排泄介助
-
要介護度が高い方の排泄介助について解説
「寝たきり」とはどのような状態か 一般的に想像する「寝たきり」の状態は、介護保険制度を利用する際の要介護度で考えると要支援1から要介護5の中で最も状態の重い『要介護5』の段階です。寝たきりの状態であっても 自分で出来る動作が少しでもあるか意志の疎通がどのくらい可能か の状況によっては『要介護4』と判定される場合もありますが、介護量がかなり多い状態であることに変わりはありません。※現在はあまり「寝たきり」という言葉の使用は好まれませんが、一般的にイメージしやすいように本記事では「寝たきり」の表現を使用します。 寝たきりになるとおむつを使用する必要が出てくる 「なるべくトイレで排泄したい」は誰しもが願うことですが、トイレで排泄をすることは「歩く」「立つ」「座る」「衣服を脱ぐ・着る」「お尻を拭く」といった複数の動作の組み合わせから成り立っています。普段何気なく行っているこれらの動作は、筋力が低下すると難しくなるのです。 一例として、ケガや病気で入院をし長時間安静を保って横になっていた人がリハビリを開始し始めたとき、トイレでの転倒事故に注意が必要と言われます。長くベッド上で過ごし身体を動かす機会が減ると若者でも筋力が低下してしまいますが、その状態で椅子に比べて背もたれやひじ掛けが十分でなく座面の小さなトイレに座るとバランスが取りづらく姿勢を保てずに転倒してしまう恐れがあるからです。「頭ではどうすればいいか分かっているのに、身体が付いてこない」といった状態です。この場合はリハビリを経て筋力が回復すると問題なく以前と同じようにトイレでの排泄が出来るようになります。 こういった例からも、トイレで排泄をするためには筋力が必要であることが分かります。寝たきりの状態とは前述の「歩く」「立つ」「座る」「衣服を脱ぐ・着る」「お尻を拭く」のような行為が出来るだけの筋力がなく、寝た姿勢で過ごす状態です。そのため加齢で全身の筋力が低下して寝たきりの状態になっている方はトイレ(ポータブルトイレ含む)での排泄を断念し、おむつを用いて排泄することになります。 寝たきりの方のおむつには「テープタイプ」を選ぶ おむつを使用することになったとき、まず悩みとなるのは「どのおむつを選べばいいのか?」という点です。ドラッグストアやホームセンターには様々な種類の大人用おむつが販売されていますが、形や吸収量など商品が多岐に渡るため難しいと感じる方もいます。 寝たきりの状態の場合、一般的には「テープタイプ」のおむつを使用します。 テープタイプのおむつの特徴 テープタイプのおむつは付属のテープを留めて位置を固定するタイプで、 寝た姿勢のままでもおむつ交換がしやすいテープで留めるのでフィット感の調整ができる背中側から漏れにくい といった特徴があります。 おむつには「パンツタイプ」もありますが、こちらは自分で脱ぎ履きがしやすく下着感覚で着用が出来るため、比較的介護度が低い方が着用することが多いです。 テープタイプのおむつ1枚だけでも使用出来ますが、パッドをおむつの中に敷いて使うことが多いです。パッドを併用するとおむつ本体が汚れていなければパッドだけを交換すれば良いので、おむつ交換の負担を軽減することが出来ます。 フィット感のよいおむつの選び方 おむつ・パッド共に種類が豊富ですが、テープタイプの場合はウエスト部分は多少調整が利くため、まずは「ヒップサイズ」を目安にサイズを選びましょう。ただし、ウエスト部分が苦しくならないよう若干のゆとりを持たせられる寸法であることも重要です。また、おむつ・パッド共に「本人の排尿量」に合うものを選びましょう。可能であれば福祉用具の販売店などでサンプルをもらい、実際にあててみてフィット感を確かめると尚良いです。 介護おむつの費用 もうひとつ悩みとなるのがおむつの「費用面」です。介護用のおむつは子供用に比べるとサイズも大きいため1個当たり200円前後、パッドは1個あたり100円前後の単価となります。おむつやパッドは毎日複数個使用するため1か月のおむつ代が10,000円を超えるということもあり、経済的な負担は決して少なくありません。 介護サービスや福祉用具のレンタルは介護保険を利用して補助を受けることが出来ますが、おむつは消耗品となるため介護保険を利用する補助制度がありません。 自治体のおむつ代の補助制度について おむつは介護保険適用外ですが、市区町村主導でおむつ代の補助制度があります。基本は自治体側が用意したカタログから選んだおむつを上限金額に応じて現物支給ですが、おむつ購入費用の補助という自治体もあります。補助を受けるためには前年度の世帯収入を参照したり医師の発行する「おむつ使用証明書」の提出が必要な場合もあります。 なお、この補助制度は特別養護老人ホームなどの介護保険適用可能な施設に入居した人は利用することが出来ませんが、病院や有料老人ホームなどの介護保険の対象外の施設の場合は利用可能です。おむつを持ち込めるかどうかで現物支給・費用補助が分かれることが多いようです。 市区町村毎に補助内容が異なるため詳細はお住まいの役場に確認が必要です。また、残念ながらおむつの補助制度を実施していない市区町村もあります。 介護者の尊厳を守っておむつを活用する おむつを使用した排泄介助を必要とする身体状況になっても、変わらず心がけなければならないことは「被介助者本人の尊厳を守る」ことです。 おむつを使用する段階の要介護度は高く本人との意思疎通が出来ないことも多いため「作業」として実施してしまうこともあるかもしれません。ですがおむつ交換は「介助」であることを忘れず、一連の行動の中でいつもと違う様子が見られないか?など本人の様子をよく観察し、快適に排泄が出来るよう心がけるようにしましょう。
2024.12.23
-
居室にトイレを置く際のポイントについて解説
個室の水洗トイレが利用できない状況とは 日常動作に介護が必要な身体状況になると、自分のタイミングで自由に廊下を歩いて「個室の水洗トイレ」を利用することは容易には叶わなくなります。しかし日本人は出来る限り「個室の水洗トイレ」を使用することを希望する人が多いと言われます。特別養護老人ホームや有料老人ホームなど介護を必要とした生活を送ることを想定した施設でない限り、各個人の居室内にトイレがあることは稀です。 個室の水洗トイレが使いにくくなる理由 居室にポータブルトイレを設置する話の前に、まずは「個室の水洗トイレが使いにくくなる理由」を考えてみましょう。最も大きな理由は「筋力や身体機能の低下」です。これにより、 尿意や便意を感じづらくなり、余裕を持ってトイレへ行けなくなる排尿・排便障害を抱えやすくなり、急にもよおしたり頻繁にトイレへ行きたくなる歩行速度が遅くなったり歩幅が狭まることで、すぐにトイレへ行けなくなる といったことが起こり得ます。別の視点では、 室内が狭かったり便器や手洗い場の配置などの影響で、個室トイレ内の介助スペースが十分に確保できないバランスが取りづらかったり動線上に段差があるため、歩行中の転倒リスクが高くなる などから、「個室の水洗トイレでは安全に排泄介助が出来ない」ことが課題となります。こちらは住宅改修で改善できることもありますが、改修規模や費用面などから断念せざるをえない場合もあるかと思います。 個室の水洗トイレが利用できないことで起きる課題 個室の水洗トイレまで距離があったり、トイレのスペースが十分でなかったりする場合、排泄準備に時間がかかってしまって「排泄する前に失禁してしまう」可能性が高まります。弊社ブログでは「排泄はデリケートな問題」とよく記述しますが、失禁してしまうと本人は大変な恥ずかしさや情けなさなど負の感情を感じます。また、家族などから叱られたり責められたりすると自尊心が大きく傷ついてしまいます。 「排泄はデリケートな問題」であるだけに、排泄に問題を抱えると介助者・被介助者の両方にとって身体的・心理的に負担が大きくなります。このような身体的・心理的な負担は、「個室の水洗トイレでの排泄を断念する」十分な理由になり得ます。特に排泄に介助が必要な身体状況になると介助の量がそれまでと比較して急激に増えるとも言われ、そもそも(どのような形であれ)トイレがひとりで出来ない場合は自宅での介護を続けること自体が難しいと考える人も少なくないのです。 居室にポータブルトイレを設置するメリット 個室の水洗トイレで排泄する前に失禁してしまう個室の水洗トイレでは安全に排泄介助が出来ない という課題を根本的に解決することは困難です。ただし、「個室の水洗トイレ」でなければどちらも少しの介助で排泄の自立を叶えることが出来るかもしれません。立つ・座る・歩く・脱ぐ・着るというトイレで必要な動作自体が少しでも出来るのであれば、「(普段の居場所に近い)居室にポータブルトイレを置く」という選択肢があります。 ポータブルトイレで排泄の自立を保つことができる ポータブルトイレのメリットのひとつは「排泄の自立を保つことができる」ということです。 前述の「個室の水洗トイレが利用できないことで起きる課題」の項でも述べましたが、排泄に対して他人の手を借りることや失敗は大きく自尊心を傷つけてしまいます。例え居室の中であっても、ポータブルトイレがあることで自分が行きたいと感じた時に自力で安全にトイレへ行くことが出来れば、それは大きな成功であり精神面でもとても重要な意味を持ちます。 排泄は1日1回ではなく複数回行う頻度の高い行為であり、人によってその回数やタイミングはまちまちです。排泄の自立を保つことが出来ると、介助者の負担も軽減することに繋がります。 ポータブルトイレで理想的な排泄姿勢を取ることが出来る もうひとつのメリットは「理想的な排泄姿勢を取ることが出来る」という点です。 おむつを使うようになると、ベッド上で主に仰臥位(仰向け)や側臥位(横向け)・ギャッジアップ(電動ベッドの機能を使って背中や脚を起こした状態)で排泄するようになります。これらの姿勢は腹圧がかかりにくく直腸の角度もまっすぐにならないため、人間の身体構造上では排泄がしづらい姿勢です。排泄姿勢が適切に取れないと尿や便を出し切ることが出来ず、残尿があったり便秘になったりとトラブルを抱えやすくなります。 ポータブルトイレでは座って床に足裏がついた姿勢で排泄をするため、前傾姿勢を取ることで腹圧をかけ、直腸の角度がまっすぐになり排泄しやすくなります。すっきりと排泄が出来ると食事をとる意欲が湧いてきたり、残尿感や便秘に伴う腹痛などの不快感を軽減することが出来ます。 居室にポータブルトイレを設置する際に気を付けるべきこと ポータブルトイレの「臭い」の問題 ポータブルトイレの回でもご紹介しましたが、ポータブルトイレを使うことで利用者本人に生じるメリット・デメリットはもちろん両方あります。 ポータブルトイレ導入に際し、多くの方から悩みとして寄せられる代表的なものは「臭い」の問題です。排泄物自体の臭いは、実は排泄直後はまださほど強くありません。時間経過と共に臭い成分(アンモニアやスカトールなど)が発生し、どんどん臭いが強くなっていきます。この臭いはバケツの中の排泄物だけではなく、ポータブルトイレ本体に付着した目に見えない汚れや付近の床・家具に飛び散った汚れなどからも発生します。更には臭いが部屋のカーテンや壁紙・リネン類などに移り「いつも何となく臭う」という状態になってしまうケースもあります。排泄物の臭いが漂う中で1日を過ごす…本人はもちろん、家族など周囲の人にとっても辛いものです。 理想では排泄直後にしっかりバケツの後片付けが出来れば良いのですが、仕事や家事・就寝中など介助者のライフスタイルによっては難しい時間帯がもちろんあります。その場合はポータブルトイレ用の消臭アイテムを活用し、臭いを閉じ込めたり成分を分解して軽減させるなど対策をとることが可能です。空気の通り道を作って換気効率を上げ、空気が一か所に留まりすぎないようにすることも効果があります。 ポータブルトイレの「プライバシー」の問題 また、プライバシーや尊厳を守れるように「羞恥心」について考えることも重要です。ポータブルトイレのメリットを理解はしていても、長年の生活習慣や衛生面から、個室トイレ以外の場所で排泄をすることに大きな抵抗を感じる方は多いです。前述の臭いの件も該当しますが「生活空間に不浄を持ち込む」ことに対して消極的になるのも無理はありません。更に、ポータブルトイレで排泄介助を受けるということは「排泄物を見られてしまう」「排泄物の処分を他人にさせてしまう」ということでもあります。失禁してしまった時と同様、このことは非常に自尊心を傷つけ「こんなことも出来なくなってしまった」と様々なことに対する意欲を失ってしまいかねません。 もしも被介助者本人が短い距離ならば安全に歩くことが出来るようであれば、ポータブルトイレを風通しが良く人目につきにくい廊下の隅に置く・ベッドサイドの場合でも衝立やカーテンを設置して他者から排泄姿が見えないようにするなどの配慮があると良いでしょう。ポータブルトイレのバケツに関しても、処理袋や自動ラップ式を活用すると排泄物の片付けにかかる労力を大きく減らすことが出来ます。 どちらの問題も「介助をしてもらっている」という状況から辛い気持ちを被介助者自ら訴えにくいことがあります。ADLが低下すると今までと異なる生活環境に身を置かざるを得なくなり、介助者・被介助者共に戸惑うこともあるかもしれません。 まとめ 本記事で述べたように「個室トイレ以外の場所で排泄をすること」に大きな抵抗を感じる方は少なくありません。一例として、排泄ケアの勉強会などではおむつを配布され『今夜このおむつを身に付けて、ベッド上で排泄してみてください』と「おむつの中に排泄する」体験をすることが時折ありますが、しようと思っても理性が働くのかなかなか(あるいは全く)出来なかったという人が大半のようです。このことからも、「トイレで排泄する」ということが人間にとっていかに重要なことなのかが分かります。 衛生面など考慮しても居室で排泄するかどうかは非常に悩ましい問題ではありますが、食事や入浴と違い「誰かと一緒にする」機会が極端に少ないのが排泄です。ポイントを押さえながら居室で排泄を済ませる環境を整え「今の状態でひとりでできる最善の排泄」を可能な限り長く続けていくことが大切です。
2024.07.19
-
排泄介助を補助する便利な福祉用具について解説
便器や便座に使う用品 形状変更用便器 排泄介助が必要な身体状況の人にとって、和式便器での排泄は非常に困難です。自宅や施設の便器が和式だった場合、洋式便器を設置するためには便器取り換えの工事が必要となり費用や日数を要します。そこで簡易的に和式便器を洋式便器として使用するために用いられるのが形状変換用便器です。 形状変換用便器は便器取り換えの住宅改修工事をしなくても、既存の和式便器を洋式便器として使うことができるアタッチメントのような用具です。外見はプラスチック製の洋式便器のような形をしていますが、内側は一般的に空洞になっています。バケツのないポータブルトイレのようなイメージです。和式便器の上からこれを被せて設置すると、見た目は洋式便器形状となり座って排泄することが可能です。排泄物は元々ある和式便器の中に落ち、既存の水洗設備を使って流すことができます。 補高・補助便座 補高便座・補助便座は、洋式便器の便座の上に乗せ、座面高(床から便座までの高さ)や便座穴の径を調整するためのものです。便器の座面が低く、膝や股関節などに負担がかかって立ち座りがしにくい場合は、補高便座を用いて座面を高く調整することでしゃがむ量を少なくし負担を減らすことができます。 また、お尻が痩せて元々の便座穴の径だと沈みすぎてしまい安定して座れない場合は、補助便座を乗せて穴の径を小さく調整すると安全です。 トイレに設置する手すり 立ち座りや排泄姿勢の補助など、排泄介助で使用する手すりは大きく分けて2種類あります。 肘掛けタイプの手すり 椅子の肘掛と同じように、座った時に便器の左右に手すりを設置するものです。設置する際は工事不要で、トイレの便器の前から便器本体に添わせるように置きます。便器をネジなどで挟んで固定するタイプと、手すりが取り付けられた床プレートを足で踏むことで動かないようにするタイプがあります。素材はお手入れしやすく丈夫なスチールやステンレスが多いですが、手が触れる部分には滑りにくくひんやりしない木製やウレタン、ゴムなどが使用されています。排泄関連用具は衛生面などの観点から購入のみであることがほとんどですが、肘掛タイプの手すりは介護保険を利用した福祉用具レンタル対象品であることが多いのも特長です。 バータイプの手すり 階段や廊下の手すりと同じように、壁に固定するものです。I型(横向き)もしくはL型の手すりがよく用いられ、便器までの動線や立ち座りの際に握りやすい位置に設置します。このタイプはネジ等でしっかりと壁に固定する必要があるため、設置には工事が必要となります。日本の家屋に馴染みやすいよう全体が木製の製品が多いですが、全体的な素材はステンレスやアルミなどの金属・握る部分は木製やゴムといったように複数の素材を組み合わせているものもあります。 スライディングボード スライディングボードは移乗(ベッドに座った状態からポータブルトイレへ乗り移るなど、○から□へ座るものを変えること)の際に使用する用具です。ボードの表面は摩擦が少なく滑りやすい加工が施されており、少しの力でも横移動がしやすくなります。しっかり体重が乗っても問題ないように丈夫な素材です。 排泄介助を必要とする要介助者は足腰の筋力が弱り、立つ・歩くといった動作をひとりで行うことが難しくなっています。ただし自力で全く動けないというわけではなく「立とうとする(足に力を入れてお尻を浮かす)ことはできる」または「上肢の力がある」という身体状況の方は、身体を支える手すりと併用してスライディングボードを活用することでお尻を浮かせたり身体の重心をずらしながら少しずつ横移動し、自分の力でトイレや車いすなどへの移乗が出来ることがあります。 また「座っていることが出来る」方の場合も抱きかかえず滑るようにして移乗が出来るので、上手く使うと介助者の負担も大きく減少します。スライディングボードも介護保険を利用した福祉用具レンタル対象品です。 トイレマット 各家庭の個室トイレの足元にも、汚れ防止などのためにマットを敷く方は多いでしょう。排泄介助の時にも同様にマットを敷くことで汚れや臭いを防止することが出来ます。加えて、排泄介助においては立ち座り動作や衣服の着脱など、足元と体勢が安定することが重要となります。そのため、排泄介助時のトイレマットは滑り止め加工を施してあるものを選ぶと使いやすいです。 陰部洗浄用シャワーボトル 特におむつやカテーテルを日常的に使用している人は、蒸れや摩擦による皮膚トラブル・尿路感染症が発生しやすくなります。感染や皮膚炎などを防止するためにも、おむつ交換など排泄介助の際にお湯を使って陰部を洗浄します(ウォシュレットをイメージすると分かりやすいかと思います)。陰部洗浄の詳しい手順はここでは省略しますが、洗い流すためのぬるま湯を入れるシャワーボトルを準備します。専用ボトルはシャワーの角度調節がしやすく柔らかい素材で出来ているので少ない力でお湯を出すことが出来ます。 ポータブルトイレ用処理袋 バケツタイプのポータブルトイレを使用している方に便利な用具です。通常のポータブルトイレは排泄後にバケツの片付け(中身を捨てる→洗う→乾かす)を必要としますが、この一連の流れは介助者にとっては重労働となります。処理袋の中には予め吸水シートが装着されているもの・凝固剤を投入する必要があるものなど種類がいくつかありますが、事前にポータブルトイレのバケツに処理袋を被せておきます。処理袋を装着しておけば排泄物はすべて袋の中に納まるため、排泄後は処理袋を取り外して袋の口を閉じるだけでバケツの片付けを大幅に短縮することができます。袋は紙オムツと同様の処分が可能です。※処分の際はお住いの市区町村の紙おむつ分別方法に従ってください 消臭剤、消臭液 名前の通り、排泄物特有の臭いを抑えてくれるものです。トイレ便器の水たまり部やポータブルトイレのバケツに水と一緒に予め投入し、排泄物の臭いの広がりを軽減します。液体、錠剤、シート、泡状など形状は様々です。使用後は排泄物と一緒にトイレに流して処分出来るものがほとんどですが、一般ごみと同様に袋に入れて処分が必要なタイプもあります。 まとめ ここまで様々な排泄介助に役立つ福祉用具を紹介しました。排泄介助は3大介助のひとつとされるほど介護の中でも重要なものですが、それ故に安全や衛生面への配慮が求められ重労働になりがちです。無理のない介助は介助者・要介助者の双方にとって良い影響をもたらします。必要な時には用具の力を借りて負担を軽減しながら、QOLを高めていきましょう。
2024.07.18
-
排泄介助に適用できる介護保険制度について解説
介護保険(公的保険)について概要 介護保険とは「高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み」のことです。日本に住民登録のある人が40歳になると居住市区町村に対して支払いが開始され、介護や支援を必要とする状況になった際は市区町村に申請することで審査を経て給付されます。65歳以上が第1号被保険者、40~64歳が第2号被保険者とされます。ただし、第2号被保険者が給付対象となるためには、厚生労働省が定めた16種の特定疾病(※)に罹患していることが条件となります。 なお、療養型病床を除く病院への入院や障害者施設への入所の際は、それぞれ適用する保険が変更になる(公的医療保険や障害者手帳制度など)場合があるため、介護保険の給付を継続することができない可能性があります。事前に担当のケアマネージャーや施設職員、市区町村の介護保険担当課へ確認が必要です。 ※参考|16種の特定疾病:末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、後縦靭帯骨化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、早老性、多系統萎縮症、糖尿病性神経障害・腎症・網膜症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 トイレ・排泄関連用具に利用できる介護保険制度は? 下記の2種類があります。それぞれどのように利用できるか見てみましょう。 住宅改修特定福祉用具購入 住宅改修とは 住宅改修制度は介護が必要な本人が暮らしやすくなるよう、住宅の設備を新設したり改善を加えたりするものです。排泄介助に関わる部分では個室トイレを安全に使用するための改修となりますが、工事を伴う内容が対象です。後述する特定福祉用具購入制度と違い、介護専門の事業者で無くても制度を利用することが出来ます。 主な改修場所・内容は 廊下やトイレ個室内の手すりを取り付けて歩行や立ち座りの支えとするトイレへの導線上にある段差を解消させて安全に移動できるようにするトイレの開き戸を引き戸にして開け閉めしやすくする和式便器を洋式便器に取り換えて負担の少ない排泄をするウォシュレットを取り付けて排泄後の清潔を保ちやすくする などが考えられます。「マットを敷く」など工事を伴わない改修は本制度の対象外ですが、工事を伴わない手すりやスロープなどの設置は本制度ではなく同じ介護保険制度の福祉用具貸与(レンタル)で対応することが可能です。 住宅改修の給付金額上限は20万円で、かかった費用のうち7~9割の補助を受けられます。つまり個人の負担は1~3割です。介護保険の給付開始後、上限内であれば複数回利用可能です。上限額を超えた分は実費となります。住宅改修の給付金は保険受給後1回のみです。年度による再給付がありませんので、上限額まで使い切った以降の改修費用はすべて実費です。ただし、被保険者の要介護度が大きく上がり更なる住宅改修が必要となった場合や、引っ越しなどで住居が変わった場合は新たに20万円が給付されます。 特定福祉用具購入とは 本記事の冒頭で「レンタルに適さず購入が必要な福祉用具がある」と述べましたが、このような福祉用具を購入するための補助を受けることができるのがこの制度です。具体的には主に排泄・入浴に関する福祉用具が該当します。これらは直接肌に触れるものであり、衛生面の観点などからレンタルが難しいため購入して使用することとされています。 厚生労働省が定めた品目は次の6種類です。 1 腰掛便座2 自動排泄処理装置の交換可能部品3 排泄予測支援機器4 入浴補助用具5 簡易浴槽6 移動用リフトの吊り具 このうちトイレ・排泄介助関連の主な品目は1となります(2・3・6も排泄介助に役立ちますが本記事では説明を省略します)。 腰掛便座とは 腰掛便座は次のようなものがあります。 ポータブルトイレ形状変換用便器補高・補助便座 ポータブルトイレ 腰掛便座に含まれるもので一番多く購入されるのがポータブルトイレです。弊社製品「ラップポン」もここに該当します。ポータブルトイレについて詳しく知りたい方は こちら の記事をご参照ください。 形状変換用便器 形状変換用便器とは便器取り換えの住宅改修をしなくても、既存の和式便器を洋式便器として使うことができるようにするアタッチメントのようなものです。外見はプラスチック製の洋式便器のような形をしていますが、内側は一般的に空洞になっています。バケツのないポータブルトイレのようなイメージです。和式便器の上からこれを被せて設置すると、見た目は洋式便器形状となり座って排泄することが可能です。排泄物は元々ある和式便器の中に落ち、既存の水洗設備を使って流すことができます。 補高・補助便座 洋式便器の便座の上に乗せ、座面高(床から便座までの高さ)や便座穴の径を調整するためのものです。膝や股関節が曲がりにくくなると、姿勢を低くすることに痛みを伴います。特に古い洋式便器の場合、現在発売されている便器に比べて座面高が約5cm前後低くなっていることが多いです(これには日本人の平均身長の伸びが関係しているようです)。立ち座りがしにくい場合は補高便座を使用して座る量を少なくすることで、関節への負担を減らすことが出来ます。 また、お尻が痩せて元々の穴の径だと沈みすぎてしまい安定して座れない場合は、補助便座を乗せて穴の径を小さく調整すると安全です。 特定福祉用具購入のポイントと注意点 特定福祉用具購入の給付金額上限は10万円で、かかった費用のうち7~9割の補助を受けることが出来ます。上限を超える分は実費です。この給付金額は同年4月1日~3月31日の年度が切り替わると再度10万円が利用可能枠として給付されます。また、上限額以内であれば年度内で複数回利用可能です。 一例として、特定福祉用具購入制度を利用して「ラップポン・ブリオ(S)普通便座タイプ」を税込定価(¥119,250)で購入した場合の費用を見てみましょう。※負担割合は年金収入を含めた前年度の被保険者の年間合計所得によって変化します ・1割負担の場合:¥10,000(上限10万円の1割)+ ¥19,250(上限超過分)=¥29,250・2割負担の場合:¥20,000(上限10万円の2割)+ ¥19,250 = ¥39,250・3割負担の場合:¥30,000(上限10万円の3割)+ ¥19,250 = ¥49,250 なお、特定福祉用具購入制度には注意すべき点があります。この制度の補助額は「年度が切り替わると再度給付される」と前述しましたが、破損や利用者の身体状況の変化など特別な理由がない限りは同一品目種の福祉用具を再度購入することは認められません。「価格の安さを重視しすぎて、必要な機能が不足してしまった」「沢山機能がついたものを選んだが、使いこなせなかった」など購入してから後悔したというケースは多いです。購入を検討する際には希望をしっかり伝えた上で、理学療法士・作業療法士・ケアマネージャー・福祉用具専門相談員などプロフェッショナルの見解を交えながら慎重に選定しましょう。 また、この制度を利用するためには各都道府県から指定を受けた「特定福祉用具販売事業者」で購入する必要があります。インターネットやホームセンターでの購入は適用外となるため注意が必要です。 介護保険を適用した場合の支払い方法 この記事内で紹介した 住宅改修特定福祉用具購入 の双方の制度に関する費用の支払い方法は、一般的に「償還払い」と呼ばれる方式が取られます。これは一時的に被保険者が全額を支払い、介護保険の給付を受けている市区町村の介護保険担当課に申請することで補助額を後日受け取るものです。市区町村によっては予め補助額を差引いて支払いが出来る「受領委託支払い」が可能な場合もありますので、詳しくは市区町村役場の介護保険担当部署へお問い合わせください。
2024.06.24
-
高齢者の排泄について解説
基本的な傾向として… 高齢になるにつれて1日の合計尿・便量は減っていきますが、膀胱機能の衰えなどにより膀胱の容量が少なくなるため、溜まるまでの時間が速まって排尿回数が増える(いわゆる頻尿)傾向があります。特に夜間の排尿回数が増えるのも高齢者の排泄の特徴です。いきみづらくなることによって排泄行為自体にも時間がかかるようになりますが、1回あたりの排泄量は合計量と同様に少なくなります。 排便に関しては、主に腸の働きが鈍くなることによる便秘が起こりやすくなります。また体幹が弱まることで排便に適した前傾姿勢が取りづらくなると、便の排出が困難になります。 排尿障害 排尿障害は大きく「畜尿障害」と「排出障害」の2つに分類されます。尿道の長さなど身体的な構造も関係し、女性は様々な要因による畜尿障害、男性は排出障害を抱えやすいようです。双方を同時に抱える場合もあります。 畜尿障害 主な症状は「尿失禁」です。尿失禁も4つのタイプに分類され、それぞれ要因が異なります。 切迫性尿失禁 尿が溜まっているときに意図せず膀胱が収縮することで急激に尿意を感じ、トイレまで間に合わずに失禁してしまうものです。過活動膀胱・尿路感染・膀胱炎などが要因となります。 腹圧性尿失禁 尿道の括約筋や骨盤底筋のゆるみが要因となり、重いものを持ったりくしゃみ・笑ったときなど腹部に強く力が入った時に膀胱に圧が掛かって失禁してしまうものです。女性は特に出産経験があると骨盤が歪みやすく、若いうちからこの症状に悩まされる人も多いパターンです。 尚、「腹圧性尿失禁」と「腹圧性尿失禁」の両方の症状を有する「混合型尿失禁」というタイプの場合もあります。 機能性尿失禁 認知症やADL低下によってトイレでの排泄が間に合わなかったり、「トイレで排泄する」ことが認識できずに失禁してしまうものです。この場合は膀胱や尿道の状態・機能には問題がないケースが多いようです。 溢流(いつりゅう)性尿失禁 排尿をしても膀胱内に多量の残尿があり、残った尿が少しずつ漏れてくるものです。本人に尿意がないのに、知らないうちに漏れているということもあります。このタイプは前述の3タイプと異なり、排出障害を抱える人に起きやすいパターンです。膀胱活動の低下が要因と言われています。 各パターンで紹介した要因はすべて身体機能による内的要因ですが、内服している処方薬が排尿に影響を与えるなど外的要因で支障をきたす場合もあります。 排出障害 主な症状は「残尿感」と「排尿後尿滴下(排尿後に尿道に残っていた分が不意に漏れる)」です。性差に関わらず、膀胱に関連する神経障害が影響するような例もありますが、特に男性に多い症状です。 男性の場合、排尿障害の要因として前立腺肥大があります。前立腺が肥大すると尿道が狭くなるため排尿時の勢いが弱まり、加齢による筋力低下も相まっていきみづらくなります。十分に排泄しきることができないと、女性に比べて尿道が長いため尿道や膀胱内に尿が残りやすくなります。前立腺肥大は男性の排泄障害の要因No.1となるほど関連が深い疾患で、現代では80歳までに約80%が該当すると言われるほど高齢になるにつれて悩みを抱える人が多いようです。 排便障害 高齢者の排便障害は「便秘」が要因となることが多いようです。直腸の感覚が低下することによって便意を感じなくなり、排出されなかった便が固くなって便秘となります。しかし食事を取ることで便は新たに蓄積されるため、溜まった便が漏れ出てしまい便失禁を起こすことも少なくありません。便意がある場合でもいきむ筋力や腸内で便を送る力が弱まると肛門まで便が到達せず便秘が発生します。この場合は肛門自体の筋力も弱まっていることがあるため、便失禁を起こす可能性があります。 このように高齢者にとって便秘は健康に大きな影響を及ぼし、解消には下剤を用いることがあります。ただし肛門の筋力が低下している場合は便失禁の可能性を高めてしまう場合があるなど注意が必要なため、下剤の使用には医師の指示をしっかり仰ぎましょう。なお、便秘と便失禁は別要因であっても混在して発生する場合があるので注意が必要です。 また、前述した排尿障害の「機能性尿失禁」のように認知症を要因とする便失禁も起こり得ます。 排尿日誌をつけてみる 排泄障害は適切な服薬や生活習慣の見直しで改善が見込めますが、排泄パターンを見極める手がかりとなるのが「排尿日誌」です。排尿日誌には下記のようなポイントを1日毎に時系列に沿って都度記入します。起床時間・就寝時間も記入し、日中と夜間の排泄回数も分かるようにします。 排尿があった時刻:深夜帯など確認できなかった場合はおおよその時間を記入する排尿の量:メモリ付きの紙コップや専用スケールを使用 おむつの場合は未使用品との重量差を計測する尿漏れの有無:下着や尿取りパッドなどに尿漏れがあったかどうかを排尿時に確認する尿意の状況:尿意があったかどうか、またどの程度の強さだったか等を確認する水分の摂取量:お茶や水などを飲んだ場合はその量を記入するメモ欄:尿漏れの様子や臭い・色など、気になった点を自由に記入する 排便についても何らかの障害がある場合は、同様に排便日誌をつけてみましょう。 排尿日誌をつけることで本人がどの失禁パターンなのか等の特徴が「見える化」されます。見える化されることで、排泄が自立している方であれば、適したサイズの尿取りパッドを使用する・何時間おきにトイレへ行きたくなるかなど自分自身が気を付けるべきポイントが分かります。排泄に介助が必要な方の場合も、おむつ交換やトイレ誘導のタイミングなど介助のタイミングを測りやすくなります。また、水分摂取量の調整をしたり食事内容の見直し、骨盤底筋体操を取り入れるなど直接排泄に関連しなさそうな事象に関しても工夫することが出来ます。 加齢による衰えは避けられませんし、身体の変化が要因となる排泄障害は誰にでも起こり得ます。しかし排泄は健康のバロメーターともなるため、出来る限り快適に行いたい行為です。介助者となったとき、また自分が当事者となったときに傾向と対策方法を知っていると、症状と上手く付き合っていくことが可能になります。
2024.05.20
-
ポータブルトイレについて解説
ポータブルトイレとは? ポータブルトイレは個室トイレ以外の場所にも設置可能な簡易トイレのことです。・個室の水洗トイレへ移動するのが難しい・歩行速度が遅くなりトイレまで間に合わない・ふらつきがあり移動中に転倒の恐れがあるなど、個室トイレで排泄することへのリスクが高い方が使用します。 ポータブルトイレは排泄に使用する用具なので、椅子のような形をしています。トイレの便器と同じように中心には便座があり、便座の下には排泄物を受け止めるためのバケツが設置されていることがほとんどです。また、座った時に姿勢の保持がしやすいよう、多くの製品には背もたれや肘掛がついています。 ポータブルトイレの機能 基本機能に加えて、福祉用具は各個人の身体機能に合わせた便利な機能が搭載されています。ポータブルトイレは搭載されている機能や特徴に応じて、いくつかの種類に分類することができます。 肘掛を跳ね上げ・取り外し・昇降できるもの 肘掛が可動式になっており、移乗するときは障害物とならないように肘掛を椅子の横から逃がすことができます。排泄時は姿勢を支えるために元の位置に戻し、肘掛けとして使います。 椅子、肘掛の高さ調整ができるもの 利用者の体格や身体状況に合わせた微調整が可能です。 便座のタイプが選べるもの お手入れしやすい樹脂(プラスチック)製柔らかい肌当たりで長時間座りやすいウレタン製寒い季節でもお尻がひんやりしない暖房便座陰部洗浄がしやすいシャワー機能付便座などがあります。 脱臭機能がついたもの 気になる排泄臭を吸引して設置場所に残さないような装置が付いたものがあります。 バケツを洗わないもの 排泄処理袋と呼ばれる袋をバケツに被せて袋の中に排泄をすることで袋ごと処分するタイプ自動ラップユニットを搭載して排泄物を袋の中に密封するタイプポンプなど配管工事をして個室トイレ以外にも設置できる水洗ポータブルトイレなどがあります。いずれもバケツを洗う労力や排泄物の臭い軽減に大きな効果があります。 その他の機能 ひじかけの長さ調整(つかみやすい)キャスター付(ポータブルトイレを移動しやすい)便座の角度調整(排泄姿勢が取りやすい、立ち上がりやすい)座面・便座穴の幅(体格や排泄姿勢に合わせたサイズが選べる)便座の抗菌加工(お手入れしやすい)など、排泄やトイレ本体の維持管理がしやすくなる様々な工夫がポータブルトイレには施されています。 ポータブルトイレのメリット・デメリット ポータブルトイレを使うメリットとしては 排泄の自立度を維持し、介助量を少なく出来る可能性がある「トイレで排泄する」生活習慣を継続できる自分で排泄する尊厳を守れる近くにトイレがあることで不安を和らげる座ると排泄しやすい姿勢を取ることができ、スムーズな排泄ができる といったことが挙げられます。 一方デメリットとしては、 排泄物の処理に肉体的・精神的な負担がかかる設置場所の衛生面や臭いが気になる「個室トイレ以外の場所での排泄」に抵抗がある方もいる といったことが挙げられます。 ポータブルトイレの素材 搭載されている機能の他に、ポータブルトイレに使われている素材も、使い心地や商品金額を左右します。 樹脂製のポータブルトイレ ポータブルトイレの素材として最もポピュラーなものは樹脂(プラスチック)です。水洗いがしやすく比較的軽量・安価なのがメリットです。ポータブルトイレは衛生用品ですので、汚れても水洗いやアルコールなどでの消毒がしやすいのは大きな利点となります。また機能やデザインなどの種類が豊富で選択肢が多いことも利点として挙げられます。 デメリットとしては耐久性と、軽量であるがゆえの不安定さです。本体重量が軽量なものだと約3kg、重くても約10~15kg程度の製品が多いので、片麻痺の方など肘掛に体重をかけて座りたい場合にバランスがとりにくい可能性があります。 金属製のポータブルトイレ 軽量かつシンプルなものとしてスチール・アルミなど金属製のタイプがあります。金属製のポータブルトイレは「コモード型」とも呼ばれます。パイプを組み合わせたような形状のためパーツが少なく、トイレ本体のお手入れは最もしやすいです。シンプルな形状が故に最も「トイレっぽい」見た目をしており、居室など設置場所との調和が難しい点がデメリットです。 木製(家具調)ポータブルトイレ ポータブルトイレとして使用しない時には便フタを閉めることで椅子のようになり、居室の雰囲気を損ねにくい木製のものもあります。木製のポータブルトイレは椅子のよう=一般的な家具のように見えることから「家具調ポータブルトイレ」とも呼ばれます。このタイプの便フタにはクッションがついており、実際に椅子として使用することも可能です。便フタを持ち上げることで便座が露出し、トイレの機能を果たします。木製のメリットは前述の居室の雰囲気を損ねにくい点に加えて、重量があるので安定感がある点です。木製タイプの重量は約15~20kg程度のものが多いので、立ち座りが不安定な方でもしっかりつかまりながら動作を行えます。 デメリットは、比較的高価であることと、特に木製部分のお手入れ方法が限られてしまうことです。便座やバケツなど汚れやすい部分は樹脂製(便座は前述の通り樹脂以外の製品もあります)なので水洗いや消毒も簡単です。しかし、椅子本体の木製部分は水分が染み込んで素材を痛める可能性があるため多量の水で洗い流せません。汚れが付着した場合は可能な限り速やかに乾いた布やペーパータオルで拭き取る必要があります。 ポータブルトイレを選ぶポイント ポータブルトイレを選ぶ際、まず考慮しなければならないのが「利用者本人の身体能力」です。トイレでの排泄に必要な動作は 立ち上がる座る歩く の3つです。この3つの動作がどのくらい可能なのかで必要な機能が変わります。 身体の残存能力・体格に合わせたサイズを選択する まずは身体能力に合わせた機能が付いたトイレを選んだうえで、体格に合わせたサイズであることも重要なポイントです。 例えば、 小柄なので床に足を着けて排泄姿勢をしっかり取れるように、椅子の高さが低めのものが良い。しっかり立位が取れず、介助者の支えをもらってベッドサイドで座位で移乗したいので、肘掛可動式が良い。またベッドサイドにトイレを置くため臭いが少ないものが良い。短距離なら安全に移動できるので廊下に置けて動かしやすいサイズのものが良い という風に考えて商品を選定していきます。 住環境に合わせた機能を選択する 同じく重要なのが、住環境(介助者のマンパワー含む)です。 例えば、 寒い地域なので暖房便座タイプが良い夜間で介助者が休んでいる時間帯に頻回使用がありすぐに片付けが出来ないので、バケツ清掃が不要なものが良いベッド近辺にあまりスペースがないのでコンパクトなタイプが良い といった観点を考慮します。 その他に考慮すべき条件 既出の項目を重視しつつ、以下の条件にも合致する商品があれば、最善の選択といえるでしょう。 予算見た目、色などデザイン在庫状況(入院していた家族の退院日が決まった、などで必要な日までに届くかどうか) ポータブルトイレの使用方法 ポータブルトイレの使用方法は、バケツの有無で若干異なります。 排泄前 ポータブルトイレで排泄する前に、バケツタイプのトイレの場合は予めバケツに水を張っておきます。水を張ってあるとバケツに排泄物が付着しにくく掃除がしやすくなります。排泄物の臭いも広がりにくくなるので、忘れずに入れましょう。各メーカーから発売されている消臭剤を水と一緒にいれるのも効果があります。排泄処理袋を使用する際や自動ラップ式のトイレの場合は、予め袋となるものをセットしておきます。水分を固めるための凝固剤も排泄前に入れる方が入れ忘れを防止できます。 排泄時 実際の排泄は、個室の水洗トイレとさほど変わらない感覚で行えます。移乗・立ち座りなど安全に気を付けてゆっくり動作するようにしましょう。なお、安定した姿勢を保つために男性の小便の場合も座ることがほとんどです。 排泄後 バケツタイプの場合はバケツの掃除が必要です。トイレ本体からバケツを取り出し、個室のトイレまで運びます。この時に付属のバケツフタを使用すると運搬時の飛び跳ねや臭いの広がりを防止できます。トイレへ着いたらバケツの中身を便器に注いで流しましょう。空になったバケツをお風呂場などで洗って汚れを落とし、よく水気を切ってから再びポータブルトイレにセットします。 排泄処理袋タイプの場合は、バケツから袋を取り外して口をしっかり結んで処分します。排泄処理袋と自動ラップタイプの排泄ゴミは「紙おむつ」と同様の処分が可能です。この時、凝固剤が十分な量投入されていないと排泄物の水分が固まらずそのまま残ってしまいます。水分が残っていると「紙おむつ」として処分が出来なくなりますので、水分が残っている場合は凝固剤を追加投入します。自動ラップタイプの場合、トイレ本体のボタンを押してラップユニットを作動させます。処理が完了すると椅子部分の下から排泄物が密封された袋が落ちるので拾って処分します。こちらも水分が残っている場合は密封処理をする前に凝固剤を追加しましょう。 ポータブルトイレが購入できる場所 ポータブルトイレを購入出来る場所についてもご紹介します。※なお、ポータブルトイレは衛生用品のためレンタルすることは出来ません。 福祉用具販売店 「福祉用具専門相談員」という公的資格を持ったプロフェッショナルが必ず在籍していますので、利用者本人に合う製品を実際に試しながら適切に提案してもらえます。また介護保険を利用して購入する場合は都道府県に認定された事業所で購入する必要があるため、特別な事情がなければこちらで購入することが一般的です。製品の故障やメンテナンスなども対応してもらえます。 ホームセンター・デパートなどショッピングセンター おむつ、杖、シルバーカーなどを中心に様々な福祉用具が取り扱われています。トイレはシンプルなタイプのものが販売されている場合があります。こちらも実物を見ながら選定でき、店員さんが相談にのってくれる場合もありますが、介護保険の事業所ではないため介護保険を利用して購入することはできません。 インターネットショップ Amazonや楽天など大手モールでも福祉用具を販売するショップが増えました。自宅まで商品を届けてくれる点や、実店舗より若干安価で購入できる場合もあることが利点です。また実店舗より豊富なラインナップがあることも多く、幅広い製品の中から選ぶことが出来ます。気軽に利用できる半面デメリットも多く、実物を見ることが出来ないため利用者本人に合うサイズ感か?など重要なポイントの確認が出来ません。介護保険利用も不可です。アフターフォローなども購入者が自分でメーカーに問い合わせるなど自発的な行動が必要です。 最後に ポータブルトイレと聞くと、どうしてもの非常時やおむつ使用までの繋ぎなど「一時的な利用」というような簡易な印象を受ける方もいるかもしれません。しかし、弊社が実施したインターネットアンケート(現役ケアマネージャー対象)によると、約半数が「ポータブルトイレを1年以上使用した」と回答しています。排泄は複数の動作を組み合わせて全身をバランスよく使用する行為です。適切なポータブルトイレの使用は利用者本人のADLの低下予防に繋がります。メリット・デメリットをよく理解・検討して、ポータブルトイレの導入によって良い効果が得られるような排泄介助を目指しましょう。
2024.04.22
-
排泄介助に使う福祉用具について解説
ポータブルトイレ ADLが低下してきた時、排泄介助用具として最初に検討すべき用具として挙がるのがポータブルトイレです。ポータブルトイレは移動が可能な簡易便器のことです。次のような身体状況の方に適しています。 個室トイレまでの移動時に転倒リスクが高い歩行がゆっくりになり尿意・便意を感じてから個室トイレまでの移動が間に合わない座位や立位の保持は可能な筋力がある 素材は最もシンプルなスチールやアルミの金属製、軽量でお手入れがしやすい樹脂製、安定感があり居室に馴染む椅子のような外見の木製などがありますトイレの中には排泄物を受け止めるバケツが入っているものが多く、排泄後は介助者がバケツの清掃をします。バケツがなく排泄物を特殊フィルムで密封する「ラップ式」のポータブルトイレも、ラップポンを始めとして近年では多く導入されるようになりました。通常はベッド脇や居室近くの廊下など、利用する本人が安全に移動できる場所に設置します。自分の居場所に近いところにトイレがあることで「いつでもトイレに行ける」安心感が生まれます。また、本人にとって個室トイレに近い感覚で使用出来るので、排泄の自立を維持しやすいメリットがあります。 尿器、差し込み便器 移動や立ち上がりが難しくなり日中もベッド上で過ごすことが多くなってくると、排泄介助はおむつの使用を検討する段階です。ですが、 尿意や便意を感じることができる このような方は尿器や差し込み便器を使用する介助方法もあります。尿器は取っ手の付いた筒状をしており、陰部に尿器の入り口をしっかりあてて尿を受け止めます。尿器は人間の身体構造に合わせて男性・女性用があります。 差し込み便器は例えるならば「深型のちりとり」のような形状をしています。差し込み便器はお尻の下に置いて使用し、排泄が済んだら腰を浮かせて取り出します。差し込み便器は男女兼用ですが、女性の場合は男性に比べると尿器が当てづらいため、排尿時にも差し込み便器を使用することがあるようです。 尿器・差し込み便器を使うと排泄物が肌に触れないので、衛生的な介助が出来ます。また本人から言葉で尿意・便意を伝えることが難しい場合はしぐさなどから介助者が排泄のタイミングを見計らうことが必要なこともありますが、「自分の意志で排泄が出来る」ことは本人を尊重することにも繋がります。 ポータブルトイレや尿器が購入できる場所 今回紹介した排泄介助用具は下記で購入することが出来ます。 福祉用具レンタル・販売店ホームセンターの介護グッズ売り場百貨店などの福祉用具売り場インターネット 店舗で購入する場合、実物を見ることで使用イメージが湧きやすいことが特徴です。実際の大きさや座り心地を試すことが出来るデモ品を展示している店舗もあります。特に福祉用具レンタル・販売店には「福祉用具専門相談員」という資格を持ったプロフェッショナルがいますので、住環境や本人の身体状況に適した製品を一緒に選んでもらうことができます。 オンラインでの購入は自宅まで届けてもらえるのがメリットです。 ポータブルトイレを介護保険を用いて購入する 排泄介助用具の中でもポータブルトイレは介護保険の「特定福祉用具購入」サービスを利用して通常より少ない個人負担で購入することが可能です。このサービスを利用するには介護保険の認定を受けた上で、各都道府県から指定を受けた「特定福祉用具販売事業者」で購入する必要があります。福祉用具レンタル・販売店は多くの場合が該当しますが、店舗に問い合わせたり、各市区町村や都道府県のホームページで指定事業者を確認することが出来ますので事前にチェックしましょう。 ホームセンターの介護グッズ売り場、百貨店などの福祉用具売り場、インターネットでの購入は対象外です。 そもそもなぜ介護用のトイレが必要なのか? トイレの介助で重要になることは「転倒などケガのリスクを防ぐこと」です。 トイレで排泄するためには、立ち上がる・歩く・座るなど複数の動作をします。これらを安全に行えるような配慮が必要ですが、本人の身体状況や介助者のマンパワー、トイレや住環境などによっては実現が難しいこともあり得ます。 トイレでの排泄が難しくなった時、使用を検討することが多いのがおむつです。パンツタイプなど簡易型を除き、おむつは介助者の手が無ければ装着できず、使用者本人は受け身での排泄介助となることがほとんどです。受け身での排泄介助が続くと、本人が排泄に対する意欲を失ってしまいます。またおむつを使用するとベッド上で寝たまま排泄が可能となり、排泄の為に身体機能を使う必要がなくなるため離床機会が減少します。これがADL・QOLの低下を招くこともあります。 トイレ介助でケガリスク低減と同時に最も大切なことは「本人の尊厳を守ること」です。 短い距離なら移動が出来る歩行は難しくても立ち上がることはできる など、身体機能を少しでも生かせる適切な排泄介助用具を積極的に取り入れていきましょう。おむつの前段階として、介助者に遠慮しない「自力での排泄」を叶えることができます。
2024.04.03
-
トイレ介助の流れやポイントを解説
トイレ介助の流れ 個室のトイレで排泄をするまでには大きく3つの動作があります。 トイレまで歩く便器に座る立ち上がる それぞれの動作で介助のポイントがあります。共通して重要なのは、転倒のリスクを避けること、そして本人の尊厳を尊重することです。 トイレまで歩く:歩行の介助 個室のトイレは一般家庭の場合は居室内にないので、個室へ向かうことが必要です。 ひとりで歩ける場合、介助者が付き添って支える場合、福祉用具を使用する場合などパターンは様々ですが、最も気を付けなければならないことは「転倒リスク」です。高齢者にとって転倒は骨折など大けがに繫がり大変危険です。たった1回の転倒がADLの低下を招き、そのまま寝たきりになってしまう可能性すらあるのです。安全に移動できるように体重を支える手すりを設置したり福祉用具を活用することはもちろんのこと、滑りにくいマットや室内履きを使用して足元の環境を整えるとリスクを低減できます。 また歩行に必要な筋力が弱まると歩行のスピードがゆっくりになります。その結果トイレまで間に合わず失禁してしまうことがあり、本人の尊厳を傷つけてしまいます。その場合は介助者がタイミングを計ってトイレへの誘導声掛けをすることで個室トイレでの排泄を実現できることがあります。(無理をせずポータブルトイレを設置することもひとつの方法です) 便器に座る:トイレでの座位の介助 座位とは座った姿勢のことです。トイレでは座って排泄をしますが、高齢者の場合いきむ力が弱まります。すると自然に尿や便が体外へ排出するまでに、若い時に比べて時間を要するようになります。中には10分以上便座に座ったまま…という方も見られます。しかし腹筋・背筋が弱まり座った姿勢を保つことが難しくなると、トイレからの転落などケガのリスクが高まります。転落リスクを防ぐために排泄中も常時介助者が個室内で本人の身体を支えるとなると、人目を気にせず落ち着いて排泄することも困難です。 この場合、体重・体勢を支えるための手すりを設置することが有効な方法のひとつです。手すりにはイスのひじ掛けのように座った本人の左右に設置するものや、座った時の前方にテーブルのように設置するものなど様々な種類があります。本人の身体が傾きがちだったり、力を入れやすい方向をチェックして適切に設置しましょう。 また、トイレでいきむと血圧が瞬間的に上昇し、意識を失ってしまうことが有り得ます。そういった可能性がある場合も適切な手すりを設置することで身体を支えることが出来れば、転落を防ぐことが可能です。(ただしこの場合は脳卒中など危険な病気が原因であることも考えられるため、あまり長時間トイレから出てこないようであれば様子を伺いましょう) 立ち上がる:トイレでの立ち上がりと立位保持の介助 トイレでの衣服の着脱や排泄後の陰部の拭き上げをする際に必要な動作です。自分で立位を保つことが出来れば、介助者は介助動作に専念することができます。 しかし立位の保持が難しい場合は、介助者は介助動作に加えて本人の体重を支える必要があります。介助者が本人の身体を支えながら下肢へ手を伸ばす必要があるためバランスを崩しやすく、転倒リスクが高まって危険です。そのため、本人の身体状況によっては介助者が1名では対応できず、2名での介助が必要となります。狭いトイレの個室内に介助者2名+本人1名の大人3名が入るにはスペースが不足します。特に在宅介護の場合は常時2名の大人で介助が必要となると、個室トイレでの排泄が実現困難となりかねません。 この場合も本人の力の入れやすい場所に手すりを設置するなど、30秒くらい立位を保てるように福祉用具を活用すると解決できる可能性があります。 トイレの介助に便利な用具 トイレの介助は用具を活用することで、転倒リスクをおさえたり、排泄をスムーズにしたり、QOLをより高めることにつながります。 滑り止めマット 個室トイレと居室を往復する間に転倒することを避けるため、滑るリスクがある箇所にマットを設置すると効果的です。下肢の力が弱まると、スリッパや靴下などは想像以上につまづきや滑りの要因となります。 介護用手すり 便器の前で立つ、座るといった全身運動を行う際、あるいは排泄時にいきむときに、手すりが設置してあると力が入りやすくなります。また移動中に体重を支えるために廊下に手すりを設置することも重要です。 ポータブルトイレ / 尿器 / おむつ 個室トイレまでの移動が困難な場合、ベッドのある部屋にポータブルトイレを置いたり、ベッドのうえで尿器やおむつを用いて用を足すという選択肢もあります。 日本ではトイレの介助が特に重要 日本に洋式便器が導入され始めたのは第二次世界大戦後。そこから温水洗浄や暖房便座など発展を遂げ、現代の日本のトイレ環境は世界で一番きれいで整っていると言われています。 トイレは各国や地域で独自の文化やルールがありますが、日本人はいつでもどこでも「清潔な水洗トイレ」に慣れ親しんでいます。更に日本人は比較的「排泄を恥ずかしいと思う」気持ちが強い傾向があると言われています。(例として「排泄音消し装置」は日本独自の文化のようですね)こういったことからも、出来る限り最後までプライバシーが守られ衛生的な水洗トイレでの排泄を希望する方が多いです。 トイレで排泄するということは、私たちが普段意識している以上に「全身運動」です。本記事で解説した通り、筋力が弱まるとトイレでの自立排泄を叶えるための動作が難しくなっていきます。 逆を言えば、トイレでの排泄を続ける事ができればADLの低下も防止できるということかもしれません。個室トイレでの排泄が出来る身体能力がある場合は、様々な工夫をして本人の希望を叶えてあげられるようにすることがQOLの向上にも繋がります。
2024.03.25
-
排泄介助の種類や手順、ポイントを解説
個室トイレ 一般的な個室のトイレを使用する場合です。 まずはこの方法がとれるかどうかを検討することが多いかと思います。 個室トイレの介助手順 要介助者本人からの要望があったら、トイレへ移動します。 導線となる箇所に障害物になりそうなものが無いか確認しましょう。 自力で歩ける場合は見守りまたは手引きをします。歩行器や車いすなど移動に補助が必要な場合は、福祉用具を安全に使用出来るよう支援し、トイレへ向かいます。 トイレに到着したら、着座と衣服の脱ぎ下ろしを支援します。 この時、バランスを崩しやすく転倒リスクが上がるため、 手すりや介助者につかまってもらい身体をしっかり支えること体重の移動をゆっくりすること脱ぎ着しやすい衣服を着用すること などに気を付けましょう。衣服を脱ぎ終えたら便器に着座します。 排泄中は出来るだけ個室内に本人1人になれるようにします。 排泄中にバランスを崩し転倒してしまう恐れがある場合やいきみづらい時は、排泄姿勢を保持できるような福祉用具を利用する方法もあります。 排泄し終わったら声をかけてもらい、陰部を清潔にします。 立ち上がって衣服を整え、再度安全に配慮しながら居室へ戻ります。 ポータブルトイレ 要介助者のADLが下がってくると、「トイレまで間に合わない」「転倒リスクが高く歩行が安全でない」など個室トイレへの移動が難しくなるケースがあります。その場合は、ベッドなど普段過ごす場所の近くにポータブルトイレを置くことで排泄の自立を保つことが出来ます。なお、自力での移動が難しくなっても座位(座った姿勢)を取ることが出来ればトイレやポータブルトイレでの排泄が可能です。 ポータブルトイレは金属やプラスチック、木材などで作られた移動可能な簡易トイレです。多くのポータブルトイレの中には排泄物を受け止めるバケツが設置されており、排泄後はバケツをトイレに運んで溜まった排泄物を流し、綺麗に洗浄して再度設置します。 ※弊社の『ラップポン』はこのタイプに該当します! ポータブルトイレの介助手順 基本的な手順は個室トイレとほぼ同様ですが、移動に違いがあります。 ポータブルトイレは多くの場合で本人の過ごすベッドの近くなどに設置されるため歩く移動距離は短くなります。ただ、脚力が弱まり歩行に不安を抱える方が多いため、安全にポータブルトイレへ座れるように『移乗介助』が必要になることがあります。 自力で立ち上がりやお尻を持ち上げることが出来る場合は力を入れやすい位置に手すりを設置します。握った場所を支点として身体の向きを変えてポータブルトイレに座ります。場合によってはスライディングボードなど移乗支援用具を使用すると乗り移りやすくなります。自力でお尻を持ち上げることが出来ない場合は適切な用具等を使用し、周囲の安全を確保してから移乗を支援します。 バケツタイプのポータブルトイレ使用後は居室の衛生面を保つために、出来るだけ速やかにバケツ清掃を行うことが望ましいです。バケツに水を張り消臭剤等を使用することで排泄物の臭い等を軽減できます。 尿器・差し込み便器 安全に座ることやベッドからの移動が難しくなっても、尿意や便意を本人が感じることが可能な場合は尿器や差し込み便器を使うことでベッド上でも自分の意志で排泄が出来ます。 尿器・差し込み便器は皮膚を傷つけにくく清掃しやすいプラスチックやシリコン製が多く、それぞれ陰部に直接当てて使用します。排泄後は中身をトイレに流してから洗浄します。 尿器・差し込み便器の介助手順 ベッド上の要介助者本人の要望があったら用具を準備します。衣服をゆるめ、用具を陰部に当てて排泄します。差し込み便器の場合はお尻を浮かせて差し込む必要があるため、強く摩擦が起こらないよう配慮して介助します。 排泄後は陰部を清潔にし、衣服を整えてから用具を洗浄します。 おむつ ベッドからの移動が難しく尿意や便意が感じにくくなると、おむつを着用して排泄をします。おむつに排泄物が長時間付着していると皮膚のトラブルや感染症などのリスクが高まるため、排泄後はできるだけ速やかに新しいおむつに交換することが望ましいです。 おむつの介助手順 ベッド上の要介助者におむつをあて、排泄があった場合は陰部を清潔にして新しいものに交換します。 おむつにはそれぞれ吸収可能な量が設定されているので、本人の排泄量に応じたものを選びましょう。サイズや形も様々ですが、一般的にベッド上で一日を過ごす要介助者にはテープ止めタイプのものを使用します。あて方が緩かったりずれたりすると漏れの原因となります。 交換したおむつを処分する時は、居住市区町村のごみ分別の規則を必ず確認してください。 排泄介助のポイント 排泄介助の方法についてご紹介しましたが、どの場合でも最も大切なことは「要介助者本人を尊重する」ということです。 排泄行為は日常生活の中で最もプライバシーが守られるべき行為です。人目に触れることは非常に強い羞恥心と苦痛を伴います。たとえ介助が必要となっても「介助を受けているのだから」と配慮を怠ると本人の自尊心を傷つけ、ADLやQOLの低下を招きます。 ですが、意志を尊重して見守るあまりに必要な手助けが行われず、排泄の失敗を繰り返してしまっても「当たり前の行為が出来なくなってしまった」と自尊心は大きく傷ついてしまいます。 本人の残存機能を生かした上でプライバシーを尊重し、適切な介助で出来る限り自立した排泄を続けていけるように支援していきましょう。
2023.12.12