トイレは幼児期にトレーニングを受けておむつを卒業してから、誰もが当たり前に使用してきた設備です。
介助が必要となった場合、個室のトイレで排泄をするために必要な動作にはどんなことがあるでしょうか。
また、どんなポイントに気を付けるべきでしょうか。

トイレ介助の流れ

個室のトイレで排泄をするまでには大きく3つの動作があります。

  • トイレまで歩く
  • 便器に座る
  • 立ち上がる

それぞれの動作で介助のポイントがあります。
共通して重要なのは、転倒のリスクを避けること、そして本人の尊厳を尊重することです。

トイレまで歩く:歩行の介助

個室のトイレは一般家庭の場合は居室内にないので、個室へ向かうことが必要です。

ひとりで歩ける場合、介助者が付き添って支える場合、福祉用具を使用する場合などパターンは様々ですが、最も気を付けなければならないことは「転倒リスク」です。
高齢者にとって転倒は骨折など大けがに繫がり大変危険です。
たった1回の転倒がADLの低下を招き、そのまま寝たきりになってしまう可能性すらあるのです。
安全に移動できるように体重を支える手すりを設置したり福祉用具を活用することはもちろんのこと、滑りにくいマットや室内履きを使用して足元の環境を整えるとリスクを低減できます。

また歩行に必要な筋力が弱まると歩行のスピードがゆっくりになります。
その結果トイレまで間に合わず失禁してしまうことがあり、本人の尊厳を傷つけてしまいます。
その場合は介助者がタイミングを計ってトイレへの誘導声掛けをすることで個室トイレでの排泄を実現できることがあります。(無理をせずポータブルトイレを設置することもひとつの方法です)

便器に座る:トイレでの座位の介助

座位とは座った姿勢のことです。
トイレでは座って排泄をしますが、高齢者の場合いきむ力が弱まります。すると自然に尿や便が体外へ排出するまでに、若い時に比べて時間を要するようになります。中には10分以上便座に座ったまま…という方も見られます。
しかし腹筋・背筋が弱まり座った姿勢を保つことが難しくなると、トイレからの転落などケガのリスクが高まります。転落リスクを防ぐために排泄中も常時介助者が個室内で本人の身体を支えるとなると、人目を気にせず落ち着いて排泄することも困難です。

この場合、体重・体勢を支えるための手すりを設置することが有効な方法のひとつです。
手すりにはイスのひじ掛けのように座った本人の左右に設置するものや、座った時の前方にテーブルのように設置するものなど様々な種類があります。本人の身体が傾きがちだったり、力を入れやすい方向をチェックして適切に設置しましょう。

また、トイレでいきむと血圧が瞬間的に上昇し、意識を失ってしまうことが有り得ます。そういった可能性がある場合も適切な手すりを設置することで身体を支えることが出来れば、転落を防ぐことが可能です。(ただしこの場合は脳卒中など危険な病気が原因であることも考えられるため、あまり長時間トイレから出てこないようであれば様子を伺いましょう)

立ち上がる:トイレでの立ち上がりと立位保持の介助

トイレでの衣服の着脱や排泄後の陰部の拭き上げをする際に必要な動作です。
自分で立位を保つことが出来れば、介助者は介助動作に専念することができます。

しかし立位の保持が難しい場合は、介助者は介助動作に加えて本人の体重を支える必要があります。介助者が本人の身体を支えながら下肢へ手を伸ばす必要があるためバランスを崩しやすく、転倒リスクが高まって危険です。
そのため、本人の身体状況によっては介助者が1名では対応できず、2名での介助が必要となります。狭いトイレの個室内に介助者2名+本人1名の大人3名が入るにはスペースが不足します。特に在宅介護の場合は常時2名の大人で介助が必要となると、個室トイレでの排泄が実現困難となりかねません。

この場合も本人の力の入れやすい場所に手すりを設置するなど、30秒くらい立位を保てるように福祉用具を活用すると解決できる可能性があります。

トイレの介助に便利な用具

トイレの介助は用具を活用することで、転倒リスクをおさえたり、排泄をスムーズにしたり、QOLをより高めることにつながります。

滑り止めマット

個室トイレと居室を往復する間に転倒することを避けるため、滑るリスクがある箇所にマットを設置すると効果的です。
下肢の力が弱まると、スリッパや靴下などは想像以上につまづきや滑りの要因となります。

介護用手すり

便器の前で立つ、座るといった全身運動を行う際、あるいは排泄時にいきむときに、手すりが設置してあると力が入りやすくなります。
また移動中に体重を支えるために廊下に手すりを設置することも重要です。

ポータブルトイレ / 尿器 / おむつ

個室トイレまでの移動が困難な場合、ベッドのある部屋にポータブルトイレを置いたり、ベッドのうえで尿器やおむつを用いて用を足すという選択肢もあります。

日本ではトイレの介助が特に重要

日本に洋式便器が導入され始めたのは第二次世界大戦後。
そこから温水洗浄や暖房便座など発展を遂げ、現代の日本のトイレ環境は世界で一番きれいで整っていると言われています。

トイレは各国や地域で独自の文化やルールがありますが、日本人はいつでもどこでも「清潔な水洗トイレ」に慣れ親しんでいます。
更に日本人は比較的「排泄を恥ずかしいと思う」気持ちが強い傾向があると言われています。(例として「排泄音消し装置」は日本独自の文化のようですね)
こういったことからも、出来る限り最後までプライバシーが守られ衛生的な水洗トイレでの排泄を希望する方が多いです。

トイレで排泄するということは、私たちが普段意識している以上に「全身運動」です。
本記事で解説した通り、筋力が弱まるとトイレでの自立排泄を叶えるための動作が難しくなっていきます。

逆を言えば、トイレでの排泄を続ける事ができればADLの低下も防止できるということかもしれません。
個室トイレでの排泄が出来る身体能力がある場合は、様々な工夫をして本人の希望を叶えてあげられるようにすることがQOLの向上にも繋がります。

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