので、担当部署へ前もって確認しておき、それに則って手続きを行うと良いでしょう。

よくある質問

ここからは、介護休暇に関するよくある質問(Q&A)を記します。抱えがちな疑問点の解消に役立ててください。

介護休暇を取りにくい。どうしたらいい?

介護休暇は国が定めた労働者の休暇です。申請のあった事業主は、これを拒否したり、期日を変更したりすることはできません(労使協定などによって拒否できる労働者は除く)。
介護休暇を取ることが仕事場に大きな影響がないように、できる限り日時調整や業務分担を行うなどの工夫をしましょう。

介護休暇と看護休暇の違いは?

介護休暇と看護休暇は、いずれも労働者に与えられた休暇ですが、対象家族・取得理由が異なります。違いは次のとおりです。

  • 介護休暇:親・祖父母などの対象家族の介護のための休暇
  • 看護休暇:小学校就学前の子どもの通院、看護のための休暇

取得できる日数は、いずれも家族1人につき年間5日間で、時間単位での取得も可能です。

対象家族の要介護状態とはどのような状態を指す?

この制度での要介護状態とは、次のとおり定義されています。

  • ケガや病気などで2週間以上の期間にわたり常時介護が必要な状態

介護保険制度の要介護認定を受けているかどうかは問われず、非常に使いやすい制度であるといえます。

介護休暇を取れない場合はどうする

介護休暇を取れない場合は、どのようにしたら良いのでしょうか。主な理由とともにその対処法を解説します。

取得しにくい雰囲気がある

勤務先の責任者や、人事・総務の担当者に対し、介護休暇は労働者に与えられた権利・休暇である旨を伝えて、取得できるよう交渉してください。
それでもなお、取得が難しい場合は、次の相談機関を利用しましょう。

  • 勤務先の相談窓口
  • 都道府県労働局
  • 地域包括支援センター など

勤務・シフト調整が難しい

勤務・シフトの調整が難しい場合は、できる限り早く介護休暇を取る日程を勤務先に伝え、調整のための時間的ゆとりを作りましょう。
また、休暇を取ることで仕事・業務に大きな影響がないよう、申し送りが十分にできるような工夫が必要です。
介護休暇を取る側と、取得する人をフォローする労働者が、互いに気持ちよく過ごすことができるような配慮が、事業主に求められます。

まとめ

介護休暇は労働者が仕事と介護を両立するために設けられている制度です。便利に使って、家族への介護をしながら、仕事を継続できるようにしましょう。
家族だけで介護することが難しい場合は、担当のケアマネジャーに相談しつつ、この記事で紹介したサービスを組み合わせて便利に利用し、無理なく自宅での生活が続けられるようにしましょう。

参考文献

  1. 「介護休暇等に関する参考資料」厚生労働省
  2. 「通院の付添いなどで短時間の休みが必要な時は、「介護休暇」を活用しましょう。」厚生労働省
  3. 「「介護休業」を活用し、仕事と介護を両立できる体制を整えましょう。」厚生労働省
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