「要介護認定って、どこで申請するの?」「どれくらいの期間がかかるの?」「どんな書類が必要なの?」
初めてのことばかりで、疑問や不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、要介護認定のしくみを説明するとともに、よくある質問に答えながら、申請から結果通知までの流れを詳しく解説します。
Contents
要介護認定とは
要介護認定とは、歳を取って身体が動かなくなり、認知症によって生活に支障が出た場合、どの程度の介護を必要とする状態なのか、行政がそのレベル(要介護度)を認定するしくみです。
介護保険サービスの利用に先立ち行われるもので、この認定を受けなければ、介護保険制度のサービスを利用することができません。
一連の手続きは全て無料で行われ、本人・家族が費用を負担することはありません。
要介護度
要介護度とは、介護が必要な状態になった人がどの程度の介護を必要とする状態なのか、そのレベルを数値化したものです。
要介護度は、状態の軽い順から「自立」「要支援1・2」「要介護1~5」に分かれており、高齢者の身体や認知能力に応じていずれかに判定されます。ざっくり分けると次のとおりです。
種類 | 内容 |
自立 | 自分の力で歩いたり、起き上がったりすることができる。また、目的に合わせて人と会い、コミュニケーションを取るなど人の手を借りることなく、自立した生活を送ることができる。要介護状態とはいえない。 |
要支援1・2 | ご飯を食べたり、お風呂に入ったり、トイレをしたりすることは自分の力でできるが、起き上がりや立ち上がりが不安定なので、後ろで支えたり、手を引いたりするなどの介助が必要。また、電話するときは代わりに番号を押す、買い物の際にはお財布からお金を出してあげるなどの支援が必要な状態。 |
要介護1~5 | 食事、入浴、トイレなどの日常生活だけでなく、電話、薬の管理、調理などの場面で、全部または一部(例:トイレ時のズボンの上げ下ろし、適量の薬を準備する、本人に代わって包丁で切るなど)の介助が必要な状態。要介護5が最重度となり、介護がなければ生活を送ることは難しい。 |
なお、基準は全国一律で定められており、国内のどこに住んでいようと同じ基準で調査・判定が行われます。
要介護認定の申請方法
要介護認定の申請は、どこでどのようにすれば良いのでしょうか。以下、申請先とその方法を紹介します。
要介護認定の申請先
要介護認定の申請先は、お住まいの市町村の窓口です。申請先窓口の名称は自治体によって異なりますが、よくあるものとしては「高齢者支援課」「介護保険課」などがあります。
申請を行う人
申請は本人が行うことを原則としますが、入院中などの事情で申請が難しいときは、家族などが代理で申請することもできます。
申請に必要な書類
要介護認定の申請に必要な書類は次のとおりです。
- 要介護認定の申請書
- 介護保険の被保険者証
- 申請者の身分証明書
- マイナンバーを確認できる書類
- 委任状(代理申請の場合) など
自治体によって必要書類が異なるため、申請する前にあらかじめ窓口へ問い合わせると良いでしょう。
申請からサービス利用までの流れ
申請したあと、どのような流れで審査・判定が行われ、サービス利用までにどのくらい時間がかかるのでしょうか。
ここからは、申請からサービス利用までの流れを整理して解説します。
訪問調査
訪問調査とは、市町村の担当者が申請した方の自宅を訪問して行われる聞き取り調査です。申請した方の身体能力や認知能力のレベル、持病や障害があるか、日常生活上の課題があるかなど、一定の項目においてチェックが行われます。
所要時間は約1時間で、担当者の質問に答えたり、その指示に応じて身体を動かしたりします。また、必要に応じて同居する家族が代わりに回答することもあります。
調査にあたって、本人や家族があらかじめ準備するものは特にありません。ただし、日常生活において気になることがあればあらかじめ書き出しておき、担当者に正確な情報として伝えると良いでしょう。
主治医の意見書を作成
申請者の主治医に対し、市町村が意見書の作成を依頼します。意見書には、本人の心身の状況や、病気やケガがあるか、障害があればその状態が書かれています。
なお、主治医がいない場合は、新たに医療機関を受診して、主治医となる人を決める必要があります。
一次判定
市町村の担当者が、訪問調査で得られた情報をコンピュータへ入力し、介護を必要とするレベルが自動的に算定されます。これを一次判定といいます。
ただし、これはあくまでもコンピュータの「ものさし」で自動的に算定されたもので、仮判定という扱いです。次の二次判定に必要な情報として引き継がれます。
二次判定
一次判定の結果と主治医の意見書がそろってから、二次判定が行われます。二次判定は、市町村が設置している介護認定審査会が行い、その結果が最終結果となります。
介護認定審査会とは、医療や介護分野の専門家(例:医師、看護師、保健師、社会福祉士、介護福祉士など)が集まり、一次判定の結果が妥当なのか、その内容を審査する機関です。
会議では、申請した方の心身状況を踏まえたうえで、
- 自立
- 要支援1・2
- 要介護1~5
のどれに当てはまるのか、専門的な視点から協議してその妥当性を判定します。一次判定の結果よりも重くなったり、軽くなったりすることがあります。
結果の通知
二次判定の結果は、申請した日から1ヶ月以内に申請者へ郵送で通知されます。
「自立」と認定された場合は、要介護状態ではないということになり、原則として介護保険サービスを利用することはできません。
ケアプランの作成
二次判定で要支援1・2、要介護1~5のどれかに判定されたら、ケアプランの作成を介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)に依頼します。
ケアプランとは、本人や家族の抱えるニーズ、生活上の課題を聞き取ったうえで作成される介護サービスの利用計画書のことです。次の内容が記載されています。
- 生活上の目標、支援方針
- 介護サービスの種類、回数、量
- これまでの相談内容、事業者との連絡内容
- 負担する割合、額 など
なお、ケアプランは本人や家族が作成することも可能です。しかし、作成には事務的な手間がかかり、専門的な知識を要するため、ケアマネジャーに依頼するのが一般的です。
サービス担当者会議
作成されたケアプランの原案をもとにサービス担当者会議が開かれ、最終的な調整がおこなわれます。
サービス担当者会議は、担当のケアマネジャーが主催するもので、本人・家族、介護サービスを提供する施設の関係者などがこれに参加し、プランの内容を共有するとともにサービス利用の事前打合せを行います。
サービス利用
サービス担当者会議ののち、介護サービス提供事業所と契約を交わしてサービス利用をスタートします。介護サービスを利用した場合、費用の1割(所得によっては2~3割)を負担しなければなりません。
契約からサービス利用まで滞りがないように、ケアマネジャーが適切な支援・助言をしてくれるので、遠慮せずに依頼しましょう。また、サービスの利用中に困ったことがあれば、ケアマネジャーに相談することもできます。
要介護度ごとのおすすめのサービス
ここでは要介護度ごとにどのようなサービスがおすすめなのか、3つの事例を紹介します。ご自身に最も近いものを当てはめて、どのサービスが適切なのか検討してみてください。
Aさん 70代男性、妻と2人で暮らす。要支援1と判定。日常生活動作にやや衰えが見られ、年相応の物忘れがある。これ以上、心身状況を悪化させないために、介護予防を中心としたサービスがおすすめ。 適切な介護サービスの例:介護予防通所リハビリテーション、介護予防福祉用具貸与など |
Bさん 80代女性、一人暮らしだが近隣に娘が住んでいる。要介護2と判定された。日常生活では、食事では調理し配膳する、トイレではズボンの上げ下ろしをするなどの一部の介助・見守りが必要。立ち上がりや片足での立位保持が難しく、歩行などに杖や歩行器が必要。軽度の認知障害があり、直前の会話や行動を覚えていないことがある。 適切な介護サービスの例:訪問介護、デイサービス、ショートステイ、グループホーム、住宅改修など |
Cさん 90代女性、夫と二人暮らしだった。要介護4と判定。重度の認知症を患っており、認知機能・身体機能の低下が見られ、多くの時間を寝たきりの状態で過ごす。食事、入浴、排泄は一人では難しく、多くの場合介助が必要。歩行や立位保持も難しい。意思の伝達がほとんどできない場合が多い。 適切な介護サービスの例:特別養護老人ホームなどの施設サービス |
よくある質問
ここからは、要介護認定に関するよくある質問を紹介します。
認定結果に不満がある場合
判定された要介護度に不満がある場合、まず担当のケアマネジャーに相談しましょう。
それでも納得がいかない場合は、都道府県に不服申立てをすることができます。期限は、判定の通知を受け取って2ヶ月以内と定められているため、注意しましょう。
訪問調査の際は家族の同席は必要か
家族の同席は必須ではありませんが、必要な情報を担当者へ伝えることが正確な判定につながるため、できる限り同席するようにしましょう。
認定の有効期間はあるのか
判定された要介護度には有効期間があります。次のとおりです。
- 新規申請の場合:原則として6ヶ月
- 更新認定(要介護度を更新する)場合:原則として12ヶ月
一度決まった要介護度は、そのまま変更されないということはありません。必要に応じて更新認定を行い、現在の心身状況を評価・判定してもらうようにしましょう。
要介護度を変更したい場合は
要介護認定のあとに、本人が大きな病気や事故に遭い、心身状況に著しい変化があった場合には、有効期間よりも前に区分変更申請をすることができます。次のような例です。
Dさん 80代女性、息子と二人暮らし。初めて要介護認定を受けたときは要支援2と判定されたが、その後、脳梗塞を発症して入院した。急性期の治療後、リハビリテーションを経て自宅に復帰したものの、後遺障害として右半身に麻痺が残った。区分変更申請担当のケアマネジャーに相談して区分変更申請を行った結果、要介護2と判定された。これまで以上に介護サービスを利用し、自宅での生活が継続できるように工夫している。 |
まとめ
この記事では、要介護認定の内容や流れについて解説してきました。
要介護認定は介護保険サービスを利用するために必要な調査で、どの程度の介護を必要とするのか数値化するしくみです。
自身の要介護状態に合った判定をしてもらったうえで、ニーズに適った介護サービスを利用するようにしましょう。
分からないことがあれば、担当のケアマネジャーや、地域包括支援センターなどの公的な相談機関を利用すると良いでしょう。
参考文献
- 「サービス利用までの流れ」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省
- 「公表されている介護サービスについて」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省
- 一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟=編集(2021)『最新 社会福祉士養成講座 高齢者福祉』中央法規