入浴介助は、利用者を抱えたり転倒させないよう気を遣ったりと、介護者にとって大きな負担となりやすいです。
また、入浴時に転倒しないか不安を抱えている利用者も少なくありません。
このような両者の不安や負担を和らげ、安全な入浴をサポートしてくれるのが入浴補助用具です。
この記事では、入浴補助用具の種類や選び方、介護保険を活用した導入方法などをわかりやすく解説します。
Contents
入浴補助用具とは
入浴補助用具とは、身体機能が低下している方が安心して入浴できるようサポートする福祉用具です。
浴槽をまたぎやすくしたり、浴室での転倒を防いだりするなど、用具によってさまざまな役割があります。
浴室は生活エリアの中でも特に滑りやすく、利用者は必ず裸で利用するため、転倒・転落を防ぐ必要があります。
入浴の一連の動作を想定し、どのような入浴補助用具があれば利用者も介護者も安心できるか検討しながら取り入れていくことが大切です。
入浴補助用具の種類
入浴補助用具は7種類あります。それぞれの特徴を理解しておくと、悩みに合った用具を見つけやすくなるでしょう。
入浴用いす
入浴用いすは、洗髪や洗身時に利用者が座るいすです。
裸で座っても痛くないように、座面や背もたれなど肌の当たる部分はウレタン(スポンジ状)でできている製品が多いです。
入浴用いすは、キャスターの有無で2種類に分類されています。
シャワーチェア
シャワーチェアは、キャスターがついていない入浴用いすです。
座面の高さを調整できる製品が多く、足腰が弱ってきた方でも立ち座りしやすい高さに変えられます。
背もたれやひじかけが付いているタイプを選べば、座ったときの姿勢が安定しにくい方でも安全に洗身や洗髪が可能です。介護者も利用者を支え続ける必要がなくなるため、入浴介助の負担が少なくなります。
シャワーキャリー
シャワーキャリーは、キャスターがついている車いすのような形状の入浴用いすです。
居室から浴室まで座ったまま移動できるため、自力で歩けない方でも転倒への不安を感じることなく安心して入浴できます。
車いすからの移乗や歩行のサポートが不要になり、介護者の身体的な負担だけでなく、転倒させてしまうのではないかという心理的な負担も軽減できます。
浴槽用手すり
浴槽のふちに取り付けて使用する浴槽用手すりは、一人で浴槽をまたぐのが不安な方の支えとなります。
浴槽の内側にも持ち手が付いているタイプを使えば、浴槽の中で座ったときの姿勢が崩れやすい方も安心して湯船に浸かれるでしょう。
浴槽用手すりは、浴槽のふちをはさんで取り付けるタイプが一般的です。工事せずに設置できるため、賃貸住宅のように工事による手すりの取り付けが難しい場合も使用できます。
浴槽内いす(浴槽台)・浴槽内すのこ
浴槽内いすと浴槽内すのこは、どちらも浴槽の中に設置して深さを調整するための入浴補助用具です。
設置部分が浅くなるため、浴槽が深く出入りに不安を感じている方でも安心してまたぎやすくなります。
浴槽内いすは台のような形状をしており、腰掛けると浴槽内でもいすに座った状態になれます。足を伸ばして湯船に浸かっているときよりも立ち上がりやすくなるため、浴槽から出る際の安心感も増すでしょう。
一方、浴槽内すのこは浴槽全体または一部に敷いて使用します。一部にのみ設置する場合は、浴槽に出入りする際のステップとしての活用も可能です。
入浴台(バスボード)
入浴台とは、浴槽の出入りを安全に行うために使用する、細長い形状をした福祉用具です。
入浴台には主に以下の2つのタイプがあります。
- 浴槽のふちとふちに橋のようにかけて設置するタイプ
- 片方を浴槽のふちにかけ、もう片方を洗い場に立てて設置するタイプ
どちらを使用しても台に腰掛けたまま浴槽をまたげるため、一人で浴槽をまたぐのが難しい方も楽に出入りできます。
利用者も介護者も転倒への不安が和らぎ、安心して入浴できるでしょう。
なお、片方を洗い場に立てて設置するタイプは洗身時のいすとしても使用できるため、洗身・洗髪から浴槽へ入るまでの
一連の動作を座ったまま行えます。
浴室内すのこ
浴室内すのこを設置すると脱衣所と浴室の段差を解消でき、浴室に入りにくいと感じている方も安心して移動できます。
また、洗い場の床が高くなるため、浴槽のふちが高くてまたぐのが不安な方でも出入りしやすくなります。
滑りにくい加工が施されている製品が多く、床が濡れていても転倒しにくい点も浴室内すのこの魅力の一つです。
脱衣所と浴室の段差がなくなればシャワーキャリーを導入しやすくなり、自宅での入浴介助は難しいと感じていた介護者も無理なく介助を続けやすくなるでしょう。
入浴用介助ベルト
入浴用介助ベルトは、利用者や介護者の腰に巻き付けて使用する用具です。
入浴時は利用者が裸であるため、介護者は移乗介助するときに肌に直接触れる必要があります。力を入れると利用者の肌がこすれてしまったり、うまく力を入れられず抱えにくかったりすることも多いです。
利用者が入浴用介助ベルトを装着していれば、介護者はベルトの持ち手をつかんで力を入れやすくなり、立ち上がりや移乗などの負担を軽減できます。
一方、介護者が装着した入浴用介助ベルトの持ち手は、利用者が姿勢を安定させるための手すりのような役割を果たします。姿勢が安定するため、利用者の入浴に対する不安も和らぐでしょう。
入浴補助用具を使うメリット
入浴補助用具を使う利用者のメリットと介護者のメリットを解説します。
利用者のメリット
入浴補助用具を活用すると、浴槽をまたいだり身体を洗ったりなどの入浴にともなう動作が楽になります。
さらに、入浴補助用具で段差を解消したり滑りにくくしたりすると、転倒のリスクが低下します。転倒によるけがや浴槽で溺れてしまうといった不安が軽減され、一人でも安心して入浴できるようになるでしょう。
入浴補助用具を使えば入浴を不安な時間からリラックスできる気持ちよい時間に変化させられる点が、利用者にとっての大きなメリットです。
介護者のメリット
介護者が入浴補助用具を利用すると、利用者の身体を抱えて浴槽に入れたり、身体を支えながら洗髪や洗身したりする負担が少なくなります。そのため、腰痛になる可能性が低くなり、長期的に介護を続けやすくなります。
また、利用者を転倒させないかという不安が軽減されるため、気持ちに余裕を持った入浴介助ができるでしょう。
さらに、利用者が一人で入浴することに対する心配も和らぎ、安心して見守れるようになります。
入浴補助用具の選び方
入浴補助用具を選ぶ際のポイントを3つ解説します。
利用者の身体の状態に合わせる
入浴補助用具は、利用者の身体の状態に合わせて必要な用具を選びましょう。
例えば、白内障や弱視によって見えにくい方には、見えやすい色の用具を選ぶと安全に使いやすいです。
入浴台に座ったときに浴槽の底に足が付かない方は、浴槽内いすや浴槽内すのこなどを組み合わせて使用すると安心して浴槽をまたげます。
利用者一人ひとりの体格や症状に合わせることで、より安全で快適な入浴ができるようになるでしょう。
介護者の負担を軽減できるか検討する
入浴補助用具を選ぶうえで、介護者の負担を軽減できるかどうかも大切な視点です。高さ調整機能や用具の重さ、介助動作の妨げにならないかなど使い勝手を考慮して選びましょう。
例えば、入浴用いすのひじかけが固定式だと浴槽への移乗介助がしにくくなりますが、跳ね上げ式であれば介助しやすくなります。また、軽い用具であれば設置や片づけもしやすいです。
また、水場で使用するため、防カビ加工が施されている製品やさびにくい素材の製品を選ぶことも重要です。清潔さをたもちやすい製品を選ぶことで、お手入れの手間を省けます。
介護者の負担が軽減できれば、無理なく入浴介助を続けやすくなるでしょう。
浴室の環境に合わせる
どれほど機能が優れている入浴補助用具でも、浴室の環境に合っていなければ安全には使用できません。
まず、入浴補助用具が浴室や浴槽のサイズに合っているか確認しましょう。以下は確認の具体例です。
- シャワーキャリーが浴室の入り口を通れるか
- 浴槽内すのこが浴槽の寸法に合っているか
- 浴室内すのこの高さが脱衣所と浴室の段差に合っているか
上記に加えて、家族の使いやすさも考慮しましょう。浴室は家族全員が使用するため、福祉用具を使用しない家族が入浴するときに移動や収納がしやすいかどうかも製品選びの重要なポイントです。
例えば、折りたためる製品であれば収納しやすいだけでなく、介助用のスペースを確保できるため介護者が無理な姿勢になるのを防げます。
なお、浴槽のふちが広かったり締め付けて固定するとへこんだりする場合は、浴槽用手すりの設置が難しいこともあります。事前に浴室の環境を確認しておきましょう。
介護保険で入浴補助用具を導入する方法
入浴補助用具は介護保険サービスの特定福祉用具販売を利用して購入できますが、福祉用具貸与を利用したレンタルはできません。水回りで使用し、肌が直接触れる福祉用具であることから、他人が使用したものを利用することに心理的な抵抗を感じやすいためです。
特定福祉用具販売を利用すると、同一年度内に購入した福祉用具の10万円までは所得に応じて1〜3割の自己負担額で購入できます。
例えば、1割負担の方が5万円の用具を購入する際は、自己負担額は5,000円です。
ただし、同一年度(4月〜翌年3月)内の購入額が10万円を超えた部分は全額自己負担となります。
ケアマネジャーと相談しながら利用者にとって必要な用具を選び、購入するようにしましょう。
介護保険について詳しく知りたい方は「介護保険ってなに?初めて介護する人が知っておくべきこと」をご覧ください。
介護保険で入浴補助用具を購入する流れ
介護保険サービスである特定福祉用具購入の流れは以下のとおりです。
1.介護保険を申請し、要介護認定を受ける
2.ケアマネジャーにケアプランを作成してもらう
3.購入する業者を決める
4.福祉用具専門相談員のアドバイスを聞きながら、入浴補助用具を選ぶ
5.支払い方法を確認後、業者へ支払う
6.市区町村の窓口に介護保険の利用を申請する
7.所得に応じた給付金が指定口座に振り込まれる
業者への支払い方法は以下の2種類があるため、支払う前に確認しておきましょう。
- 償還払い:購入した全額を業者へ支払い、あとから給付金を受け取る
- 受領委任払い:自己負担分のみ先に支払い、あとから給付金が業者へ直接振り込まれる
特定福祉用具購入は要介護認定や用具選びなど、考えないといけないことが多いです。
利用者と家族だけで対応しようとせず、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談しながら進めるとスムーズに手続きを進められるでしょう。
福祉用具専門相談員について詳しく知りたい方は「福祉用具専門相談員の役割と活用法を徹底解説」もご覧ください。
介護保険で入浴補助用具を購入する際の注意点
介護保険で入浴補助用具を購入する際の注意点を2つ紹介します。
同じ種目の福祉用具は原則購入できない
介護保険の特定福祉用具販売は、同じ種目の福祉用具を購入した場合、購入した年度を問わず原則給付金は支給されません。しかし、目的と用途が異なる福祉用具であれば、給付金の支給対象になります。
例えば、浴槽内すのこと浴室内すのこは目的と用途が異なるため、どちらも給付金が支給されます。
一方、大柄な方のために入浴いすを2個購入する際は、目的と用途が同じであるため1個分の給付金しか受け取れません。
なお、以下のような相応の理由がある場合のみ、例外的に同じ種目の福祉用具の再購入を認めている市区町村もあります。
- 故障や経年劣化などで使えなくなった
- 要介護度が上がり、さらに機能がよい製品が必要となった
特定福祉用具販売は簡単に再購入できないため、どのような機能を持つ製品が最適かケアマネジャーや福祉用具専門相談員と慎重に選定することが大切です。
介護保険で購入できない入浴用の福祉用具がある
安全に入浴するための福祉用具のなかには、介護保険で購入できないものもあります。
例えば、滑り止めマットは入浴補助用具に分類されていないため、介護保険の対象外です。購入する際は、全額自己負担となるため注意しましょう。
また、利用者を吊り上げたり電動シートに乗せたりして浴室内の移動をサポートする入浴用リフトは、入浴補助用具ではなく移動用リフトに分類されます。そのため、特定福祉用具購入ではなく、福祉用具貸与(介護保険を活用したレンタル)の対象です。
ただし、使用によって形や品質が変化し、再利用すると事故につながる恐れがある吊り上げ式リフトの吊り具は特定福祉用具販売の対象となっています。
福祉用具貸与の給付額や流れなどが知りたい方は「福祉用具貸与で安心介護!レンタルできる福祉用具の種目と利用の流れ」をご覧ください。
まとめ
入浴は、日本人にとって昔から親しまれているリラックス方法です。身体を清潔にたもつためにも、身体を拭くだけでなく、できるだけ浴室でしっかり入浴したいと考える方も多くいます。
入浴補助用具は利用者の安全な入浴と介護者の負担軽減の両方をサポートし、利用者の「入浴したい」という希望を叶える福祉用具です。介護保険を活用して購入すれば、自己負担を抑えながら浴室の環境を整えていけます。
購入までの手続きや利用者に合った用具選びなどは家族だけで対応するのは難しいため、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談するのがおすすめです。専門家の力も借りながら、入浴を安全で快適な時間に変えていきましょう。


